32話 報告会
登場人物の番号と種族
14209番(主人公)
14210番(狐獣人)
11054番(女エルフ)
13882番(人間・少女)
07241番(熊獣人)
08511番(女竜人)
怪我人の手当てや引き継ぎを行った、翌日の夜。
「……俺たちが狩りに出ている間に、避難民区画の中でそんなに多くの犠牲者が見つかっていたとはな」
「それでも、助けられる命をしっかり助けることができた。それって、とっても素敵なことだと思うわ〜」
「そうですね。少しでも生き延びていた方がいたことを今は喜ぶべきです。……それで、新しく見つかった方々も、あの『火葬』というやり方で弔うのですか?」
俺たちは宿に戻り、狩り班(07241番:熊獣人、11054番:女エルフ、14210番:狐獣人)の三人との合流を果たしていた。
彼らも自分たちで設定していた目標量以上の狩猟を無事に達成しており、『フォレストボア』や『ヴォーパルディア』、『エレファントバード』など、複数の野生魔獣を仕留めてきたそうだ。
話によると、『ヴォーパルディア』は一見すると普通の鹿のようだが、自身の命に危機が迫ると頭部から刃物のように鋭い角を突き出し、的確にこちらの致命傷になり得る部位を狙って反撃してくる狡猾な魔獣らしい。
また『エレファントバード』は、その名の通り象のように巨大な身体を持つ地上性の鳥で、太い脚の先にある鉤爪を活かした、巨体に似合わぬ素早い蹴りを得意とするそうだ。
俺の記憶にある『エレファントバード(エピオルニス)』という地球の絶滅鳥類とは、どうやら全く違う凶暴な生き物だったみたいだ。
――閑話休題。
狩り班からの成果報告のあと、今度は俺たち捜索班の現状を伝えた。
犠牲者のあまりの多さに眉をひそめていた熊獣人だったが、女エルフと狐獣人は、生存者が見つかった事実を前向きに捉えようと、落ち込み気味だった俺と少女を優しく諭してくれた。
そんな中、女竜人だけは胸の前で腕を組み、トントンと指先で刻みながら何かを深く考え込んでいる様子だった。
「新しく見つかった犠牲者の方々も、前回と同じく火葬にする予定だとエリクさんが言っていました…」
「ただ、一気に弔うには人数が多すぎるから、何回かに分けて行うことになってね。その間、遺体の腐敗を抑えるために、教会の地下にある食糧備蓄庫のような冷暗所に一時安置してもらうよう伝えてあるよ」
狐獣人の質問に少女が答え、俺がその詳細を補足した。それを聞いた三人は「そうですか……」とそれぞれ厳かな表情で頷いた。
しばらく静寂が流れたが、やがて女竜人が一つ重い息を吐き、腕を組んだまま首を傾げて俺たちに問いかけてきた。
「……なぁ、オレたちが発見した犠牲者って、全員が部屋の中で死んでただろ? 『アルビノ・グナッシャー・ラット』は、一体どうやって彼らを襲ったんだと思う?」
「そこは俺も引っかかってたんだ。皆、まるでベッドの上で普通に寝ている時に、無警戒のまま襲われたような不自然な状態だった」
俺はあの凄惨な光景を頭の中で反芻しながら、女竜人に答える。
「それは……どういうことかしら〜?」
女エルフが指を口元に当て、考え込む仕草を見せる。
「08511番(女竜人)、その他に何か気づいた情報はないのか?」
熊獣人の言葉に、女竜人は小さく頭を抱えた。
「いや、流石にあの胸糞悪い現場をまじまじと見ている時はそれどころじゃなかったんだよ。宿に戻ってきて冷静になった今、ようやく状況の違和感に整理がついてきたんだ」
「……あの」
そこへ、少女が遠慮がちに小さく声を上げた。
「13882番、どうしましたか?」
隣の狐獣人が促すと、少女は記憶を確かめるように言葉を紡いだ。
「ボクの見間違いでなければ、なんですけど……。犠牲者の方がいた部屋の中に、無数の『小さなネズミの足跡』がびっしりと残っていました……」
それを聞いた全員の視線が、一斉に少女へと集まった。
「もしかして〜……」と女エルフが声を漏らす。
「あの巨大ネズミ、自分より小さな普通のネズミどもを操って、寝ている人々に夜襲をかけさせたってことか……?」
女竜人が女エルフの言葉を引き継ぐように、最悪の推論を口にした。
「可能性は非常に高いですね。あたしの世界にいたボスクラスの魔物にも、眷属や同種を配下として使役する能力を持つ個体がいました」
「そういえば俺の世界にもいたな。そこまで脅威度の高いヤツじゃなかったが、集団で来られると厄介極まりない能力だ」
狐獣人と熊獣人の言葉からするに、どうやらあの個体は狐獣人の世界の魔物に近い特性を持っていたようだ。
「もしかしたら、あの屋敷の地下室にあった穴の先を調べれば、何かわかるかもしれない。調査に向かった別の勇者パーティーが、無事に成果を持ち帰ってくれるといいけど……」
俺の言葉にそれぞれが複雑な表情で頷いた。すると、熊獣人がパンッと力強く手を一つ鳴らし、重くなりかけた場の空気を切り替えた。
「よし、今ここでこれ以上考えても始まらないな。俺たちは明日、ククルの店に向かおう。そろそろ武器の調整が終わっている頃だ」
「そうだね。……狩り班の皆も、この一週間の外での任務、本当にお疲れ様」
熊獣人の提案に同意しつつ、俺は外で汗を流してくれた三人に労いの言葉をかけ、全員で夕飯を取りに向かった。
初日のあの賑わいが嘘のように、夜の食堂は静まり返っていた。しかし、配膳されたスープに口をつけた俺は、思わず声を漏らした。
「お、中の肉が増えてる」
俺の呟きに、向かいに座る熊獣人が誇らしげに目を細めて笑う。
「俺たちの狩りが、多少なりともこの宿の流通に実を結んだのかもな」
その言葉に皆が温かい笑みを浮かべ、同意するように頷いた。
スプーンを動かしながら、俺はこの肉の増えたスープが、そして俺たちの流した血と汗が、いつかこの国の確かな希望に繋がることを静かに祈っていた。
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