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聖女アリーゼの不思議な旅  ~聖魔法?そんなの知らないのです!~  作者: 夕姫
第2章 聖女。灼熱の王国を駆け巡るのです!

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26. 新たな一歩

26. 新たな一歩




 昨日の魔導大図書館で頭に叩き込んだ中級魔術書の内容を、白紙の本にスラスラと書き起こしている真っ最中なのです。


 本の世界ではこれを『写本』と呼ぶらしいのですが……よく考えたら、一度読んだだけの分厚い魔術書を一言一句違わず書き写せるこれって、私の恐るべき特技なのでは!?なぜ今までこの素晴らしい才能に気づかなかったのでしょう!私は天才かもしれないのです!


 ミルディはいつも通り魔法錬金で作った素材を売りに街に行き、ロゼッタ様とフィオナはいつも通りギルドの魔物討伐依頼を受けているのです。もしかしたら早速ロゼッタ様は昨日読んだ魔術書の魔法を試しているのですかね?


「う~ん。今日もいい天気なのです。こういう日はロゼッタ様じゃないのですけどお昼寝をしたい気分なのですね!」


 そんな事を考えながら、写本をしているうちにいつの間にかお昼の時間になったのです。すごく集中していたみたいなのです。お腹が空いたのです。外に行って何か食べたいのです。宿を出て空を見上げると……眩しい太陽が見えるのですよ。私が大広場を歩いているとベンチに集まっている人たちがいるのです。その姿から観光客なのですかね?私は気になって声をかける。


「どうかしたのです?」


「あっいや。ただの乗り物酔いだよ」


「こいついつもこうだから。休んでれば大丈夫だから。心配してくれてありがとうなお姉さん」


 乗り物酔いなのですか……列車は揺れますしね大変なのです。その男性は顔色も悪いですし、せっかくの観光なのに可哀想なのです。


 よし!ここはあの本に書いてあった通りに。


「あの少し待っていてくださいなのです」


「あっお姉さん?」


 そういうと私は街にある食べ物屋を回り、必要なものを買い揃えまた大広場へ戻ってくる。そして乗り物酔いに効果のある飲み物を作りその男性に渡す


「これを一気に飲み干すのです。ミント水に塩を少々加え、レジンの葉をすりつぶして混ぜた特製ドリンクなのです!目が回った時や吐き気に劇的な効果がある、本に書いてあった究極の処方箋なのです!」


「本当か?お姉さん、もしかして凄腕の医者なのかい?」


「いえ、私はただの聖女なのです」


「え?聖女様?」


 久しぶりにこの反応をされたのです。まぁ聖女なら聖魔法でちょちょいのちょいなのですからね。まぁ、聖魔法が使えなくても、その辺で買ってきた草と塩を混ぜるだけで人を救えるのですから、実質同じようなものなのです!


 特製ドリンクのおかげで、すぐに男性の顔色は良くなり、大層感謝されてしまいました。ふふん、やはり人助けをすると気分がいいのです!


 そんな晴れやかな気分のまま大広場を抜け、繁華街のほうへ差し掛かった時です。宿屋へ戻る途中のミルディの後ろ姿を見かけたので、私は声をかけました。


「ミルディ」


「あっ……アリーゼ」


「何を見ているのです?」


 ミルディは魔法素材屋に貼り出された一枚の紙を見ているのです。そこには珍しい鉱石の名前が書かれているのが見えました。そういえば前にミルディと共に魔法の糸を売りに来たときはこの貼り紙はまだなかった気がするのです。でもなんでしょうねこれ?私も見てみたいのです。


 ミルディはその張り紙を見て真剣に悩んでいる様子だったので、何があったのか聞いてみることにしました。


「いやさ。あたし魔法鍛冶屋なのにいつも素材ばかり作ってるからさ……武器を作るの憧れるなって」


「そういえばミルディは「賢者の石」と呼ばれている鉱石で、自分だけの武器を作るのが夢だったのでしたね」


「うん。この張り紙の鉱石は「ミスリル」凄い希少価値の高い鉱石なんだ。それが北の魔法都市ルナノワールの鉱山で見つかったんだってさ」


 ミスリル。それは採掘量が少なくあまり出回っていないものらしく、すごい希少価値のある鉱石らしいのです。私はミルディのその顔を見て決めたのです。


「それなら次はそのミスリルを探しに魔法都市ルナノワールに行くのです!そしてミルディがそのミスリルで私たちの武器を作ってほしいのです!」


「え!?無理無理!あたしの持ってる錬金釜じゃミスリルを加工できないよ。せめてその錬金釜もミスリル製にしないと……」


「それなら錬金釜も作るのです!鉱山……今度こそミスリルの他にアリーゼ鉱石も見つかるかもです!楽しみなのです!」


「アリーゼ、簡単に言わないでよ……! ミスリルは凄まじい魔力抵抗と硬度を持った伝説級の金属なんだよ? それを溶かして錬金釜の形に打ち直すには、膨大な魔力と炎が要るの。あたし一人の魔力じゃ絶対に無理だって……それに、ミスリルを扱うような高度な加工技術なんて、あたしにはまだ……」


 ミルディは俯き、自分の実力不足を理由に諦めようとしています。


 でも、そんなわけないのです。ミルディがその張り紙をどれほど真剣な目で見つめていたか、私は知っているのです。だってそれは、ミルディの魔法鍛冶屋としての本当の夢なのですから!私は彼女の背中を力強くバンッと叩いてあげるのです。


「それならロゼッタ様やフィオナもいるのです。遠慮する必要はないのです!任せるのです!そうと決まれば宿屋に戻るのです!」


「なんでアリーゼが決めてるの?ってちょっと待ってよ!」


 早速宿屋に戻るとそこにはロゼッタ様とフィオナが仕事を終えて戻っていたのです。私は2人に話すことにする。


「ロゼッタ様、フィオナ魔力を貸してほしいのです。ミスリルの錬金釜を作るのです!次は北の魔法都市ルナノワールに行くのです!」


「錬金釜?ミルディさんの錬金釜を作るの?ボクと師匠の魔力で?」


「フィオナごめん。気にしないでいいから、アリーゼが勝手に言ってるだけだからさ?」


「勝手じゃないのです!」


 私がそういうとロゼッタ様が答える。


「うむ。魔法都市ルナノワールか……ミルディ。ミスリルを加工して武器を作るつもりなのか?」


「いや。その武器を作れたらいいなって少し思っただけだからロゼッタ様」


「それなら協力するのじゃ。ミスリル製の武器は魔力を通しやすい。ワシやフィオナも魔物との戦いが楽になるのじゃ。それに魔法都市ルナノワールなら魔術書も豊富に揃っておる。ワシは賛成じゃ」


「強くなれるならボクも頑張るよ!ミルディさん、ボクの剣作ってほしいの!」


 こうして私たちは次の目的地が決まりました。次の目的は北にある魔法都市ルナノワールなのです。どんなところか楽しみなのです。


 そして翌日。私は目を覚ましベッドから起き上がると軽く伸びをする。窓から見える朝日を浴びると気持ちのいい朝だと感じる。


「おはようアリーゼ……」


「おはようなのです。ミルディ……もしかして怒ってるのです?」


「え?怒ってないけど……少し強引。それにあたしにミスリルの加工なんてできるかなって不安なだけ」


「できなくてもいいのです。それがミルディの夢へ近づく一歩なら、それを私たちが一緒に踏み出したいのです。それじゃダメなのです?」


 私がミルディにそう伝えると顔を赤くしながら照れているようでした。ソルファス王国での目的も終えて、次の目的地も決まりました。私たちは4人でまた新たな旅路を行くことになるのです。どんなことが待っているのか、それが楽しみなのです。

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