30話 生存者
登場人物の番号と種族
14209番(主人公)
14210番(狐獣人)
11054番(女エルフ)
13882番(人間・少女)
07241番(熊獣人)
08511番(女竜人)
捜索を開始してから、一週間が経過した。
俺、女竜人、少女の三人はかつて巨大ネズミが住み着いていた屋敷を拠点にして、連日生存者の捜索を続けていた。
捜索範囲は広大だったが、幸いにも『アルビノ・グナッシャー・ラット』のような強力な魔物とは遭遇していない。避難民に割り振られた区画の半分以上を調べ終えていたが、ここまで生存者は一人も見つかっていなかった。
その間の食事は、王都の外で活動する狩り班の分も含めてエリクさんがすべて手配してくれている。この長丁場において、手持ちの貴重な食料を消費せずに済むのは本当に有り難かった。
「このエリアが最後か。ここが拠点から一番遠い場所だけど、最後まで警戒は怠らずに行こう」
俺はエリクさんから渡された区画の地図を見つめ、二人に声をかけた。そして、今いる場所から最も近い建物へと足を向ける。
しかし、相変わらず室内が激しく荒らされた無人の家か、あるいは直接見るのを躊躇われるような遺体が見つかるばかりの陰鬱な時間が続き、さらに一日が経過した。
「14209番さん! 13882番(少女)さん、08511番(女竜人)さんも、至急こちらへ!!」
拠点へ戻る時間すら惜しんだ俺たちは、安全を確保した建物で一夜を明かし、早朝から捜索を再開していた。そんな中、先行していた捜索隊の兵士の一人から大声で呼ばれた。
声のした方へ急行すると、小さな教会のような建物の入り口の前に、兵士と何やら会話を交わしている二人の子供の姿があった。
汚れた衣服に身を包み、髪はボサボサで頬はこけているが、まだあどけない顔立ちをした少年と少女だ。
「兵士さん、その子たちはどうしたんだ?」
女竜人が声をかけると、兵士がハッと振り返った。
「ああ、皆さん! 来てくれましたか! 彼らはこの教会の中に潜んでいたようで、我々の足音に気づき、助けを呼ぶために外へ出てきたとのことです!」
兵士の言葉に合わせるように、二人の子供はコクリと小さく頷いた。
「……キミたちは、双子? 二人きり、なのかな……?」
少女が子供たちの目線に合わせてしゃがみ込み、優しく声をかける。
「うん、わたしたち双子だよ」
「中にお父さんとお母さんもいる! あと近くに住んでた人たちも! 僕たちの友達もたくさんいるんだ!」
女の子が静かに答えると、隣の男の子が堰を切ったように元気な声を上げた。
「そっか……答えてくれてありがとう。お姉さんたちはもう少しだけ周りの安全を見てくるから、兵士のお兄さんの言うことをよく聞いて動いてくれるかな?」
双子の頭をそっと撫で、少女は兵士へと目配せをした。
「兵士さん、中の方々の対応をお願いします。俺たちは周辺の最終確認を済ませてから合流します。念のため、教会の扉は開けたままにしておいてください」
「分かりました!」
兵士は力強く頷くと、十人ほどの部下を引き連れて双子と共に教会の中へと入っていった。
「最後のエリアで、これだけの生存者か……。確かに、頑丈な教会の中なら安心感はあるよな」
教会の周囲の死角を警戒しながら、女竜人がしみじみとした口調で言った。
「……教会は、皆さんの心の拠り所ですから」
少女がはにかむような微笑みを浮かべ、「本当によかった……」と小さく呟いた。
この一週間、建物に入るたびに死体ばかりを目にしてきた俺たちは、「もう生存者はいないかもしれない」という最悪の言葉を、決して口に出さないようにしていた。一度でもそれを認めてしまえば、心が折れて諦めてしまいそうな気がしたからだ。
最後のエリア全域の安全確認を終えた俺たちが教会へ戻ると、兵士たちに先導された生存者たちが、列をなして屋敷の方へと移動しているところだった。
「周辺の安全確認、すべて完了しました。こちらは他に生存者は見つかりませんでしたが……教会の中には、一体何人おられたんですか?」
俺が教会の前で指揮を執っている兵士に声をかけると、彼は「お疲れ様です!」と敬礼し、晴れやかな顔で言葉を続けた。
「教会内部にて、五十名の生存者を確認しました! 内訳は子供が十名、成人男女が四十名。そのうち、ご老人と負傷者が合わせて二十五名です。現在、老人と怪我人を最優先で屋敷へ護送しつつ、次点で子供たちを。最後に動ける若い男女を屋敷へ避難させているところです」
「五十名……」
その具体的な数字を聞いた瞬間、一週間の緊張の糸が一気に切れた。
俺と少女は膝の力が完全に抜け、言葉もないまま、その場に崩れ落ちるようにへたり込んでしまった。石畳の冷たさが心地よく感じられるほど、俺たちの心と身体は限界を迎えていたのだった。
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