31. 魔法船
31. 魔法船
港町クレスタに来てもう2週間がたつのです。私たちは次の目的地を隣国のソルファス王国に決め、船賃が貯まったので明日船に乗って出発するのです。なぜその国に決めたかというと、ソルファス王国には大きな古代遺跡があるのです。
世界中でも注目されていて観光目的で各国からも色々な人がやって来てるらしいのです。特にその古代遺跡の中にある「キルシュ古城」は人気のスポットなのです。長々説明したのですが簡単にいうと「観光」なのです。
「はぁ……楽しみなのです!」
「そうだね。手つかずの古代遺跡かぁ……誰も知らない未知のレア鉱石とか見つかったりして」
「それはロマンがあるのですね!もし見つけたら、第一発見者の権利で『アリーゼ鉱石』と名付けるのです!」
「なんでそこでアリーゼ鉱石なの……?そこは魔法鍛冶屋のあたしを尊重して『ミルディ鉱石』にするべきじゃないの?」
「相変わらず脳天気な奴らじゃの。言っておくが、ソルファス王国は国土の7割以上が砂漠地帯の過酷な灼熱の国なのじゃ。ワシは暑いのも日焼けするのも嫌いなのじゃがな……」
灼熱の国なのですね。ロゼッタ様はずいぶん詳しいのです。もしかしたら行ったことがあるのかも知れないのですね。
「ロゼッタ様、ソルファス王国に行ったことあるのですか?」
「まぁ……大昔にな。まだあの頃はあそこまで過酷な砂漠地帯ではなく、緑豊かで美しい国じゃった。キルシュ古城の最上階から見る景色が絶景でな、よく若者たちの告白スポットになっとったんじゃ。ワシもよく、そこら辺の男たちから愛を囁かれたもんじゃ。ふふっ、懐かしいのぅ」
「へぇそうなんだ。というかロゼッタ様、詳しすぎじゃない?住んでた?」
「ふむ。まぁそんなところじゃな」
そう言えば魔女や賢者は魔力を高める旅に出ると本に書いてあったのです。ロゼッタ様はこの世界を色々旅しているのかも知れませんね。
そして明日の出発に備えて私たちは早めに寝ることにするのです。いつもお昼寝をしているロゼッタ様が一番最初に寝てしまいましたね。寝る子は育つのです!子供じゃないですけど。
翌日になり今日は朝早く起きてご飯を食べてから船に乗ることにしたのです。港に着くとたくさんの船が停泊していてとても賑わっているのです。
この世界では魔道具の発達により船は動力ではなく魔法を使って動くものが多いのです。風の力で進むものや水の力を使うものなどたくさん種類があって楽しいのです!これも本に書いてあったのです。
私たちが乗る船も「魔法石」と呼ばれる特別な石を燃料にして動いています。これを使えば今のロゼッタ様と同じ第1等級魔法が使える一般的な魔法士でも動かすことが出来るのです。
まぁ、聖痕が消えて自力で聖魔法が発動できない私や、生活魔法しか使えないミルディには到底動かせない代物なのですけどね。その巨大な船を見上げて、ミルディが目を輝かせます。
「これが噂の魔法船かぁ。話には聞いてたけど、実際に見ると凄い迫力だね……!あたしもいつか、こんな巨大な船を動かせるくらいの魔道具を造れるようになりたいよ」
巨大な船体を見上げて目をキラキラさせるミルディに、私は自信満々に太鼓判を押します。
「ミルディなら絶対に大丈夫なのです!純銀の聖水だって縄ばしごだって、お願いすれば何でもチャチャッと作ってくれる魔法の手を持っているのですから!」
「いや、この巨大船と手作りの縄ばしごを一緒にしないでよ……。それにしてもすごい人だよね。こんなにいっぱい乗れるのかな?」
「船が沈まねば問題なかろう。ほれ、さっさと荷物を預けて乗り込むのじゃ」
そう言ってさっさと船の中に入って行くロゼッタ様に慌ててついて行きます。チケットを見せて船内に入ります。
するとそこには多くの人がいるのです。どうやらもうすぐ出航するようでみんな忙しく準備をしていました。私たちは邪魔にならないように隅の方に行き待つことにするのです。
しかし、いつになっても船は出航する気配がないのです。
「おかしいのう……何かトラブルがあったようじゃ。ちょっと見てくるからのう。二人はここで待っておれ」
そう言い残してロゼッタ様は行ってしまいました。私は心配になって周りを見渡してみると、他の乗客たちも不安げにしていました。しばらくして甲板に船員さんが出てくる。
「お客様方、大変申し訳ありません!現在原因不明のトラブルが発生しておりまして……復旧まで少し時間がかかる見込みとなっております……一度下船していただいてお待ちください。」
船員さんが謝りながら説明してすぐそのトラブルを解決するため中に戻る。トラブルなら仕方ないのです。すると乗客の皆さんは下船し始めるのです。そして最後に私たちが下船しようとした時ミルディが私を呼ぶ。
「ちょっと待ってアリーゼ!様子を見に行ったロゼッタ様がまだ戻ってこないんだけど!?」
「そう言えば遅いのです。船内で迷子にでもなってしまったのでしょうか?」
乗客たちがぞろぞろと降りていき、甲板には私とミルディだけが取り残されます。先ほどまでの喧騒が嘘のように、船内は不気味なほど静まり返っていました。
――私が首を傾げた、まさにその時でした
突然、ズガァァンッ!と船全体が大きく傾くほど乱暴に魔法船が動き出したのです!その凄まじい発進の勢いで、私は甲板から海へ振り落とされそうになります!
「ひゃわっ!?」
しかし、間一髪のところでミルディが私の腕をガシッと掴み、引っ張り上げてくれたのです。危うく海鮮を食べる前に魚の餌になるところでした、危ないのです!
「だ、大丈夫アリーゼ!?」
「あ、ありがとうなのです。間一髪助かったのです……」
「なんでいきなり魔法船が動いたの!?トラブルが急に解決したの!?」
混乱して周囲を見回すミルディの横で、私の長年の読書経験が激しく危険信号を鳴らしていました。
冒険譚のセオリーにおいて、こういう『謎のトラブルによる足止め』からの『乗組員不在の急発進』という展開の時に起きる事象は、大抵の場合『ろくでもない悪党によるハイジャック』と相場が決まっているのです……!




