41話 新たな任務
登場人物の番号と種族
14209番(主人公)
14210番(狐獣人)
11054番(女エルフ)
13882番(人間・少女)
07241番(熊獣人)
08511番(女竜人)
温かい感謝の雰囲気に包まれていた広場に、ククルちゃんのどこか引き締まった声が響き渡った。
「――あ、そうでした! 言い忘れるところでしたが、今回お兄さんに施した調律によって、細剣の魔力を体全体へと流させ、一時的に『身体強化』に似た効果を生み出すことができるようになっているはずです! ただ、その魔力の発生条件として、お兄さんの『血液』が必要なことに変わりはありません。一回辺りの使用量も以前と変わりませんので、使いすぎれば当然失血死しますから注意してくださいね! ……それは皆さんも同じです。鎧に魔力消費軽減の術式を刻んだとはいえ、『一度減った魔力そのものが自然回復しない身体』であることは、決して忘れないようにしてください!」
ククルちゃんの言葉に、俺たちは一瞬にしてシビアな現実へと引き戻された。
俺は血液を代償にして細剣の魔力を引き出すが、みんなは違う。この世界に召喚された時から回復しない、有限の魔力。俺たちはその限られたリソースを削り削りしながら、これから先も戦い、生き抜かなければならないのだ。
「そうだな。ククルの嬢ちゃんの言う通りだ。俺たちの身体に残っている魔力の残量は、俺たち自身が一番よく分かっている」
「そうね〜。今はなるべく消費魔力の少ない最低限の技だけで済むように立ち回っているけれど〜、いつかはそれさえ厳しくなる日が来るかもしれないし〜……」
熊獣人と女エルフが、真剣な表情で互いに視線を交わし合う。
「本当にその通りです。いざという時に、あたしたちの体内に残る魔力がスカスカになっていたら、元も子もないですからね」
「……魔王討伐も、決して簡単な道ではないですもんね。ボクも、魔石の魔力消費量を少しでも抑えられるように、この腕輪の回路を改良してみました」
狐獣人は自身の手のひらをじっと見つめて拳を握り、少女は手首にはめた魔道具の腕輪を眺める。
「王国側から公式に発布された任務はまだ一つだけだが、ゴブリン討伐と、あの依頼の巨大ネズミ討伐……。オレたちの元の世界にいた奴らより、数倍以上タフで強い奴らを二体も倒してきたんだ。連携をもっと鍛え上げれば、さらに上の強い奴らとも渡り合えるかもしれねぇが、この先どこまで持つか……」
女竜人がこれまでの二つの死闘の成果を改めて口にした。その直後、さらに過酷になるであろう今後の戦いを想像したのか、その端正な顔を険しく歪めた。
――その時だった。
ピロン、と俺の視界の真ん中に、新たな任務の発生を告げる半透明のシステムウィンドウが唐突にポップアップした。
「チッ……今まさに、これからの身の振り方を真面目に話してるってのによ……」
「もしかして、新しい任務ですか……?」
熊獣人が煩わしそうに頭をガシガシと掻きながら重いため息をつくと、周囲の重くなった空気を察したのだろう、ククルちゃんが俺たちの視線の先を読み取るように尋ねてきた。
「ええと、次の任務は――『王国内にある屋敷の地下調査』。達成条件は『地下の安全確保』、ですか……」
「ずいぶんと、はっきりしない達成条件ですね。……おや? 下に追記情報もありますよ」
少女が任務内容を読み上げ、狐獣人が条件の不透明さに不満の眉をひそめると、ウィンドウの隅にある文字に気がついた。
「お、どれどれ……ほんとだ。『先行調査を行っている第28班との共同調査』、だってよ」
女竜人がその追記情報を声に出して読み上げた。
「第28班……。俺たちより前に名前を呼ばれて、王宮の広間から出ていった人たちの班、だよな。あの時、俺は自分が誰と同じパーティーになるかで頭がいっぱいで、死ぬほど緊張してたから……ぶっちゃけ、28班にどんな人達がいたか、何一つ覚えてないや……」
召喚されたあの日を思い出し、第28班のメンバーの容姿を記憶の底から引っ張り出そうとした俺だったが、自分のことで手一杯だったために他人のことなど全く気にかけていなかった事実を思い知る。
「……実は、オレもまったく覚えてねぇんだ。自分の名前がいつ呼ばれるかヒヤヒヤしてたからな」
「私もだわぁ〜。誰がいたかしらねぇ〜?」
俺の独り言に、皆も一様に記憶を探るように視線を彷徨わせたが、結局誰も思い出せなかったらしい。全員が揃って「うーん……」と眉を寄せ、モヤモヤとした何とも言えない複雑な表情で首を傾げている光景は、シビアな状況の中にあって、少しだけおかしくて心が和んだ。
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