8. 魔法剣
8. 魔法剣
爆炎が晴れると、全身を黒焦げにしながらもサンドリザードがゆっくりと立ち上がってきました。相当なダメージのはずなのに、まだ動くのですか!
「ははっロゼッタ様……こんなものとは?」
「う、うるさい!うるさいのじゃミルディ!」
私が再びロッドを構え直そうとした、その瞬間。
ズバァァァンッ!という空気を焦がすような爆音と共に、深手を負った巨大な魔物の身体が、紅蓮に燃え盛る炎の刃によって見事なまでに両断されたのです!
切断面から炎を噴き上げながら崩れ落ちる巨体の向こうには、剣を振り抜いた姿勢のまま荒い息をつくフィオナの姿がありました。
「炎の魔法剣、ファイアブリンガー……!」
それは間違いなく、恐怖を乗り越え、誰かを守るために剣を振るう自信を手に入れたフィオナの放った『魔法剣』の輝きでした。
「は?フィオナ?」
「お主……魔法剣を……?」
「おお!さっきサンドスライムを倒した時の『風』とは違う属性なのです!すごいのですフィオナ!」
ミルディとロゼッタ様は目を丸くしている。すっ凄いのです!複数の属性を使いこなすなんて、フィオナはやっぱり有能な魔法士の家系なのです!私の自慢の可愛い弟子なのです!
「はぁはぁ。ボク……夢中で……」
「フィオナ!やったのです!」
私はフィオナに抱きついて喜ぶ。私が抱きしめるとフィオナは照れて顔を赤くしているのです。可愛いのです。
「あのあのアリーゼ様!その下着が……」
「あっ。そういえばローブを燃やしたんでした。ロゼッタ様、その黒いローブを貸してほしいのです!丈はかなり短くなりますけど、ロゼッタ様の幼女の見た目なら下着でも許されるのです!本にも『幼女は無罪』と書いてあったのです!」
私が素晴らしい解決策を提案すると、ロゼッタ様は顔をゆでダコのように真っ赤にして、無言のまま持っていた杖で私の頭を滅多打ちにしてきたのです。
ゴッ! ドガッ! バキッ!
「痛い!痛い!痛いのです~~っ!!」
「こんな破廉恥でデリカシーのない聖女など、砂漠に放って帰るのじゃ!!いくぞフィオナ、ミルディ!」
ロゼッタ様は怒りながら本当に行ってしまうのです。フィオナはおどおどしながらもロゼッタ様についていく。助けてなのですミルディ~!
こうして私たちはサンドリザードを倒す事ができたのです。それにしてもフィオナの成長にはびっくりしたのです!これならもう大丈夫なのです。
ちなみに私はこの後ミルディに街でローブを買ってきてもらったのです。まさか炎天下の砂漠に下着姿でいることになるなんて思ってなかったのです……
王都へ向かうための資金はまだまだ足りませんが、フィオナが自信をつけてくれたなら、今日のところは特大の大収穫なのです!
そして宿屋に戻ってきた私たち。部屋の中のフィオナは凄く嬉しそうな顔をして資金袋を見ているのです。初めての報酬なのだから気持ちは分かるのです!それを見たロゼッタ様がフィオナに言う。
「フィオナ。嬉しいのはわかるのじゃが、今日のはミルディのおかげでもあるのを忘れるでないぞ?」
「はっはい!師匠!」
「いや。フィオナが頑張ったから。あたしはなにもしてないよ」
フィオナは恥ずかしそうにしているのです。謙虚なのは良いところだと思うのです。確かに今日はフィオナの活躍が大きかったのは事実なのですがそれでも一人で倒したわけじゃないんです。誰かと一緒に戦った証でもあると思うんですよ!
だからこそ一緒に戦いたいって思えるようになるといいなって思うのです。それがパーティを組むということだと思います。まぁ今はまだまだだけどそのうちきっとできるようになるはずなのです。
そんな事を考えている私なのですが、今私はベッドに寝ているのです。理由は分かりますよね?
「あのアリーゼ様。お身体大丈夫ですか?ボクのせいでごめんなさい……」
「いえ。フィオナのせいじゃないですよ、気にしないでくださいなのです。痛たたたっ……」
「ふん!自業自得じゃ。露出狂聖女」
「あははっ……」
そうなのです。私は名誉ある魔物との激闘で負傷したわけではなく、あの容赦ない炎天下の砂漠に長時間、スースーする下着姿のまま放置されたせいで、全身が茹でダコのように真っ赤に日焼けしてしまったのです。
少し動くだけで全身の皮膚が悲鳴を上げるのですよ……!
「うぅ~……シーツが擦れるだけでヒリヒリするのです。誰か治してほしいのです!」
「あの、火傷に効くポーションとかって日焼けにも効果あるのかな?ボク、急いで買ってくるよ!」
「そんな必要はないフィオナ。アホは放っておけ」
そんなぁ……ロゼッタ様は鬼なのです!
でも、少し冷静になって考えてみると、こういう『ヒロインのアクシデント的なお色気(?)からの自滅展開』も、旅のお約束っぽくて悪くない気がしてくるのです。
うん!これもよく本に書いてある冒険物語の王道イベントなのです!




