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かけ違い

うっそうと茂った森を二つの影が横切った。先行する影は人間の齢10ほどの少年で、後を続く影は彼よりも二回り以上も大きい狼だ。

彼らはこの逃走もとい追跡劇を数分前から続けている。


「ハァ・・・・ハ・・・・・ッ!! しつけえんだよクソが!!」


自分がつい先ほど通過した茂みをかき分ける音を聞いて、追跡者が迫っていることを嫌でも認識してしまい、思わず悪態をついた。先ほどよりも近くに気配を感じた。すぐにこの決着はつくだろう。


「やるしかないのか!? 全部かけて!! 」


捕食者は本来、成人した男性にとっては取るに足らない相手だった。小指の半分ほどの牙を盾で受け、喉を横から一刃入れるだけで終いだ。


しかし、これは平均的な防御力、攻撃力を併せ持った、平均的成人男性のよる戦法だ。

彼は成人男性でも、ましてや平均的な能力を持ち合わせていなかった。


「一撃でも受けたら死ぬ!!なんなら掠っただけでも死ねる!!」


今日何度目かもわからない悪態。

逡巡している間にも彼我との差は縮まるばかりだ。もうすぐ後ろで荒い息遣いが聞こえてくる。

覚悟を決めなければ、どのみち彼は最悪の結末を迎えることになる。


意を決して彼が拾い上げたのは、一片の小枝。

それは幼子が森を探検するときに振り回すような、犬が散歩時に持ち帰るような、少年の腕ほどの長さだった。およそ20CM。厚みはほとんどない。それは狼に立ち向かうには少々心許ない。・・・・平均的な人間であれば。


「クソがあああああ!!!!」


彼は振り返り、勢いよく小枝を掲げ、そして振り抜いた。

あろうことか彼は唯一の武器を投げ出したのだ。

もう彼に打つ手は残されていない、はずだった。

小枝は少年の手を離れ-----


ズドオォォォォォォ!!!!


発火したかのような激しい摩擦音とともに射出された小枝は、狼の顔面を貫き、胴体を縦に寸断した。勢いはそれでは収まらず、そのまま数十メートル先の木に大きな音とともに激突した。その轟音は発砲のように聞こえただろう。


「はは・・・はは・・なんだよもう・・・・これを毎回やんのかよ・・・・」


狼の絶命を見届けたのち、少年はその場でヘナヘナと座り込んだ。

小さくステータスオープンとつぶやく。

\\\\\\\\\\\

ヒイラギ

HP:1

ATK:130

DEF:8

DEX:9

LUK:15

???:16

\\\\\\\\\\\


彼の名前は柊 はじめ。彼のステータスはバグっていた。




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