マークミス
こんなことになったのは単純である。今まで多くの受験生またはその予備軍を絶望に落としれたあれ。
そう、マークミスである。それは今まで血と汗と涙を湛えて頑張ってきた努力を、水泡と科す痛恨のミス。
だが、それもまだかわいいものだ。死にはしないから。ワンミスで人が死にかけるなど本来あってはならないのである。そんな危険が潜んでいるのなら職場なら即刻労基行きだし、そんな生態をしている生物なら特別な対策がなければすぐに全滅してしまう。マンボウだって対策している。
ーーーいろいろ考えたがこの状況はおかしい。他人のよくあるミスで、俺の生命はワンミスで消し飛ぶ危険と隣り合わせになったのである。いや、正確に言ったらそいつと俺でニミスだが。
俺はそのワンミスをぶっ放した相手と相対している。
「・・・ごきげんいかがでしょうか。柊さま。・・・ご息災そうですね」
「いや」
長い沈黙の後、おずおずとそいつは口を開いたが、俺が一言で制する。また長い沈黙が訪れた。
「元気なわけねーだろ!!??こっちはいつも死にかけてるんだよ!!なんでファーストアタックの奪い合いを毎回しないといけないんだよ!!??スマ◎ラだと常にサドンデスだぞ!!??」
俺の剣幕にそいつは俯きつつはい、はい、と肩を震わせていた。
言い過ぎたか、と少し罪悪感を覚えてひるんだのも束の間。
「てめえが悪いんだろうよ!!??紛らわしい名前しやがって!!!てめえ人のせいばっかにしてんじゃねーよ!!」
他責思考の他責である。勢いのまま売り言葉に買い言葉すぎるだろ。
「いや、おめえこの日本に何人『はじめ』さんいると思ってんだよ。こんだけミスが誘発されそうなシステムなら疑えよ。苗字をくみ取る努力もしてくれよ」
「・・・・・・んああああああーーーん!!!!!」
・・・・・俺の勝利である。
そろそろこいつにもスポットを当てよう。
こいつの名前はタースマリー。日本からの転生者を様々な異世界にあっせんする女神だ。
といってもパソコン作業みたいな事務作業がメインなんだが。事務系コンサルタントである。
どうかタセキマリーと呼んでやってほしい。
「それで、タセキマリー。修正とかできたりしないのか?」
俺の建設的な発言に、調子を取り戻したのか、肩で息をしていたタセキマリーはコホンと咳ばらいをして姿勢を正した。しかしすぐに俯いた。
「申し訳ございません。ステータスの修正はできない決まりになっています。もう転生は完了したのでこちらの手から離れております。こうやって再び面談しているのもギリギリなラインです」
やはりそうか。出生届と同じらしい。
だがはいそうですかと言って引き下がるわけにはいかない。
「このままだと軽く小突かれるだけでも死ねるんだが、なにか・・補填とかそういうのはないのか?」
「ううう・・・もう少し時間をください。もう一度掛け合ってみます。補填についてもご相談させていただきます。それまではどうか安静にお願いします」
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そう言って女神と話したのは、昨日の深夜。夢の中であったことを思い出した。
ーーーーー赤い、自らの血の海に沈みながら。




