23話 ネズミ狩り
登場人物の番号と種族
14209番(主人公)
14210番(狐獣人)
11054番(女エルフ)
13882番(人間・少女)
07241番(熊獣人)
08511番(女竜人)
巨大ネズミの動きを止めるため細剣を構えた俺は、生き物のように俺の血を啜り出すその得物に、悍ましさを感じていた。
だが、ゴブリン戦で生き残れたのはこの細剣があったからだ。この武器を使いこなせなければ、明日をも知れぬこの世界で生きていけないことを、俺の本能が理解し始めていた。
細剣を持つ右腕が徐々に熱を持ち、思考が加速する。
巨大ネズミの動きが、まるでスローモーションのようにはっきり見える。
(今さらビビっても仕方ない。やるか)
脳から「恐怖」というノイズが削ぎ落とされたような、奇妙な感覚に包まれた。
巨大ネズミは、熊獣人が守り、女竜人が隙を突く連携を嫌がったのだろう。熊獣人の大盾を足場にして跳躍すると、武器が折れた狐獣人を狙い定めて襲いかかった。
「ふっ!」
狐獣人は巨大ネズミの鋭い爪を、折れた短槍の穂先で紙一重にいなす。
軌道を逸らされたネズミは空中で身体を捻り、地面を蹴ると、後方で魔法を構える少女に狙いを定めた。
「『ロックウォール』!」
少女が地面から岩壁を出現させて突進を防ぐと、そこへ女エルフが二刀のマチェットを構えて切り込む。
「やぁっ!」
巨大ネズミは赤い瞳をギョロリと動かし、マチェットを左の爪で防ぎながら、低い姿勢から鋭い蹴りを繰り出した。
「っ……いけぇ!!」
俺は「伸びる」イメージを細剣に叩きつけた。
途端、さらに血を抜かれる感覚と、右腕を焼かれるような熱さが襲う。前回のゴブリン戦と同様だ。刀身を伸ばす代償として、この剣は主の血液と熱量を要求してくる。
(代償の代わりに力をくれるってか……いいぜ、持っていけ!)
今を生き延びるための情報が頭の中へ怒涛の勢いになだれ込んでくる。
蹴りを放とうとしたネズミの脚部へ、しなやかに伸びた刀身が襲いかかる。
直感で危うさを察したのか、巨大ネズミは蹴りを中断し、四足状態で後方へ飛び退いた。そこから縦横無尽に走り回りながら、地下室の樽や籠を俺たちに向けて投げ飛ばしてくる。
「邪魔だっ!」
女竜人と熊獣人が前に立ち、飛来物を片っ端から叩き落とし、弾き返した。
「……折れた槍よりは、幾分マシだろう?」
俺は右腰に下げていた「肉切り包丁」を引き抜き、狐獣人へ手渡した。
「14209番、また腕が……っ」
俺から包丁を受け取ろうとした彼女は、俺の右腕を見て目を見開いた。
「刀身を操作する時の代償みたいだ。ククルちゃんのおかげか、ゴブリンの時ほど辛くはないさ。それより早く受け取ってくれ。あのネズミは一番の弱点を狙ってる。今は、14210番、キミだ」
狐獣人は頷き、右手に折れた槍、左手に肉切り包丁を構えて脚に力を溜めた。
「そこっ!」
いつの間にか短弓に持ち替えていた女エルフが、天井の隅へ矢を放った。
「どこを撃って……!?」
熊獣人が驚愕の声を上げた、その瞬間。
女エルフが放った矢の先に、巨大ネズミが自ら飛び込む形になった。先を読んでいたのだ。
「14209番!!」
女エルフの呼声に合わせ、俺は細剣を一閃させる。
伸びた刀身が、着地寸前だった巨大ネズミの後ろ足に絡みついた。
「ヂュッ……!?」
振りほどこうと暴れるネズミだが、刃はギリギリと肉に食い込み、真っ白な毛並みに鮮血の染みが広がっていく。
「皆さん、目を閉じて! 『光よ』!!」
少女が室内の明かりとは比較にならない、爆発的な閃光をネズミの眼前で炸裂させた。
「ヂュイイイイイイ!!!」
まともに光を浴びた巨大ネズミが目を押さえ、天井から無様に地面へと落下する。
その隙を、前衛三人が見逃すはずもなかった。
「縫い止める!」
狐獣人が折れた槍の穂先を投擲し、目を覆う前足を深く突き刺す。
さらに、ネズミは自らの脚を切り離してでも逃げようと足掻くが、動きは格段に鈍っていた。
「逃がさない」
狐獣人が追い打ちの肉切り包丁を投げつけ、怯んだネズミの正面から熊獣人が突っ込む。
「どっせぇいっ!!」
大盾による渾身のタックル。壁に叩きつけられたネズミが、一瞬だけ動きを止めた。
「こいつで……死になぁっ!!」
間髪入れず、女竜人の大剣が白銀の軌跡を描く。
閃光が奔り、アルビノ・グナッシャー・ラットの首が地下の暗がりに舞った。
休もうかと思ってましたが書きたい欲に負けました笑
今回も読んで頂きありがとうございます!(´▽`)
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