22. 約束の石板
22. 約束の石板
私たちはサリア様の妹アリア様を無事に助けだし、ソルファス王国は聖エルンストに制圧されることになったのです。やはり悪いことは許されないのでこれで良かったのです。これから国が変わっていくといいのですという期待もできますね。
そして私たちは本来の目的の遺跡群にある「キルシュ古城」にたどり着いたのです。古代遺跡なのです……未知の鉱石とかが発見されたら、アリーゼ鉱石と名付けるのです!と楽しみにしていたのですが……ロゼッタ様が元気ないように見えるのです。どうしたのでしょうか?
「あのロゼッタ様どうかしたのです?お腹空いたのです?」
「子供扱いするでない!別に何もない……」
やっぱりおかしいのです。いつもならもっとテンションが高くて杖で叩かれているはずなんですけど……私は気になったのでロゼッタ様に問い詰める。
「やっぱりおかしいのです!何か隠してるのです!」
「な……何も隠しておらん……」
「ロゼッタ様。何かあるなら言ってね?あたしたち仲間なんだから」
「ボク。師匠が元気ないの見たくないよ」
「……あ~もうわかった!言えばいいのじゃろ!」
そう言ってロゼッタ様は、ふっと自嘲気味に息を吐き、崩れかけた城壁へそっと触れながらポツリと話し始めたのです
「昔このキルシュ古城で、ワシは1人の男と出会ったんじゃ。その男はワシより年上でとても優しく強い人じゃった。そしてワシはその人に恋をした。しかしそれは叶わぬ恋じゃった。彼はワシのことを妹のようにしか思っていなかったからの。それでもよかったのじゃよ。彼の側にいられるだけで幸せだったのじゃから」
ロゼッタ様……乙女なのです。そんなことを考えているうちに話は進んでいました。
なんでも、その人はロゼッタ様に魔物との戦い方を教えてくれた恩人だったらしいのです。そんな切ない思い出があるから、このキルシュ古城にはあまり来たくなかったのですね。
そんな重い昔話を聞いてしまったミルディとフィオナは、どう反応していいか分からず、「あ、あっち調べてきまーす!」と気まずそうに足早に先へ行ってしまいました。完全に逃げたのです。
まぁ、私が1番お姉さんなので別に動じないのです。こういう時こそ、大人の余裕で小粋なトークをしてみせるのですよ!全然気まずくないのです。本当なのです。
「ロゼッタ様にも、恋に恋する可愛らしい時代があったのですね。しかも、その失恋話を恥ずかしげもなくペラペラと語れるなんて、すっかり悟りを開いた大人なのですね!」
「うるさいの。ワシは大人じゃ。それに今となっては過去のことじゃしのう。恥ずかしさなんてないじゃろ……」
とそう言うロゼッタ様の顔は赤かったのです。本当に可愛らしいのです。私はミルディとフィオナのあとについてキルシュ古城の中に入る。すると天井が抜けている場所が多くそこから日の光が差し込みとても幻想的な場所に見えるのです。凄く綺麗なのです。人気スポットなのも納得なのです!
しばらく進むと大きな扉が見えてきたのです。ここが最深部みたいです。中に入るとそこには巨大な壁画がありました。見たこともない文字が書かれているのです。でも何故か読める気がします。不思議です。もしかして何かの本に書いてあったかもしれないのです!
そこに描かれている絵には、黒い翼を持つ悪魔のような生き物と戦う人々の姿が描かれているのです。これは女神と邪神の戦いを描いているのですかね?私が壁画に見入っているとロゼッタ様がみんなに話始める。
「ちょっとついてくるのじゃ」
「師匠?ここが最深部だと思うけど?」
「あったのじゃ。この傷……」
するとロゼッタ様は奥の壁に向かって歩き出し壁の前に立つとその壁に手をかざすと魔法陣のようなものが現れる。次の瞬間眩しい光に包まれたと思ったら目の前に大きな扉が現れたのです。そしてロゼッタ様は振り返るとこう言ったのです。
「ここは約束の場所なのじゃよ。もう来ることはないと思ったのじゃがな……」
そう言いながら、ロゼッタ様は重い隠し扉をゆっくりと押し開けました。その奥には、頭上のポッカリと空いた穴から真っ青な空が見える、上へと続く長い螺旋階段があったのです。
私たちは光に導かれるように、ゆっくりと階段を上っていきます。そこは、崩れ去った城の天井から青空と眩しい陽光だけが降り注ぐ、まるで世界から切り離されたような空中庭園でした。
そして辿り着いた古城の最上部には、緑の蔦に覆われた、小さくも美しい古びた教会が静かに建っていたのです。
「わぁ……凄く綺麗な教会だぁ。こんなお城の隠し部屋みたいな場所に、なんで教会があるんだろう?」
「ここは『天空のチャペル』と呼ばれている場所じゃ。ここで愛を誓った男女は、末永く幸せになると言われておってな。……大昔は、誰も知らない秘密の場所じゃった」
「へぇ~そうなんですね!ロマンチックなのです!」
私たちがその教会の入口に近づくとロゼッタ様が寂しそうにその教会を見つめていたのです。後悔……しているのでしょうか?その男性に想いを伝えられなかったこと。ロゼッタ様は魔女なのです。普通の人間とは寿命が違うのです。
叶わぬ恋……いえ、そもそもその男性はもう亡くなっているのですから、伝えることもできないのです。ロゼッタ様は…… ロゼッタ様は一体何を考えているのでしょうか……?
「せっかくじゃ。中に入るとしよう」
「あっ待ってロゼッタ様」
ロゼッタ様は私たちを連れてその教会に入っていきます。中は思ったよりも広く、ステンドグラスから太陽の光が差し込んでとても神秘的だったのです。ロゼッタ様は祭壇の前で立ち止まる。
「……まだ残っておったのか」
そこには古びた石板があったのです。そしてロゼッタ様は何かを思い出したかように話し始めるのです。
「この石板はな、その男性との約束の魔法の石板なのじゃ」
「えっ?どういうこと師匠?」
ロゼッタ様はその石板に手を当てて魔力を流し込むと、石板が輝き始めました。そして声が聞こえる。
『私は認めないから。必ず帰ってきてよね。もう一度私に会う前に死ぬなんて許さないから!』
『あーはいはい。わかったよ。ったく、心配性なんだからよ。ローズは。俺は必ず帰ってくる』
男女の会話が聞こえるのです。ローズ?これはロゼッタ様の事ですかね?それならこの男性がロゼッタ様の……
「さっき話したワシが昔好きになった男の声じゃワシが18の時に死んでしまったがの」
そう言って悲しそうに笑うのです。すると、元の状態に戻ろうとした石板の光が、ふいに形を変えてロゼッタ様を優しく包み込みました。
……それはまるで長い間ロゼッタ様を待っていたかのように……
「師匠!?」
「これは……この魔力は……ガウェイン、お主……ワシのために、こんなものを残しておったのか……」
光がロゼッタ様に吸い込まれていきます。
そして光が消える。ロゼッタ様はそっと目を瞑り、彼が遺してくれた温かい魔力の余韻を抱きしめるように佇んでいました。そして、涙ぐみながら優しく微笑んで言ったのです。「”また”会えたのう」と。




