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45話 水精族

登場人物の番号と種族

14209番(主人公)

14210番(狐獣人)

11054番(女エルフ)

13882番(人間・少女)

07241番(熊獣人)

08511番(女竜人)

 不気味な幻影――『シャドウ・イミテーション』との戦闘を終えた俺たちは、救出した28班の勇者と思われる人物から、その場に腰掛けさせて事情を聴いていた。

「まずは君の所属と、パーティー内での役割を教えてもらいたいんだが、いいか?」

「……わかった。ウチは28班所属の10089番。班での役割は、魔法攻撃を主軸とした後衛、魔法使い(キャスター)だよ……」

 熊獣人が極力威圧感を与えないよう、優しい声色で問いかけると、少しだけ落ち着きを取り戻した魔法使いは、まだ微かに震える声で答えた。入れ替わるように、女エルフが静かに質問を重ねる。

「任務の更新通知が入ったのは、当然知っているわよね〜?」

「うん……。でも、ウチらのリーダーが『32班が合流する前にさっさとウチらだけで終わらせるぞ』って息巻いちゃって。それを誰も止められなくてさ」

「なるほどね〜。あなたたちは本来、この地下通路のどこまで調査を行っていたのかしら〜?」

「ずっと一本道で何もなかったから、もっと先まで進んでた」

「その間に、さっきの『シャドウ・イミテーション』……あの黒い影と遭遇したことは〜?」

「一度もないよ。本当に、さっきいきなり現れたんだ……」

「ありがとう〜。助かったわ〜」

 いくつか質問を終えた女エルフは、すらりと長い腕を組むと、眉をひそめて何事かを深く考え込み始めた。

「あぁ、そういえばまだ自己紹介をしていませんでしたね。俺は14209番です」

「先走って質問をしてしまってすまない。俺は07241番だ」

「14210番です」

「11054番よ〜」

「えっと、ボクは13882番、です……」

「08511番。オレは、こいつらに命を救われた11班の生き残りだ」

 俺はまだ名乗っていなかったことを思い出し、自身の番号を伝えた。それに続いて仲間たちも順に挨拶を交わしていく。すると、負傷した魔法使いは、最後に口を開いた女竜人の言葉にピクリと反応を示した。

「……第11班の、生き残り?」

「その話は後でじっくりしましょう。それよりも、この先の状況を教えてもらえますか?」

 狐獣人が、脱線しかけた話をそっと本筋へと引き戻す。

「あ、ごめんなさい。ウチらも常に周囲を警戒しながら慎重に調査していたから、この通路の終わりまで実際に到達したことはまだないんだ。でも、リーダーがすごく先を急いでいたから、もしかしたらもう出口付近まで進んでいるかも……」

 そう言うと、魔法使いは痛む身体を堪えながら、ゆっくりと地面から立ち上がった。

「……危ない、肩を貸しますね」

 顔の左半分に深手を負い視界も半分奪われているせいか、平衡感覚が鈍っているようで足元がふらふらとしていた。俺が慌ててその身体を支えて肩を貸し、彼女の足元に転がっていた木製の杖を、少女がそっと抱え上げる。

「ありがとう。……この先まで案内するよ」

 短く感謝を口にすると、魔法使いは痛々しい足取りで歩き始めた。

 

「他のメンバーの『役割ジョブ』を、事前に教えてもらえるか?」

 先頭で松明を掲げて暗闇を照らす女竜人が、後ろを歩く俺たちを振り返りながら話しかける。

「リーダーは『勇者』、サブリーダーは『聖女』。獣人のメンバーも一人いて、その人は『盾役タンク』。で、最後のひとりが……ウチの双子の弟で、『水精族』の『斥候シーフ』をしてる」

「情報に感謝するよ」

 第28班の戦力を聞き出した女竜人は短く応じると、「勇者かぁ……」と、吐き捨てるように小さく呟いて肩を落とした。

(08511番の元の世界にも、『勇者』がいたのかもしれないな……)

 そんな推測が頭をよぎったが、それ以上に、先ほどの言葉に含まれていた聞き慣れない単語に思考を完全に持っていかれてしまった。

「あの……さっき言っていた『水精族』というのは、一体どんな種族なんですか?」

 俺は肩を貸している魔法使いに歩調を合わせながら、隣の人物へと問いかけた。

「ありゃ、ウチらの世界の『水精族』を知らない感じ? ウチらは、肉体を持った精霊のような存在だよ。種族名の通り、水に特化した性質を持ってる。……水っていう自然現象は、器に合わせて形を自由に変えるでしょ? それと同じで、ウチら自体に本来は『性別』っていう概念は存在しないんだ。顔立ちは男女のどちらかに寄るけど、ウチらが『この人と生涯を共にしたい、家庭を持ちたい』って心から思った時に、その相手が望む性別、望む肉体へと変化するの。双子の弟もウチとそっくりだけど、あいつは少しだけ男らしい顔つきをしてるかな」

 どうやら、俺がてっきり女性だと思い込んでいた魔法使いは、本来は「無性別」の存在だったらしい。松明の限られた灯りの中では詳細な髪色までは判別しにくいが、整った顔打ちはどこか物憂げで、ダウナーな印象を醸し出していた。

「あ、そろそろ、ウチらが先行調査で進んだ地点に出るよ」

 そう語る彼女(ひとまず顔の印象から女性として扱うことにした)が指さす先を見ると、相変わらず通路には誰もいなかったが、踏み荒らされた土の地面には、明らかに複数の人物がドタバタと駆け抜けていった足跡が残されていた。

「ウチはここから先に進んだことはない。……だけど、完全な一本道みたいだし、このまま進もう」

 彼女はそう言うと、焦燥感に駆られたように、ふらふらとした足取りのまま前へと進む速度を上げた。おそらく、先行している双子の弟の身が心配でたまらないのだろう。

 ぴったりと肩を貸している俺も、半ば彼女に引っ張られるような形で、暗闇の奥へと力強く足を進めていった。

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