9. 夢に向かって
9. 夢に向かって
翌朝。今日も朝から清々しいいい天気なのです。私は手早く荷物をまとめて出発の準備を整えます。その時、ふと壁に立て掛けておいた物の変化に気づいたのです。
私が解毒薬の鉄分補給のためにナイフでゴリゴリと無残に削り取ってしまった鉄のロッドの傷跡が、見事に修復され、ピカピカに磨き上げられていたのです。
「ふふっ……ミルディですかね?いつの間に直してくれたのでしょう……職人さんの優しさに、本当に心が温まるのです」
そしてそのロッドを持ち部屋を出る。別れの挨拶をするため工房に行くとブラック親方とリオンさんがいました。
「あの色々ありがとうございました」
「いや礼を言うのはこっちの方だ聖女様。あんたは聖魔法なんか使えなくても、間違いなくオレたちを救ってくれた。ありがとな」
「アリーゼ様。これから頑張ってください応援してますから!」
「はい。皆さんもお元気で」
私は工房内を見渡すがそこにはミルディの姿は見えなかったのです。少し残念です。最後に挨拶したかったのですが……
「あと聖女様。これからも……よろしく頼むな」
「はい?もちろん何かあれば何でも言ってくださいなのです」
微妙に会話が噛み合っていない気もしますが、まぁ些細なことです。私は二人に深い感謝を伝え、気前よくいただいたたっぷりの旅資金を胸に抱いて、意気揚々と鍛冶屋を後にしました。本当に感謝なのです!
「さて。山のお肉も美味しかったですが、次は絶対に港町で新鮮な海鮮を食べたいのです!となると……まずは経由地であるシルクナートへ向かい、そこから港町クレスタを目指すルートですね!待っててくださいね、プリプリの海鮮ちゃんたち!」
私はバサッと地図を広げてルートを確定させると、足早に街の馬車乗り場へと向かいます。親方さんからいただいた潤沢な旅の資金がありますからね。もう木の棒を投げて森を彷徨うような真似はせず、優雅に馬車の旅を楽しむのです!
そして私が馬車乗り場に着くとそこには見たことのある赤い髪の女性がいたのです。
「あれミルディ?……大きな荷物なのです。どこかに行くのですか?」
「アリーゼ」
「でも挨拶できてなかったのでちょうど良かったのです!」
「あのさ……あたしもあなたの旅に連れてって!」
「え?」
「あたし、あなたのこと尊敬したの。どんなことがあっても前を向いて進むあなたの姿に。だからあたしも……夢に向かって歩き始めたいと思った。でも1人じゃ心細いし……アリーゼとなら……あたしの夢が叶えられるんじゃないかって。あたしのワガママだけど……お願い!」
突然の申し出に驚き戸惑ってしまう。
しかしこれは嬉しい話でもあるのです。まさかこんなところで友達ができるとは思ってもみなかったのです。ミルディは一人前の魔法鍛冶屋さんを目指している。
私とは目標は違うのですけど、夢を叶えたいという気持ちはわかるのです。それに1人じゃ心細いのなら私でよければ一緒にいるのです!だって私は……
「私はただの聖女なのです。だからミルディが1人で心細くて困っているのなら、喜んで一緒にいくのですよ」
「!?アリーゼ……ありがとう!」
ここでようやく、私は先ほどのブラック親方の「これからもよろしく頼むな」という言葉の本当の意味を理解したのです。きっと、娘が夢のために旅立つことを知っていて、私に背中を託してくれたのですね。不器用な親子の愛情に、なんだか胸が温かくなったのです。
「アリーゼどこに行くつもりなの?」
「次は港町クレスタに行きたいのです!」
「じゃあシルクナート経由だよね……あ。ちょうど馬車が来たよ!」
「おお。早速行きましょう!」
さて、それでは早速乗り込むとしましょうか。行き先はとりあえずシルクナートです。その後は北の港町クレスタで海鮮を食べましょう。そしてそこで船に乗って違う国に移動しましょうかね。
私はミルディと一緒に馬車に乗り込み、ついに次の街へ出発することになったのです。次は何があるのか楽しみなのです




