15. 脱出劇
15. 脱出劇
砂嵐の影響で止まっていた列車にサリア様を探しにソルファス王国騎士団がやってきたのです。正直銃剣まで構えていて本気度がひしひしと伝わってくるのです。全員が銀製の装備を身につけており精鋭部隊なのは間違いないのです。それに出口は塞がれていますし、万事休すなのです。
「もう一度聞くがジルベール国の者はいないのだな?それならば1人1人確認する。1人ずつ前の車両に来い!」
すると隊長らしき人物は前の車両に行く。しかしまだ騎士団は何名か残っているのです。
この状態で見つかってしまったら逃げ道なんてないに等しいです……もし捕まれば一生囚われの身になってしまう可能性が高いのです。なんとか脱出する方法を考えないとなのです。
「どうするのアリーゼ?いつかはあたしたちの番が来ちゃうよ?」
「分かっているのです。落ち着くのです」
ふぅー……深呼吸して頭をクリアにするのです。まずはこの状況をどうにかしないとダメなのです!なら私が聖女として色々な対応すれば気を引くことが出来るかもしれないのです。
私は一度目を閉じて深く息を吸い込みます。そしてゆっくりと吐き出します。そうすることで少しだけ冷静になれた気がしたのです。するとロゼッタ様が私に話しかける。
「アリーゼ。お主1人で自力で脱出できるか?それが出来るならワシが責任を持ってみんなを外に連れて逃がすのじゃ」
「ロゼッタ様……無粋なのです。それしか方法はないのです」
「そんなことアリーゼが危険じゃん。あたしは嫌だけど」
「ありがとうなのですミルディ。でも私なら何とか出来ると思うのです。安心してくださいなのです」
確かにこの状況では私が囮になるしかないのです。このままだと全員捕まって終わりなのです。だったら…… 私は覚悟を決めて椅子から立ち上がり通路に出るのです。すると私の行動を見た騎士たちは銃剣を構え、一斉にその銃剣を私に向ける。
その様子からかなり警戒しているようです。大丈夫なのです。落ち着いて対処すればいいのです。私は心の中で自分に言い聞かせる。
「おい!なんだお前!動くなそこに座っていろ!」
「まぁまぁ落ち着くのです。乗客の方が怖がっているのです」
「うるさい!座れ!さもないと撃つぞ!」
「私はカトリーナ教会の聖女、アリーゼ=ホーリーロックなのです。罪なき民衆に銃剣を向けるなど、決して見過ごせないのです。別に、この件について教会を通して実力行使に出てもいいのですよ?私はハミルトン大司教様と懇意にしているのです。なんなら今すぐ、教会本部に確認を取ってもらっても結構なのですよ?」
私がハミルトン大司教の名前を出すと冷酷だった騎士たちの顔色が一瞬で変わりました。一人が慌てて隊長の元へ確認に走り、残された騎士たちは躊躇いながらも一斉に銃剣を降ろしたのです。やはり私の思った通りなのです。
実は私はハミルトン大司教とは会った事がないのです。昔読んだ『世界教会辞典』と呼ばれる本に各教会の代表者の名前が書いてあったのです。
なのに名前を出しただけでこんなにも効果があるのです。これはソルファス王国内でも秘密裏におこなっていることなのでしょう。これで少しの間時間が稼げるはずなのです。
「さぁ!皆さん安心してくださいなのです。ソルファス騎士団の皆さんも話せばわかってくれたのです。怖がらないでください」
「聖女様ありがとうございます」
「さすがは聖女様だ!」
さっきまでの空気が一変して乗客の皆さんが和やかな雰囲気になる。ただ、これだけではまだ逃げ出すことができない。武器を降ろさせただけに過ぎないのですから。するとすぐにロゼッタ様は私に合図する。
「せっ聖女様!おっお手洗いに行きたいよぉ~!」
顔を赤くしながら大きな声でロゼッタ様は私に言う。
「あらあらなのです。行ってもよろしいでしょうか?可哀想なのです」
私は必死に笑いを堪えながら、優しい聖女の微笑みを作りました。あのロゼッタ様が、よくぞここまで身を削ってくれたのです!
「分かった。おいお前、ついてってやれ。」
騎士がロゼッタ様を連れていく。しばらくしてロゼッタ様だけが戻ってくる。どうやら上手くいったみたいなのです。しかしまだ油断はできないのです。この場にいる全員が逃げ出せるまでは気を抜かないのです。
そろそろ私たちの番が来てしまうのです。こうなったら……私は意識を深いところまで潜る。「世界書庫」何か打開できる方法を探さないとなのです。そしてその本を見つけページをめくる。
【言い訳でピンチを乗り切る方法(いい女編)】
1.まずは相手にお願いをする。
2.次に相手が納得するような理由を述べる。
3.最後に相手の良心に訴えかける。
4.それでもダメなら女の武器を使うしかない。
5.もう最後は相手を力でねじ伏せる。
ふむ。なるほどなのです。これは使えそうなのです。私はロゼッタ様に合図を出しミルディ、フィオナ、サリア様を連れ出すようにお願いする。私たちの作戦はトイレがある車両からの脱出なのです。事前にロゼッタ様が騎士を1人倒してくれてるので今私の目の前には2人しかいないのです。
私は笑顔を作りながら話しかける。
「あの。騎士の方たちの中に女性はいないのですか?男性に身体とかを調べられるのは抵抗があるのですけど?」
「あぁ?何言ってんだお前?」
「だからその……女性の方に調べてもらいたいのです……私は聖女なのです。今までずっと純潔を守っているのです。異性に身体を見られるのは……」
「そんなの今さら無理に決まってるだろ!」
「そうなのですか……なんて無慈悲な……」
「うぐぅ……」
よし!効いてるのです!私はそのまま俯き泣き真似を始めるのです。すると騎士たちは慌てているのです。私はさらに追い討ちをかけるのです!
「大聖女ディアナ様……私は異性に身体を見られて聖女を名乗っていいものなのでしょうか……清廉潔白な私じゃなくなるのは許されるのですか?」
「わぁーった!わかったから泣くな!女性は後回しにする。おい。街に行って駐在の女性騎士を呼んでこい」
やったのです!これで残りは目の前のこの騎士1人なのです。あとはロゼッタ様たちと合流し逃げるだけなのです。私は顔を上げてニッコリ笑う。そしてロゼッタ様と同じくお手洗いを口実に車両を移動する。
「そう言えばあいつ遅いな?」
「あいつ? ああ……さっきロゼッタ様について行った騎士さんなら、そこの通路で気持ちよさそうに寝ているのですよ?」
「なっ!?貴様……!」
騎士が血相を変えて銃剣を構えようとしましたが、私の動きの方が速いのです。さっきまで泣き真似をしていた私は、一瞬で顔を上げてニッコリと笑い、隠し持っていた鉄のロッドをフルスイングしました。
「問答無用で、おりゃあっ!なのです!」
ゴッ!という鈍い音と共に、騎士はあっけなく白目を剥いて床に崩れ落ちました。これで邪魔者はいなくなったのです。
「ごめんなさいなのです。でもこうしないといけなかったのです。急いでみんなと合流しないとなのです!」
私は倒れている騎士に謝りをいれておくのです。本に書いてあった通り、ステップ5『最後は力でねじ伏せる』を完璧に実行したのです!
ふと窓の外を見ると、あんなに分厚く渦巻いていた砂嵐はいつの間にかすっかり収まり、雲の隙間から眩しい陽光が砂漠を黄金色に照らし出していました。
果てしなく広がるクリアな視界。これなら外へ逃げ出しても、遭難する心配はないのです。天も私たちの脱出劇に味方しているのですね!




