51話 群れの突破
登場人物の番号と種族
14209番(主人公)
14210番(狐獣人)
11054番(女エルフ)
13882番(人間・少女)
07241番(熊獣人)
08511番(女竜人)
「それで、気がついたことって一体何かしら?」
戦闘モードの女エルフが、鋭い声で俺に問いかけてくる。
「スケルトンの再生の瞬間。糸のようなものが光って骨同士をくっつけているのが見えたんだ。おそらく、スケルトンを操っている本体が別に存在している可能性がある」
俺は、綺麗な翡翠色の瞳を俺に向けている女エルフを見つめ返しながら、全員に気がついたことを話した。
「その本体ってやつが、今オレたちと28班の間にこの大量のスケルトンを生み出した可能性もあるってことだよな」
「そうだね。そして、ここで確実にその本体を倒さないと、撤退してもあの大量のスケルトンが俺たちを追いかけてきて、避難民区画の屋敷の地下室から王都内に侵入すると思う」
「面倒なことになりましたね。この中から本体を探すのは流石に骨が折れます」
俺の話に、女竜人が鋭い歯を覗かせながらスケルトンの群れを睨みつけ、苛立ちを抑えるように大剣の柄をギュッと力強く握りしめる。その女竜人に続く俺の言葉に、狐獣人が警戒を示すかのように耳を真っ直ぐに立て、フサフサの尻尾を脚に巻き付けていた。
「…とにかく、第28班との合流を急ぎたいな」
爪付きガントレットシールドを組み合わせた大盾で、遠距離型のスケルトンが放つ骨弾を防ぎながら熊獣人が言った。
俺たちの後ろからは十体のスケルトンが骨を鳴らしながらじわりじわりと距離を詰めてきており、第28班への道となる正面には遠距離型スケルトンの一群が俺たちへ向けて骨弾を放ち続けている。このままここで話していても俺たちがジリ貧なのは明らかだ。
「よし、状況が状況だ。いつまでもここにいる訳にはいかないよね」
俺はそう言うと細剣の柄を握り締める。俺の右手首には細剣から伸びた管が刺さったままですぐに力を使うことができる状態。俺は一度だけ深呼吸すると、正面のスケルトンを睨みつけた。
「14209番…その剣の力を、使うんですか?」
「それが一番手っ取り早くあの遠距離型スケルトンを突破して、第28班への道を作れるからね。14210番、08511番。二人とも俺の攻撃の後に続いてくれるかな?あのスケルトンたちの攻撃手段を奪うだけでいい。最低限の攻撃で抜けるよ」
少女が心配気な表情で俺を見上げて言い、俺はそんな少女を見ながら自信ありげな表情を作り答えると、狐獣人と女竜人へ指示を出した。
「俺が動くのが合図、だろ?14209番」
「その通り、07241番。準備はできてる。いつでもいけるよ!」
俺の言葉を聞いていた熊獣人がそう言うと、俺へ視線をやってニヤリと笑い、俺は大きく頷くとタイミングを熊獣人に任せる。攻撃の僅かな間隙を突くのは、俺には無理だからね。
「よし、遅れるなよっ!!『グオオオオオオ』!!!」
熊獣人がターゲットを自分に向ける咆哮を上げ、激しく駆け出す。体を可能な限り丸めて大盾の中に収めて走る熊獣人のその様は、まるで猛スピードで重機が突っ込んでいくような圧倒的な迫力があった。
「伸びろっ!!!」
俺はその真後ろにピタリとつき、声を上げながら細剣の刀身を伸ばすイメージを頭に浮かべた。刀身にある模様に赤い光が脈動するように走ると、シャラシャラと金属音を立てて刃が延伸していく。
そのまま遠距離型スケルトンの群れに向けて大振りに振りかぶり、スケルトンの脚を狙った。複数体の標的を同時に狙うのは初めての試みだったが、手元の感覚は自分の想像以上に冴え渡り、細剣が意思に従って動く。次々とスケルトンの脚を根元から切り落としていく。その際、骨に幾つもの傷を作るように刀身を暴れさせ、光る糸による容易な再生ができないようにした。
「うらぁああああっ!!!」
「ふっ!!」
脚を根元から切り落とされて体勢を崩すスケルトンへ向けて、女竜人と狐獣人が躍りかかる。
女竜人は大剣を豪快に振り回し、間合いの近いスケルトンに対してはガントレットについた鋭いヒレ状の刃、『副刃』による鋭利な一撃を見舞っていた。腕を切り落とすだけでも十分だったが、ついでといわんばかりに容赦なく首も刎ね落とし、さらに強靭な尻尾でスケルトンの頭を打つ。遠くに飛ばされる頭蓋骨もあれば、そのまま衝撃で砕けたものもあった。これほどの部位破壊を受ければ、再生の出足は確実に遅くなるはずだ。
狐獣人は短く息を吐きながら、手にした短槍で確実に遠距離型スケルトンの腕を一突きで的確に破壊していく。その無駄のない俊敏な動きの後ろからは、少女を背中におぶった女エルフが大弓を引き絞り、破壊力を重視した大矢をスケルトンへ向け放ち、通り過ぎざまに矢を引き抜き前衛を阻む壁を射抜いていた。
狐獣人と女エルフは獲物を狩る狩人のように見えて、女竜人や熊獣人の暴力的な力主体の戦い方とはまるで違っていたが、どちらもスケルトンの再生能力を確実に挫く一撃を与えていた。
「28班の所に着くぞっ!!」
熊獣人の大きな声が聞こえるとほぼ同時に、俺たちは遠距離型スケルトンの群れを完全に突き抜け、第28班を避難させた大木へと到着した。
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