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54話 勇者の一撃

登場人物の番号と種族

14209番(主人公)

14210番(狐獣人)

11054番(女エルフ)

13882番(人間・少女)

07241番(熊獣人)

08511番(女竜人)

「もし、あの木がトレントだとしてさ。オレ達でどう倒す?」

 女竜人が腕を組んだままの姿勢で全員を見渡すと口を開いた。

 あの巨木の大きさは、そこら辺に生えているような木とは段違いだった。サイズでいえば、屋久島の縄文杉よりふたまわりほども大きい。そして、今はスケルトンの再生だけに留まっているが、もし本体である巨木自体がこちらに攻撃を仕掛けてきた場合、桁違いの威力になることは間違いないだろう。

「スケルトンを相手取りながら本体を倒す、か」

「かなーり、難しいわねぇ〜」

 熊獣人が顎に手をやりながら呟いた言葉に、女エルフも難しい表情で同意した。

「たかが、骨!たかが木になにビビってんだっ!」

 しばらく俺を含めた全員で頭を悩ませていると、痺れを切らしたように怒鳴り声が響く。28班のリーダーである勇者が、ところどころ刀身が錆び付いた聖剣を抜き放ち、通路の入口へと歩み寄った。

「おいチビ!この壁を消せ!」

 さきほど同じ班の仲間である魔法使いの弟にのされたばかりだというのに、その傲慢な上からの態度は何も変わっていない。彼は13882番へと岩壁を解除するよう命令した。

「あ、あの!…どどど、どうしましょう...」

 いきなり怒鳴りつけられ、鋭い言葉で命令された少女は、キョドキョドと視線を彷徨わせながら、俺たちへ魔法を解くべきかどうか尋ねてきた。

「いいんじゃないですか?どのみちここに閉じこもっていてもどうにもできませんし、現にスケルトン達がこちらへ攻撃を開始しています」

 狐獣人が短槍を低く構え、耳を岩壁の方へと向けたまま、現状を告げた。

「13882番、魔法の解除を頼む。それから、11054番と14209番への身体強化魔法を使用してくれ、その後は最低限の魔法で支援を頼む」

「13882番、お願いね〜」

 熊獣人が俺と女エルフへと視線を向けて少女へと指示を出し、女エルフは大弓を手に持ちながら、不安げな少女へ向けて優しく微笑み、声をかけた。

 声をかけられた少女は、意を決したように力強く頷いた。そして、俺たち二人へ向けて身体強化の魔法を使い、続けて岩壁を出現させていた魔法を解除する。

「おい勇者、アンタはこの世界が元の世界と同じだと思うなよ。今から見るのが現実だ」

「フンっ、トカゲが偉そうに...」

 少女が魔法を解除し、それまで外への道を閉ざしていた岩壁がサラサラと地面へと同化していく中、女竜人が28班の勇者へと警告を放つ。対する勇者はそれを鼻で笑うように吐き捨てると、手にした聖剣を自身の目の前に掲げ、祈りを捧げるような姿勢をとった。

「おぉ...」

 次の瞬間、勇者の周囲が眩く輝き、その光が錆びついた聖剣の刀身へと吸い込まれるように集束していった。その圧倒的な光景に、俺の口から思わず驚嘆の声が漏れる。

 岩壁が地面へと溶けていく最中にも、外からのスケルトンによる猛烈な攻撃は続いていた。だが、スケルトン達からの攻撃はすべて、女竜人と熊獣人が完璧な連携で捌き、防ぎ切っていた。

「退け!獣どもっ!!『我の願いここに叶う!グラウンド!レイっ!!!!』」

 勇者が攻撃を防ぐ熊獣人と女竜人へと命令し、眩い光を放つ聖剣を構えて通路から飛び出した。

 彼は上段から聖剣を叩きつけ、続けて十字を描くように横へと鋭く振りかぶる。聖剣から放たれた目も眩むような輝く十字の斬撃は、進路上にいたスケルトンの群れを通り抜け、奥に鎮座する巨木へと一直線に命中した。

「ふぅ...──!?」

 勇者が深く息を吐き、残心を解く。自信満々な表情で巨木へと視線を向けた彼だったが、次の瞬間、その顔は驚愕へと凍りついた。

 勇者の渾身の一撃を受けたはずのスケルトンも、そして本体であるはずの巨木も、何一つとしてダメージを負っていなかったのだ。

 俺たちは全員、その光景を目撃していた。

 勇者の放った派手な一撃は、スケルトンをまるで幻影のように撫でて通り過ぎ、巨木に衝突した瞬間に、その輝きが何もなさず儚く霧散していったのを。だが、勇者は技を放った直後、自分に酔いしれるように目を瞑っていたため、その真実を見ていなかった。

「なんで…俺の一撃が命中して平気なんだよ...!?そうだ!もう一度───なっ!?」

 勇者は愕然とした表情で取り乱すも、すぐにもう一度、先程の一撃を放とうと聖剣を正面に掲げた。だが、掲げた自身の聖剣の姿を目にした瞬間、彼は完全に言葉を失った。

──────錆び付いていた聖剣は「刀身が綺麗に無くなっていた」のだ──────

 俺の目にははっきりと見えていた。勇者が渾身の一撃を放った直後、聖剣の刀身は、根元からすべて赤黒く錆び果て、砂のようにサラサラと音もなく崩れ去っていったのを。

今回も読んで頂きありがとうございます!(´▽`)

読者の皆様に、楽しんで頂けたら幸いです。

数日以内に次回を投稿する予定です!


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