20話 ネズミの大きさ
登場人物の番号と種族
14209番(主人公)
14210番(狐獣人)
11054番(女エルフ)
13882番(人間・少女)
07241番(熊獣人)
08511番(女竜人)
屋敷に住み着いた巨大ネズミの討伐を引き受けることに決めた俺たちは、その旨を避難民の男に伝えた。
「あなたたちの依頼、引き受けます」
「ああ……! ありがとう、本当にありがとう……!!」
男は俺の手を硬く握りしめ、今にも泣き出しそうな顔で感謝を口にした。
「それで〜、もう一つ質問いいかしら?」
女エルフが、俺の手を握ったままの男に声をかける。男が手を離して向き直ると、「答えられる範囲なら」と促した。
「その巨大ネズミに襲われた人の数はわかる?」
「……はっきりとは。俺を含めてここにいる連中は屋敷のすぐ近くに住んでいて、その中からは数人が襲われた。ここ以外にも避難した奴はいるし、そいつらにも逃げるよう伝えたが、実際どうしたかは分からない。屋敷から離れた場所に住んでいる連中は、まだ逃げ出していないかもしれないんだ」
「ありがとう」
女エルフは柔和に微笑んで感謝を告げたが、その瞳の奥には鋭い険しさが宿っていた。
「じゃあ、俺たちは屋敷へ向かいます。あなたたちが以前話したという兵士さんに伝えておいてください。『第32班がネズミ討伐に向かった』と」
避難民の男が言っていた「人の良さそうな兵士」は、おそらくエリクさんのことだろう。彼に活動を把握しておいてもらうのは、不測の事態に備える意味でも重要だ。
(すぐにでも向かわないと、被害が広がりそうだな……)
俺は内心で気を引き締めると、門までの案内人を連れて、少し離れて待機していた獣人組と合流した。女エルフたちも合流し、俺たちはすぐさま移動を開始する。
「……ところで質問なんだけどさ。今回みたいな『巨大ネズミ』って、そっちの世界じゃ普通にいるもんなのか?」
「14209番の世界にはネズミはいないのか?」
俺の問いに、熊獣人が心底驚いたような顔で聞き返してきた。
「いや、いるよ。でも、俺の世界の一般的なネズミってこれくらいで……ドブネズミでもせいぜいこれくらいなんだよ」
俺が両手で十数センチほどの大きさを示して話すと、狐獣人がクスクスと笑った。
「14209番の世界のネズミは、ずいぶんと可愛いんですね」
「ボクの世界でも、人を襲うネズミはいましたけど……だいたい、ボクの腰くらいの大きさはありました」
少女は自分の腰あたりを指してネズミのサイズを表す。
彼女の身長は150センチ前半だろうか。その腰あたりとなると、もはやネズミというよりは大型犬のサイズだ。
「13882番、それデカすぎだろ……」
俺が引き気味にツッコむと、熊獣人が真顔で追い打ちをかけてきた。
「いや、俺のところもそれくらいが普通だぞ」
「異世界のネズミ、規格外すぎるだろ!」
思わず叫んだ俺は、隣を歩く女エルフと女竜人にも視線を向けた。
「そうねぇ〜。そのサイズは『ジャイアント・ラット』っていう名前で、立派な魔獣扱いね」
「オレのところもそれくらいだ。珍しくもねぇな」
どうやら、少女が示したサイズが「異世界の標準」らしい。
「14210番のところはどうだったんだ?」
隣を歩く狐獣人に尋ねると、彼女はさらりと言ってのけた。
「あたしのところは……これくらいですね」
彼女が示したのは、少女の身長とほぼ変わらない高さだった。
「それは……デカいな」
「ボクと……ほぼ同じ大きさ……」
「そのサイズは、ジャイアント・ラットの中でもかなりの年数を生きた個体ね」
「それだけデカけりゃ、いい非常食になりそうだな」
それぞれの反応が飛び交う中、狐獣人がとどめの一撃を放つ。
「いえ、あたしの世界ではそれが『小さい個体』です。ボスはもっとずっと大きいですから」
さすがの異世界組もこれには絶句し、しばらく一行に沈黙が流れた。
やがて、避難民たちが逃げ出す際に閉めたという門の前へ到着した。
俺たちは貸し出された急造の装備を今一度、入念に確認する。
「よし、各員装備の確認は終わったな。ここから先は俺と08511番が先行する。14209番は中衛。11054番と13882番は後衛だ。14210番は後衛二人の護衛を頼むぞ」
熊獣人の指示で隊列を組み、案内人にも厳命する。
「俺たちが通ったらすぐに門を閉めろ。目標の討伐が終わったら、声を上げて扉を三回叩く。それまでは絶対に開けるなよ」
案内人がこわばった顔で頷く。
「よし。第32班、巨大ネズミ討伐を開始する!」
その合図と共に、門の閂が外された。
ギィィ……と重苦しい音を立てて開いた門の先、死臭と獣臭の混じる屋敷へと、俺たちは足を踏み出した。
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