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地球まみれの宇宙人 ~体内ダンジョンに閉じ込められた最強侵略者が出ていってくれない~  作者: 鬼喜怪快


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18/29

18話 コンビ戦


 

 

 大柄なベーダー星人・ランブ。

 細身のベーダー星人・シャン。


 

 彼らは自ら拘束を解き、

 そこに立っていた。


 

「いやああぁぁあぁーっ!」


 

 木庭が腰を抜かして座り込んだ。


 解き放たれたベーダー星人を

 目の当たりにしたのだから

 当然の反応だろう。


 

『ど……どういうこと!?』


「お前が異能の種を知りたいと言ったのだ。

 戦えば少しは学べるだろう」


『戦うの!?』


「そうだ。

 戦闘訓練のようなものだ。

 命の奪い合いではない。

 ただ——」


『?』


「手足の1本くらい吹き飛ぶことは

 よくあることだ」


『あってたまるかぁ!』

 


 ランブとシャンが笛を見ている。


 

「安心しろ、戦うのは俺だ。

 お前は奴らの能力がどのようなものか、

 分析の目で見ているがいい」


『!』


「どうした?」


『あの大きなベーダー星人、

 見覚えがある……。

 右手……絶対に触れちゃダメな

 ベーダー星人じゃない?』


「!?」



 ランブが話しかけてきた。



「ブラッド様。

 その身体……全盛期と比べて

 どれくらいの戦闘力なのですか?」


「なんとかやりくりして5分の1程度だ。

 それでもこの前、力を出しすぎたせいで

 身体中の筋肉を断裂させてしまった」


「そうですか……」


「しかし気にせず本気でかかってこい。

 この身体はこの身体なりの戦い方がある」


 

 すると開始の合図などなく、 

 ランブが飛びかかってきた。

 

 早いが、躱せないほどの動きではない――


 ブラッド《笛》は躱した勢いのまま、

 シャンの方へと飛んだ。

 

 2体とも兜を被っており表情が読めない。


 シャンとは素手での

 ぶつかり合いが始まった。


 分析も使わず、

 普通の目で見ている分では、

 シャンは普通のベーダー星人のレベルに感じた。


 ブラッドは距離を取り、

 再び2体と向かい合う。


 

『?』


 

 ランブが右手のプロテクターを外し始めた。


 シャンは兜とプロテクターを外し、

 ボディースーツのみの姿になった。


 シャンは、薄い青色の肌に

 ブロンドの髪を靡かせた、

 美しい女性戦士だった。


 身軽になったことが、

 異能の種と関係があるのだろうか?


 シャンが飛びかかってきた。

 別段スピードが早くなったわけでもない。


 激しい連続攻撃を繰り出される中――


 

「ふん!」



 ブラッドがシャンの腹部に拳を放った。



 ――ジャブンッ!


 ブラッドの拳が、

 シャンの腹に直撃した。

 

 傍から見れば、拳が貫いたように見える。


 しかし笛には、

 水を殴ったような感覚が拳に伝わっていた。


 

『これって!?』


 

 シャンの身体がすべて液体へと変わり、

 ブラッドの拳がめり込んだ腹部から、

 ブラッドの全身を液化したシャンが包み込んだ。


 

『彼女の能力は、液化!?』


「ほう。

 ようやく、分析の目で奴らを見たか」


『液体を自在に操るんじゃなくて、

 自分自身が液体になれるの!?

 すごい!』


「それがシャンの異能だ」


 

 息ができず、

 水の中で封印されているブラッド。

 

 そこに、

 飛び込んでくるランブの姿が見えた。


 この状態のブラッドへ向けて、

 右手のひらを突き出している。



『わたし、あいつ知ってる!

 絶対に右手には触れてはいけない奴よ!』


「そうか。

 先日の侵略時に

 ランブの討伐に当たった地球人の中に

 お前がいたのだな?」


『いたわ』

 

「なるほどな。

 合点が行ったぞ。

 どうりでランブが捕獲された訳だ」


『?』


「お前が居たからランブは勝てなかった。

 そういうことだ」

 


 次の瞬間――


  

 ――ズパーンッ!


 

 ブラッドの身体を飲み込むシャンと、

 手のひらを向けて飛び込むランブ。

 

 ブラッドは身体を素早く回転させ、

 その遠心力の風圧でふたりを吹き飛ばした。


 全身が液体化していたシャンは、

 すべて飛び散ったが、

 飛び散った液体はすぐに一塊となり、

 シャンの姿へ戻った。


 

『すごっ!』


 

 そして、もう1体の吹き飛ばされたランブは、

 シャンが座らされていた椅子へ直撃――


 する、その瞬間。


 プロテクターを外した右手で、

 一瞬だけ椅子に触れた。


 

 ——ブァサッ!


 

 触れた椅子が、再び粉塵となって崩れ落ちた。


 

『やっぱりあの手は危険よ!』


 

 笛は分析の目を発動させた。


 シャンは、

 全身を液体に変化できる能力——液化。


 ランブは、

 触れたものを粉塵に変える能力——分解、


 と書かれている。


 

「お前の能力は本当に便利だ」


『!』



 ブラッドは即座にランブの懐に入った。


 顎を殴り床に叩きつけ、

 仰向けに倒れたランブの右腕を踏みつけた。



「ぐぬっ!」


「起き上がれまい……。

 能力が発動しないギリギリの位置を

 踏まれている気分はどうだ?」


「なぜ……なぜそれがわかるのです?」 


「この地球人の目だ。

 これがお前の能力内容、攻撃予測、

 すべての情報を教えてくれる」


「なっ……なんと……」



 ブラッドは手刀をランブの首に軽く当てた。


 そして——シャン。


 彼女がブラッドに飛びかかってきた。


 

 右手を鎌のような形状に変えて

 切り掛かってくる。


 ブラッドはその攻撃を、

 分析の目でわかっていたかのように躱し、

 シャンの左太ももに拳を差し込んだ。



「あっ!」


「勝負ありだ」


「ブラッド様……どうして?」



 左太ももに差し込まれた

 ブラッドの右手には——


 シャンのコアが掴まれていた。


 直径1㎝にも満たない球体。

 

 戦闘中、

 コアを隠しながら戦う彼女の身体から

 それだけを見つけることは不可能に近かった。



「便利な目でな。

 探し物を指定すればすぐに教えてくれる」


「……あっ、あぁ」



 ブラッドがコアから手を離すと

 シャンは力なく膝をついた。

 

 

「頃合いだな……」


 

 ブラッドが呟いた。


 

「地球人。

 これが異能の種だ……

 少しはわかったか?」


『……わかったような、

 わからないような』

 

 

 ブラッドは呆れるように

 深いため息を吐きながら説明を始めた。


 

「ランブの能力は、

 触れた物を分子レベルにまで

 分解する能力だ」


『うん。

 彼と戦う時、本当に苦労したの覚えてる。

 右手には絶対に触れられてはいけないから……』


「そうだ。

 それをお前が分析で見破ったため

 ランブは勝てなかった。

 奴の能力に気づく前に、

 普通ならお前たちは全滅だった」


『それでも被害は凄かったわ。

 謎の能力を持つベーダー星人に

 苦戦しているってことで

 わたしが派遣されたのよ』


「ランブは地球人の意識が

 右手に行かないような戦い方を

 していたはずだ。

 しかしお前の目のせいで台無しになった」


『……そんなこと言われても』

 

「ランブはもともと触れた物の物質を

 見分ける能力を持つ非戦闘員だった。

 しかしある日覚醒を起こした。

 突然、触れた物を分解できるようになったのだ」


『それって最強の力じゃないの?』


「最強だろうな。

 しかし、触れなければ発動しない能力だ。

 ランブの場合、遠距離攻撃が得意な敵や、

 高速移動をする敵には話にならない」


『……弱点があるんだ』


「そうだ。

 能力と本人の戦闘力が釣り合っていない」


 

 次にブラッドは、シャンを見た。


 

「そしてシャンは、

 全身を液体化させる能力だ。

 水を扱う能力の完成版というべきか……」


『地球にも、

 水使いの防星官やブレイカーはいるけど』


「もともとは、

 水を使ってさまざまな攻撃ができる戦闘員だった。

 しかし、ある日覚醒を起こした。

 全身を液体へ変化させるまでになった」


『それってどんな攻撃も効かない……

 最強の防御じゃない。

 どうやって捕獲したんだろう?』


「物理攻撃には無敵だ。

 しかし、雷や凍結攻撃にはまったくだ。

 そして今のようにコアが見つかれば詰み。

 異能の種ではあるが、弱点も多い」


『……』


 

 ブラッドは続けた。


 

「異能の種とは、

 もともと持っていた能力が、

 何かを機に能力覚醒を起こした者を指す」


『あなたも異能の種なの?

 テンカウントとかすごいじゃない』


「あれは異能ではない。

 ただの時間限定の戦闘力操作だ。

 どこの星にでも攻撃力や防御力を爆発的に上げる

 連中はいるだろう。

 それと同じだ」


『あなたの力は全然違うように思えるけど……』

 

「同じだ。

 異能の種は努力でなれるものではない。

 ある日突然覚醒が起こる」


『地球人でもいるのかな?』


「いないはずがない。

 お前も異能の種として

 覚醒する可能性は0ではない」


『えっ!

 これ以上何が見えるようになるんだろ!?』


 

 異能の種と呼ばれる

 2体のベーダー星人は、

 黙って話を聞いていた。


 

「宇宙では知らないはずがない知識、

 異能の種を知らない……。

 地球人の上層部は、民に何を隠しているのか?」


『さぁね。

 わたしたち下っ端には

 知らされないこと多いからわからないよ。

 どこの星でもそんなんじゃないの?』


「……地球は独特だ。

 宇宙との交流を拒み、

 侵略されようとしても、しようとはしない。

 独自の路線を進んで行っている星だ」


『……そうなんだ』


「星を守るお前たちにすら、

 異能の種を知らせていないのも異常だ」


『知られたら上の人たちに

 まずいことでもあるのかな?』


「さぁな。

 だが――」


 

 ブラッドは少し考え、口を開いた。


 

「地球人とて宇宙に関しての知識は

 かなり持っているはずだ。

 しかしお前たち地球の民には、

 思っている以上に宇宙の情報を開示していない」


『……』


 

 異能の種を知った日。


 その存在以上に、

 ブラッドの言葉が笛の胸に妙に残った。



 

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