16. 逃走劇
16. 逃走劇
私は本の知識を使いソルファス騎士団の騎士たちを撃退し、何とか列車から脱出することに成功するのです。列車の外まで、けたたましい警報が鳴り響いています。さすがは精鋭部隊、どうやらもう脱出に気づかれたようです!ですが、間一髪でみんなと合流できた私たちは、ロゼッタ様を先頭にして一目散に砂漠へと走り出しました。
「師匠どうするの!?」
「とりあえずワシに着いてくるのじゃ!ワシの記憶が正しければ必ず逃げられるのじゃ!」
「サリア様大丈夫?」
「はい。急ぎましょう!」
そして砂漠が広がる外に出てしばらく走り続ける。
「うむ。見えてきたのじゃ。」
ロゼッタ様が指を指す方向に大きな洞窟らしきものが見えるのです。
「師匠、あそこは?」
「大昔、砂漠を安全に渡るために作られた『遺跡洞』じゃ。あそこを抜ければ王都の近くの街まで出られる。昔は砂漠鉄道などという便利なものはなかったからのう」
「おおー!さすがはロゼッタ様なのです!伊達に200年以上も生きていないのです、まさに年の功というやつですね!」
「……お主、それは褒めておるのかけなしておるのかどっちじゃ?」
ジロリと睨まれましたが、私は親指を立てて笑顔で返します。やはり、この頼りになる大魔女様がいてくれて本当に良かったのです。
「すいません。皆さんを危険な目に遭わせてしまって……こんなことなら淡い期待を持たなければ良かった……」
「ダメなのです。サリア様がそういう考えを持ってはいけないのです。それにここで立ち止まっていても仕方ないのです。ここは覚悟を決めて進むしかないと思うのです」
「アリーゼ様……はい」
私がそう言うと、サリア様は私の手を握りながら答えてくれる。その手はとても暖かくて優しいものだったのです。
私たちはそのまま砂漠の遺跡洞に向かって進んでいくのです。そして遺跡洞に着く、中は洞窟そのもので地面は砂で埋め尽くされており、まさに天然の通路なのですね。
「ソルファス騎士団は追ってきてないよね?あたし怖いんだけど……」
「ミルディさん大丈夫。その時はボクが騎士を倒すから!」
「フィオナ……格好いい!」
「えへへ」
そんな会話をしながら先に進む。これだけ自信が持てるようになったフィオナが頼もしいのは私も嬉しい限りなのです。
「そういえばアリーゼはどうやって列車から抜け出してきたの?あたし結構心配だったんだけど?」
「それは、清廉潔白な聖女ゆえ、男性に身体を見られるのは抵抗があるのです、と涙ながらに訴えたのです!そして一人を女性騎士を呼びに行かせ、残った一人はこのロッドで『物理的にちょいっ』と気絶させたという訳なのです!完璧な作戦なのです!」
私が意気揚々と胸を張ると、ロゼッタ様が呆れ果てたような半目で私を見ました。
「……ほぅ。つい先日、あの広大な炎天下の砂漠で自ら進んで下着姿になっていた露出狂のお主が『純潔』を語るか?笑止千万じゃな」
「ぐっ……!あれは違うのです!サンドリザードを倒すための崇高な戦術だったのですよ!一緒にしないでほしいのです!」
本当に大変だったのです。しかもサンドリザードを倒したら倒したでまた大変な目にあったのです。そう全身日焼けはするし、しばらく身体が熱くて眠れなかったのです。本当に思い出したくもないのです。
それから少し歩くと光が見え、出口が見えてくる。そこには小さな街が広がっていた。
「あれ?王都の近くの街って……」
しかし、洞窟を抜けた私たちを出迎えたのは、かつての面影を完全に失った廃墟の街でした。
崩れ落ちたレンガの家々、砂に埋もれた通り。そこには人の住む気配など微塵もなく、ただ乾いた風が寂しげに吹き抜けているだけだったのです。
「うむ……ここはラストン。大昔、ワシが拠点にしておった小さな街じゃ。……そうか、もう誰もいないのか。完全に廃れてしまったようじゃの。残念じゃ……」
「師匠……元気だして!」
「ありがとう、フィオナ」
ポツリと呟くロゼッタ様は、どこか遠くを見るような悲しい顔をしていました。200年以上という果てしない時を生きる彼女にとって、馴染み深かった街が砂に還っていくのを見るのは、私たちが想像する以上に寂しいことなのかもしれません。
ロゼッタ様が、あの時見ていた栄えているラストンの姿はもう見ることはできないのですね。そう思うと少し残念です。




