49話 スケルトンの成長
登場人物の番号と種族
14209番(主人公)
14210番(狐獣人)
11054番(女エルフ)
13882番(人間・少女)
07241番(熊獣人)
08511番(女竜人)
女エルフの放った強烈な一矢が突き刺さったスケルトンは、その場にガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
それから、わずか数十秒。
カタカタと乾いた骨の音を鳴らしながら、倒れていたスケルトンが再び起き上がると、不気味に静止してその左腕をゆっくりと俺たちの方へ向けた。
「……アイツ、今度は一体何をするつもりだ?」
女竜人が瞬時に異常を警戒し、大剣の広い腹を横に向けて盾のように構え、完全な防御姿勢に入った――まさに、その直後だった。
──────ボッ!!──────
俺へと正確に左腕を向けていたスケルトンの先端から、突如として「何か」が射出された。到底、大弓から矢が放たれた時とは比べ物にならないほどの悍ましい音と速度。それは、避ける間もなく俺のすぐ耳の横を通り過ぎ、背後の岩肌を激しく穿った。
「なんだ……いまの、は」
俺の背筋を、冷たい汗がドッと流れ落ちる。この世界に召喚されてから見たこともない速度だった。もし今の弾道が数センチでも右にズレて直撃していれば、俺は死んでいただろう。
俺に向けて謎の物質を撃ち込んできたスケルトンは、カタカタと顎の骨を不気味に鳴らした。まるで独り言を言っているようにも、俺たちを見て笑っているようにも見えた。
「再生と成長。本当に、随分と厄介な特性ね……。みんな、ごめんなさい。私がその性質を見たがったばかりに、遠距離から攻撃してくる面倒な敵を一体増やしてしまったわ」
「気にしないで。おかげで近距離だけでなく遠距離でも、倒された瞬間の戦闘状態を部分的に模倣して体を再構築するっていうことが、よりはっきりと分かったんだから。それに、さっきも言っただろ? 俺自身、まだこの目で確かめたい『気になること』が残っている。それをまだ完全には『見れて』いないんだ」
女エルフが、鋭い戦闘モードの表情のまま俺たちへ向けて謝罪の言葉を口にした。自身の好奇心で敵を強化してしまったことを悔いる彼女に対し、俺はむしろ貴重なデータを引き出せたことに感謝していたし、俺の目的もまだ達せられていなかったので、その謝罪をすんなりと受け入れた。
「14209番の言う通りだ、気にするなよ、11054番。そもそもあんたの提案に俺たち全員で乗ったんだからな」
熊獣人はどっしりと構え、防御姿勢を解きながら、爪付きガントレットシールドの合体大盾を元の縦半分へとスムーズに分割した。そして、隣に立つ女エルフを横目でチラリと見やりながら、不敵に笑ってみせた。
「遠距離攻撃がヤベェってなら、近距離で徹底的に叩き潰してやるだけさ」
「ええ。それにまだ、本当の倒し方を見つけきれていませんからね」
「……ボクも、皆さんの邪魔にだけはならないよう、支援を精一杯頑張ります……!」
女竜人が大剣を握り直し、狐獣人が身を構え、少女が胸元で拳をギュッと握り締める。それぞれが武器と覚悟を構え、全員が女エルフの謝罪を笑顔で跳ね飛ばした。
「それに、幸いなことに全体の数は変わっていない。きっかり十体のままだからね」
「よし、もう一度接近戦で確実に仕留めるぞ! 14209番、お前の言う『気になること』を確認するためには、俺達はどう動くのが一番望ましい?」
俺が正面のスケルトンの数を数えて告げると、熊獣人がその力強い野獣の瞳を俺へと向け、必要な行動を求めてきた。
「出来れば……次は、スケルトンの体を粉砕してみてほしいんだ。スケルトンが負ったダメージの大きさによる再生に至るまでの正確な猶予時間と、その時に骨の体がどう結合していくのか、その光景をもう一度じっくりと観察したい」
「ハッ! 分かりやすくて最高な注文だ。そういう消し飛ばすような戦い方は、まさにオレの得意分野だからな!」
女竜人が防御体勢を解き、姿勢を限界まで低くしながら獰猛に笑う。
「アタシも、08511番(女竜人)の突撃の後に続いて仕掛けますよ」
深く腰を落として短槍を構えた狐獣人の身体からも、闘気が満ちあふれていた。
その時、俺へと遠距離攻撃を仕掛けてきたスケルトンがもう一度その左腕を掲げ、再度「何か」を撃ち出すモーションに入った。
「フン!……今度はこちらの番だっ!!」
再び俺の頭部を狙って超高速で射出された物体は、瞬時に前に躍り出てきた熊獣人の分厚いガントレットによって完璧に弾かれ、キィィンと高い音を立てて宙を舞った。
それを突撃の合図と言わんばかりに、獣の咆哮を上げてスケルトンの群れへと猛然と突っ込んでいく熊獣人。それに追従して、女竜人と狐獣人が地を抉る脚力で続いた。
熊獣人が弾き、近くの地面へと転がった敵の射出物を、俺はすぐさま拾い上げてその構造を凝視した。
(……これは、骨だ)
射出されていたのは、極限まで鋭利に削り研ぎ澄まされた、まぎれもない「ただの骨」だった。
驚くべきことに、その骨は俺が観察している先から、まるでサラサラとした砂へと変化するように崩れ去り、俺の手の中から一瞬で消滅していった。
(自身の骨を使い捨ての弾丸に変えているのか…)
正面では、早くも十体のスケルトンを相手に激しい大立ち回りを演じている熊獣人たちの姿が見える。俺の隣に立つ女エルフも、手にする大弓を一瞬でしなやかな両刃剣へと変形させると、風のような速度でスケルトンへと肉薄していった。
「皆さんへと、等しく行き渡るように……っ!『フィジカル・ブースト』!」
少女が両腕を前方へと力強く突き出し、広範囲の身体強化魔法を唱えた。
その刹那、前方で交戦している仲間たち全員の身体から淡い魔力が立ち上り、その身のこなしが一段と鋭く、劇的に跳ね上がったのが遠目からでも分かった。
「今回は皆さんに、同時に身体強化魔法をかけてみました。……ボクのこの腕輪の魔石も、ククルさん特性のもので腕輪も調律されていますから、必ず皆さんの役に立ってみせます……!」
決意に満ちた、強い表情の少女がそう言って俺を見上げてくる。
「……必ず第28班の人たちも一緒に連れ帰って、みんなで無事に帰りましょうね」
少女は続けてそう語ると、そのそばかすの浮かぶ愛らしい顔を、これ以上ないほどにっこりとした、頼もしい笑顔へと咲かせてみせた。
今回も読んで頂きありがとうございます!(´▽`)
読者の皆様に、楽しんで頂けたら幸いです。
数日以内に次回を投稿する予定です!
「面白かった」「次回も読みたい」と思われたら評価をお願いします!
感想もお待ちしてます!
皆様の反応をモチベーションにして頑張ります!




