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48/59

48話 スケルトン

登場人物の番号と種族

14209番(主人公)

14210番(狐獣人)

11054番(女エルフ)

13882番(人間・少女)

07241番(熊獣人)

08511番(女竜人)

 俺は思考のギアを一段上げ、再度気合を入れ直した。

(撤退するにしても、まずはこいつらを切り抜けないと始まらない……!)

 脳内で行っていた撤退までのシミュレーションを強制的に打ち切り、こちらへと走ってくるスケルトンの一群を鋭く観察する。

「───ちっ、やっぱそう単純にはいかないよな……!」

「再生能力が高く、走る速度もある程度ありますね」

 熊獣人が吠える直前、女竜人が第28班へと襲いかかっていたスケルトンの一体に、地面が抉れるほどの猛烈な一撃を叩き込んでいた。確かにあの時、骨の塊は粉々に砕け散っていたはずだった。それが、まるで時間を巻き戻すかのように再び形を取り戻し、立ち上がってこちらへ突進してきているのだ。

 その光景に女竜人がため息混じりの声で吐き捨て、大きな穂先を持つ短槍を構えた狐獣人が、警戒の色をより濃くした硬い声で言葉を繋ぐ。

「08511番(女竜人)、俺と前線を張るぞ! 14209番(主人公)! お前は状況を見て立ち回りを決めろ! 14210番(狐獣人)も同様だ! 11054番(女エルフ)は13882番(少女)と共に第28班の救助にあたれっ!」

「「「了解です!」」」

「わかったわ」

 熊獣人の指示に全員が瞬時に呼応し、熊獣人と女竜人の二人が、押し寄せるスケルトンの先頭へと真っ向から激しく衝突した。

 俺は細剣の柄を握り締め、武器を通じて自身の意図を深くイメージする。

(刀身は伸ばさない。……力を、交換するんだ)

 細剣の柄から触手のように伸びた細い管が、チクリとした痛みと共に俺の右手首の皮膚へと突き刺さる。細剣が俺の血液を吸い上げ、それを純粋な魔力へと変換して再び俺の体内へと巡らせていく。

 ――全身が、軽くなる。

 細剣によって得た身体強化と、先ほど少女から付与された強化魔法が、体内で完璧に噛み合った。

「よし! 14210番、左右から挟み込むぞ!」

「わかりましたっ」

 身体強化が全身へと行き渡ったのを確認した俺は、隣の狐獣人へと短く声をかけ、地を蹴ってスケルトン達の側面へと回り込んだ。

(体が、軽いっ!)

 スケルトンの一般的な倒し方といえば、胴と頭を切り離す。あるいは心臓の位置にある核を破壊する。もしくは頭部そのものを粉砕する。だが、この世界のスケルトン達を見ても、核のようなものはどこにも見当たらなかった。

 ならば試すまでだ。俺は、こちらへと標的を切り替えたスケルトンの一体の首筋へと狙いを定める。

「───ふっ!!」

 短い呼気と共に、鋭く右腕を振るう。

 身体強化された細剣の軌道は、俺のイメージ通りの道を辿り、スケルトンの首を刎ね飛ばした。

 ポーンと宙を舞う頭骨を左手で掴み取り、容赦なく地面へと叩きつけて足の裏で力任せに踏みつける。

「カシャリ」と乾いた音を立てて頭蓋骨が粉々に砕け散るのを見届け、俺はすぐにその胴体へと視線を戻した。首を失ったスケルトンは、操り人形の糸が切れたかのようにその場に膝から崩れ落ちると、ピクリとも動かなくなった。

「──壊せた? ……いや、まずは次だっ!」

 あまりの呆気なさに一瞬の疑問がよぎるが、警戒は解かずに次の個体へと狙いを定める。

 視線を対角線へと向けると、狐獣人が武器を持たないスケルトンによる引っ掻きを短槍の柄で軽くいなし、流れるような動作で穂先をその眼窩へと一突きに突き立てていた。その一撃で、スケルトンは地面へと崩れ落ちる。

 狐獣人はその撃破を確認することすらなく、即座に二体目の攻撃をスルリと紙一重で回避。スケルトンが踏み込んできた膝の関節を足場にして高く跳び上がると、左手を敵の頭部に添え、頭上で片手逆立ちという体勢を取った。そのまま重力を乗せた短槍を、頭頂部から股下へと一直線に突き抜く。その一撃を受けた骨の身体は、呆気なく崩れさった。

 彼女は彼女なりのやり方で、スケルトンの破壊方法を模索しているのだろう。俺も二体目を切り伏せる。これで、残りは六体。

 中央へと目を向けると、熊獣人が両腕を胸の前で合わせていた。左右の爪付きガントレットシールドを強固に噛み合わせ、ほぼ全身を覆い隠す大盾を形成すると、襲いかかる複数のスケルトンへ向けて、地面の土を抉り飛ばすほどの爆発的な脚力でシールドバッシュを繰り出した。激突の瞬間、骨の群れが文字通りバラバラに粉砕される。

 一方の女竜人は、自身の強靭な長い尻尾をも完全に戦闘へ組み込んでいた。前後を同時に挟み込まれる乱戦状態になろうとも、正面の刃は大剣の広い腹で軽くいなし、そのまま横一閃に叩き切る。同時に、死角となる背面からの接近に対しては、太い尻尾を鞭のようにしならせてスケルトンの足首を強烈に薙ぎ払い、転倒して無防備になったところを脚で踏み砕く。彼女の特性を活かした、パワフルな立ち回りだった。

 ――ほんの数分。あっという間に十体のスケルトンすべてを制圧した、そう思えた瞬間だった。

「14209番! 後ろだっ!!」

 背後から響いた熊獣人の凄まじい怒声に、俺は思考よりも先に肉体を反応させ、右側へと泥を這うようにして転がった。

 直後、俺がいた場所の空気を鋭く切り裂き、剣が振り下ろされる。振り返ると、先ほど俺が頭蓋骨を完全に粉砕したはずのスケルトンが、いつの間にか体を再構築して立ち上がっていた。

 油断していたつもりはなかった。咄嗟に身体が動いたのは、右手に握る細剣が俺の神経へ直接「動け」と伝えてきたような感覚があったからだ。

(……待て。俺が最初に倒したあの個体、村人タイプで武器なんて持っていなかったはずだろ……!?)

 そう、最初に切り伏せたときは、ただの素手だった。それなのに、今まさに体を再構築したスケルトンの右手には、一本の剣が握られている。――いや、違う。よく見ると、右手の骨そのものが、鋭利な剣の形状へと変異しているのだ。

「第28班のメンバーは、全員さっきの魔法使いと同じ安全な場所へ避難させたわよ」

「ボクも……ボクも一緒に戦います……!!」

 跳ねるようにして距離を取り、再び集合した俺たちの元へ、第28班の救助を終えた女エルフと少女が素早く合流した。

「第28班の様子は?」

 じわじわと、かつ確実に肉体を再構築していく目の前のスケルトンを睨み据えながら、熊獣人が警戒を解かずに二人に問いかける。

「負傷者二名は、13882番(少女)の処置とあっちの聖女のおかげで、なんとか一命は取り留めたわ」

「ですが……そのお二人は、これ以上の戦闘継続は無理かと思います。魔法使いさんの弟さんは、左肘から先を完全に両断されていました……。もう一人の獣人の方の種族はサイ獣人ですが、彼も盾がボロボロに砕けていて、身体全体にいくつもの深い裂傷を負っています」

「……了解した。ならば俺たちからの報告だ。このスケルトンは、倒されるたびに『成長』する。現に今、全員で確実に粉砕したはずだが、元々は武器を持っていなかった個体まで、体の一部を武器に変化させて再構築してきている」

 女エルフの言葉を引き継いだ少女の深刻な説明を聞き終え、熊獣人がこちらの戦況を極めて重い声で共有した。

「それは……随分と厄介な性質ね」

 その報告を聞いた女エルフの顔が苦く歪む。彼女は即座に大弓をギリギリと引き絞った。

「私もこの目で直接確かめたいわ。……悪いけど、もう一度だけ、戦ってもらえるかしら?」

「俺は構わないよ。ちょうど、俺の中にある疑問を確かめるためにも、もう一戦交えておきたかったところだしさ」

 女エルフの提案に、俺は賛同の意を示した。スケルトン達の再構築の理由。核もないし、頭を壊してもダメならどこかに『本体 』がいるはずだ。

「二人が確かめたいことがあるなら是非もなし! 各員、手傷だけは絶対に負うなよ!!」

 熊獣人の剛毅な声が戦場に響き渡ると同時に、女エルフの手から放たれた強烈な一矢が、再構築を終えたスケルトンの頭へと鋭く突き刺さった。

今回も読んで頂きありがとうございます!(´▽`)

読者の皆様に、楽しんで頂けたら幸いです。

数日以内に次回を投稿する予定です!


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