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地球まみれの宇宙人 ~体内ダンジョンに閉じ込められた最強侵略者が出ていってくれない~  作者: 鬼喜怪快


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17話 異能の種


 

 

 拘置室のベーダー星人に、

 ブラッドは笛の身体と声を使って

 語りかけた。


 木庭と流は硬直している。

 

 そして、

 急に主導権を取られた笛が

 誰より驚いていた——


 

「……これは、

 どういうことですか先輩?」


 ――プシュッ!


 

 木庭が口元をハンカチで押さえながら、

 奇妙なスプレーを流に吹きかけた。


 

「……ぶふーっ」


 

 流監視官は変な声を上げながら、

 白目を剥いて崩れ倒れた。


 

『ななな、何したの木庭!?』


 

 届かない声で身体の中から笛が問う。


 

「緊急時に備えて意識を落とすスプレーを

 持参していて正解だったわ。

 これで笛ちんの秘密は守られる……」


 

 笛は守られても、

 何か多くの大切なものを失っていることに

 木庭は気付いていなかった。

 

 そんな彼女に、

 笛は別の意味の恐怖を覚えた。


 

「ブラッド!

 身体を返しなさい!」


 

 力ずくで笛が主導権を奪い返した。


 

「必要な時は、

 せめて一声かけてよね!」


 

 笛は身体の中のブラッドと

 喧嘩をしているようだった。


 しばらく笛は、

 身体の中のブラッドと言い争っていたが——

 

 

「木庭、ブラッドが下に降りて話したいって

 言ってるんだけど……行ける?」


「まぁ……流くんも数時間は

 意識を戻さないでしょうし。

 もしかしたら一生……いやいや。

 あと、監視カメラは別の映像を差し込めば

 侵入したことくらい誤魔化せるので、

 大丈夫かな」


「あなたサラっと、

 すごいこと言ってない?」


 

 そして2人は拘置室へと下りて行った。


 今までなにに対しても無関心だった

 ベーダー星人2体が、

 2人に対して警戒しているのがわかった。


 

 大柄なベーダー星人・ランブ。

 細身のベーダー星人・シャン。


 彼らの前に笛と木庭が立った。


 まず、口を開いたのは笛……

 の身体を借りたブラッドだった。

 

  

「異能の種であるお前たちは

 生きていると思っていたぞ。

 訳あって地球人の身体に入っているが、

 俺はブラッドだ」


「……」



 笛は今だけ、

 ブラッドに身体の主導権を許可した。

  

 しかし、

 捕らわれのベーダー星人は返事をしなかった。


 さすがに警戒を続けているようだ。


 

「俺の戦略が甘かった。

 地球人を舐めすぎていたと言わざるを得ない。

 死んでいった仲間たちに合わせる顔がない」


 

 すると、細身のベーダー星人・シャンの身体が

 わずかに動いた気がした。

 

 笛には、

 それが泣いているように見えた。


 

「敗者の末路だ……

 我々がしてきたことが我々に返ってきた。

 ただそれだけのことだ……」


「うぅ……」


 

 シャンがほんの少し声を漏らした。

 その声は女性の声だった。


 

「地球人に力を貸しても誰も責めない。

 お前たちの好きにすればいい……

 自分たちのことを第一に考えろ」


 

 沈黙が落ちた――


 

 2人のベーダー星人は、

 口を開かないままだった。


 そこに笛がブラッドに質問を投げた。



『2人ともわたしの身体で話をしているのに、

 ブラッドだって信じてるの?』


「ベーダー星人は脳から発する周波数で

 身内かどうかを見分けられる。

 乱戦になった時も同士討ちになることはない」 

 

『あなたたちって、やっぱり色々とすごいわよね』


「そうか?」

 

『あの2人が異能の種ってやつなんでしょ?

 それってどんな能力なのか教えてよ』


「聞くとは笑止――

 お前の目なら聞かずとも読み取れるだろう」


『黙って相手の秘密とか見るの

 好きじゃないのよ!』


  

 ランブとシャンは黙って笛を見ていた。


 ブラッドは、

 拘束されて椅子に座らされている

 2体の前に立ち、口を開いた。


 

「地球人は我々と違い、

 敵を殺すことを前提にしている連中ではない。

 お前たちが地球人に力を貸すと言えば、

 生き残れる可能性がある」


「……」


「ベーダー星からの救援もないだろう。

 お前たちだけでも生き残って欲しい」


 

 それは上官から兵への命令ではなく、

 ささやかな願いのように聞こえた。

 

 ブラッドが話し終わった、

 次の瞬間——

 

 

「ブラッド様……」


 

 ランブという兵士が声をかけてきた。


 

「!」


「本当にブラッド様なのですか?」


「そうだ……。

 信じがたいがこのような姿で生き延びてしまった。

 詳しい経緯はわからんが、

 この地球人が俺を取り込んでしまってな。

 おかげさまで抜け出せないでいる」


「……それでも」


「?」


「生きていてくださって……

 これ以上ない喜びでございます」


「うむ」


 

 そのやり取りを見て、

 木庭が感動して泣いていた。



「仲間同士の信頼関係って……素敵だわ」



 笛からすると、

 一番信頼できない人間が、

 信頼関係に感動している姿が滑稽だった。


 

「その地球人が我々の能力を見たいと?」


「そうだ。

 異能の種というものを知らないようでな。

 興味があるらしい」


「地球人に手の内を見せろと?」


「今更地球人と戦うつもりでもあるまい?

 我々は負けたのだ、

 無駄に抵抗して命を落とすことはない」


「能力を見せろとは……

 どのようにして?

 能力を見せる時は相手を殺す時と

 決まっております」


「ふむ。

 確かに何もないところで能力を

 見せるというのは

 難しいことだな」



 思わぬところで、

 思案に耽る3体のベーダー星人。


  

 次の瞬間——

 

 突然、笛と木庭は

 信じられない出来事を

 目の当たりにする。


 ランブが座らされていた

 手枷足枷の付いた椅子が、

 粉塵となって砕けたのだ。


 そして、

 その場にランブが2本の足で立っている。


 

『嘘っ!』


「えぇ!」


 

 笛と木庭は驚きのあまり声を上げた。


 さらに衝撃は続く――


 シャンは椅子を壊すことなく、

 何事もなかったように

 すでに立ち上がっていたのだ。


 異能の種――


 笛は今から、

 その能力を知ることになる。




 

 

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