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35話 新しい武具 (女エルフ編)

登場人物の番号と種族

14209番(主人公)

14210番(狐獣人)

11054番(女エルフ)

13882番(人間・少女)

07241番(熊獣人)

08511番(女竜人)

 ククルちゃんは狐獣人の満足そうな様子を見て嬉しそうに胸を張ると、次は女エルフへと顔を向けた。

「続いては、エルフのお姉さんの弓ですね! こちらへどうぞ!」

「私の武器はどのようになったかしらね〜?」

 女エルフは子供のようにワクワクした様子で、ククルちゃんの後ろをトトト、とついていく。

「こちらです!」

 ククルちゃんが自信満々に差し出したそれを見て、女エルフはゆっくりと足を止めた。

「あらぁ〜……。これは、だいぶ大型化されたわねぇ〜……」

 様変わりした自身の相棒を前に、女エルフは目を丸くした。それから、どこか愛おしそうにゆっくりとその弓を手に取る。

「エルフのお姉さんの弓は元々がかなり特殊な構造をしていましたので、ククルは徹夜続きで本当に大変苦労しましたよ〜!」

 ククルちゃんは額の汗を拭うような仕草をしてみせ、解説を始めた。

「まずですね、お姉さんの弓は『近接武器にもなる』という点が最大のポイントです。普通の弓なら木製なので弦を引けば全体がしなりますが、お姉さんの弓は上下の『リム』そのものが鋭利な刃物になっています。おまけに、弓に魔力を通すことで初めて、魔力の弦がリムに架かるという仕組みでした。これがまぁ――非の打ち所がないほど完璧な術式構成だったんです! 下手にいじれば弓として完全に機能しなくなるような術式でしたよ。お姉さん、あの弓は一体どこで手に入れたんですか?」

 ククルちゃんがひとしきりその変態的な難解さを語ると、女エルフは当時を懐かしむように目を細めて微笑んだ。

「えぇっとぉ〜。昔、パーティーで冒険していた時に愛用していた弓をね、ダンジョンで見つけた固有武器と合体させた感じかしらねぇ〜。当時の馴染みの鍛冶屋のおじさまと、魔術師ギルドの偏屈な連中には無理難題を押し付けちゃって、本当に申し訳なかったわぁ〜。お金もすっごくかかったけれど、そのお陰でどの間合いでも戦えるようになったから、今でも凄く感謝してるのよね〜」

「自分の弓と、ダンジョンで見つけた武器を組み合わせるか……。なかなか無茶な注文をしたものだな」

 熊獣人が当時の光景を想像したのか、眉間を揉みながら呆れ半分に呟いた。

「そんな凄いことを思いつくだなんて、11054番は凄いです……! ボクなら使えないって思って、他の人に譲っちゃうか、売るかもしれません……」

 少女が心底感心した表情で見つめると、女エルフはその視線に茶目っ気たっぷりのウインクで応えた。

「なるほど、その経緯が弓の完璧な術式と構成の理由だったのですね。納得です!」

 ククルちゃんは深く頷くと、本題へと話を戻した。

「それで! 元の仕様だった『双剣への分離機構』ですが、戦闘中の切り替えにはどうしても数秒のタイムラグが生まれて、少し手間かな? とククルは思いまして。遠距離射撃から近接戦闘へ、よりスムーズに移行できるよう改修しました! それと同時に、魔力で発生させる弦の強度を大幅に底上げする術式を追加してあります!」

「弓と近接形態をスムーズに? どういうことかしら〜?」

 女エルフは手元の大弓を隅々まで眺め回す。

「あら……? これ、真ん中から二つにパカッと分離できなくなっているわねぇ……」

「はい! 二刀への分離機構は思い切って排除しました! その代わりに、中央のグリップを軸に展開する『両刃剣』へと形状を変更したんです! 扱う時に多少の癖はありますが、操作そのものは以前の分離させる感覚と同様ですよ!」

 ククルちゃんの説明を受け、女エルフが中央のグリップを握ってカチリと捻る。

 すると、大弓のリム部分が滑るように互い違いの方向へと回転し、一瞬にして一本の「両刃剣」へとその姿を変えた。

「なるほどね〜。だから、弓の中央部分が長くなっていたし、リムも一回り大型化していたのね〜」

 彼女の象徴だった二刀弓は、ククルの手によって、流麗な両刃剣へと変貌を遂げる大弓へと進化していた。

「重量は以前より増してしまいましたが、重心のバランスは完璧に調整してあるので、武器に振り回される心配はありませんよ! ――さあ、弓の弦も張ってみてください!」

 ククルちゃんの言葉に従い、女エルフは両刃剣を滑らかに大弓の形状へと戻した。そこへ魔力をスッと通すと、淡い光を放つ魔力弦がピンと張り詰める。

 彼女は背中の矢筒から矢を一本抜き出すと、慣れた手付きで番えた。

 いつも通りに弦を引き絞ろうとした女エルフの細い腕が、徐々に力を帯びていく。弦の凄まじい反発力に、その腕が僅かに震えるほどの硬さだ。彼女はフッと息を抜いて弦を戻し、矢を矢筒へと収めた。

「ふふ、本当に驚いたわ〜。ほんの僅かな魔力量の変化で、弦が鋼のように固くなるのね〜」

 女エルフが少し驚いたように腕を軽く振って解していると、ククルちゃんが不敵な笑みを浮かべながら、見覚えのある「苦い記憶の蘇る緑色の皮」が張られた特製の的を運んできた。

「ふっふっふ……。エルフのお姉さん、そして皆さん。この的の皮に、見覚えはありますよね?」

「それって……」

「ゴブリンの……皮、ですか……?」

 全員が息を呑む中、ククルちゃんは元からあった練習用の的をどかし、そのゴブリンの皮の的を台の上へと設置した。

「そうです! エリクさんにお願いして、討伐したゴブリンの皮膚を一部、弓の性能テスト用に加工していただいたものです。お姉さん、その新しくなった大弓で、この的を射抜いてみてください!」

 真剣な表情で語るククルちゃんからは、職人としての並々ならぬ闘志が満ち溢れていた。

 ごくり、と全員が固唾を呑んで見守る。

 女エルフは一つ深く深呼吸をすると、大弓に再び矢を番え、静かに狙いを定めた。その眼光は、完全に一流の狩人のそれだった。

「すぅーーーーー……はぁーーーーー……。――ふっ!!」

 完全に心を研ぎ澄ませた女エルフの手から、矢が放たれた。

───パンッ!!!───

 訓練場に、まるで風船が爆発したかのような激しい破裂音が響き渡る。

 かつての戦闘では、その強固な皮膚に無惨に弾かれ、傷一つ与えられなかった忌々しいゴブリンの皮。それが、放たれた一本の矢によって容易く撃ち抜かれ、的の裏側まで深く、深く突き刺さっていた。

 突き刺さった矢羽の微かな震えを見つめながら、俺たちは全員、その凄まじい威力に驚愕し、言葉を失った。

今回も読んで頂きありがとうございます!(´▽`)

読者の皆様に、楽しんで頂けたら幸いです。

数日以内に次回を投稿する予定です!


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