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聖女アリーゼの不思議な旅  ~聖魔法?そんなの知らないのです!~  作者: 夕姫
第1章 聖魔法?そんなの知らないのです!

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22. 悪魔憑き

22. 悪魔憑き




 そして私たちはそのまま宿屋に戻り、先ほどの話をまとめて原因を考えることにしたのです。


「なるほどね……それにしても急に死んだっておかしくない?病死とかならともかく暗殺とか?そんなのありえないよね?」


「暗殺なのです!?」


「いや落ち着けアリーゼ。その可能性もあると思うのじゃが……」


 そうロゼッタ様は言うと一呼吸おいて真剣な顔で話し始めるのです。


「ただ……これはあくまでもワシ個人の見解なんじゃが、もしかしたら悪魔憑きかも知れぬな。このパターンは昔からよくある」


「悪魔憑きですか?それなら大変なのです!」


 ロゼッタ様の話では「悪魔の依代」と呼ばれる魔道具を使って自分の意思とは関係なく操ってしまう恐ろしいものがあるらしいのです。なんでも、精神的に不安定だったり、弱みを見せてしまうとその依代に魅了されてしまうとか。


 確かに当主のクリスフォード=マールウッドが跡を継いだ途端に豹変したと言ってましたし、可能性はあると思うのですけど……


 とにかく街の人にも影響が出ているのは見過ごせないのです!やはり実際にマールウッド家に行ってみるしかないのですかね?とは言っても入り口から中に入れるわけじゃありませんし……


「あのさ、例えばマールウッド家に入れたとしても、本当にロゼッタ様の言う通りその悪魔憑きが原因なら対処法とかあるの?」


「そんなの決まっているのです!聖女たるもの、この溢れんばかりの慈愛と強大な『聖魔法』で、悪魔ごと一網打尽に浄化してやるのです!」


 私がビシッと天高くロッドを掲げて宣言すると、ミルディがジト目で容赦なく突っ込んできました。


「……いやアリーゼ、『聖痕』が消えて聖魔法使えないんだよね?」


 ぐふっ……!ミルディの正論が、私の胸に深く突き刺さります。痛いところを的確に突いてくるのです。


 確かに純粋な聖魔法の威力や技術なら、間違いなくマルセナの方が上なのです。彼女が毎日血の滲むような努力をしていたのを、私は図書室の窓からこっそり見て知っていますからね。


 今の私は、聖魔法など微塵も使えないただの聖女なのです。それならば、物理かアイテムで解決する別の方法を早急に考える必要があるのですよ。


「ねぇロゼッタ様の魔法で何とかできないの?なんか転移できる魔法で中に入ってパパッと倒すとか?」


「ワシは転移魔法は使えん。なんなら今のワシの魔力では第1等級魔法しか使えんのじゃ」


 この世界では魔法の能力に等級があるのです。確か……

 第0等級・・・いわゆる生活魔法

 第1等級・・・初級の魔物と戦える程度の魔法

 第2等級・・・中級の魔物と戦える程度の魔法

 第3等級・・・上級の魔物と戦える程度の魔法

 第4等級・・・最上位クラスの魔法

 第5等級・・・賢者、魔女クラスの魔法


 と本に書いてあったのです。魔力の等級は各国の王城に在籍している賢者様が測ることができるのです。ロゼッタ様の今の魔力は第1等級なので、一応、初級の魔物戦うことができるレベルではあるのです。全盛期ならおそらく第5等級はあったと思うのですけど……


「とりあえずどうする?アリーゼ?」


「そうですね……もし悪魔憑きの場合の対処法を考えるのです!少し待っててくださいなのです」


 私は静かに目を閉じ、意識を深い深い海の底へと沈めていきます。私の脳内に広がる無限の知識の空間――『世界書庫』。ズラリと並ぶ膨大な書棚の中から、目当ての分厚い一冊が自動的に飛び出してきました。


 タイトルは『実録・悪魔祓いのすべて~物理から魔法まで~』。これなのです!私は意識の中でパラパラとページをめくり、該当箇所を素早くスキャンします。


【悪魔の依代について】

 悪魔と契約することにより手に入れた力。契約した者は、精神支配系の呪いにかかり、常に悪魔と心の中で会話ができる。また、悪魔は対象者の体に乗り移ることができる。そしてその対処法は、聖魔法による攻撃、契約を破棄する、または純銀の聖水を使う、など。


 私はその本をしまい、意識を戻す。恐らくこの方法で間違いないのです。


「見つけたのです!ずばり『純銀の聖水』なのです!ミルディ、今すぐ純銀を精製してほしいのです!」


「純銀?それなら銀鉱石を錬金釜で溶かせば取ることできると思うけど……」


「ロゼッタ様は純水をお願いなのです!水に魔力を注げばできるのですよね?」


「可能じゃが……お主。ワシをこき使うのか?まぁ……そのくらいなら良いが」


 よしこれで準備は完了するのです。後はマールウッド家に入るだけなのですが……問題はどうやって入るかなのですよね……さっきも言ったように正面玄関からは入れませんし……やはり忍び込むしかなさそうなのです。


 というわけで、二人が宿屋で『純銀の聖水』作りの作業をしてくれている間、私は一人でマールウッド家の周辺を偵察することにしたのです。あれだけ大きな屋敷なのですから、どこかに忍び込めそうな場所があるはずなのですよ。


 周囲をぐるりと迂回し、屋敷の裏手に回ってしばらく探すと、一ヶ所だけ壁が崩れて低くなっている場所を見つけたのです。すぐ近くには足場になりそうな手頃な木も生えています。


 昔『義賊の華麗なる潜入術~闇夜に紛れるステップ~』という本を読んで以来、実は私、木登りやピッキングも得意なのですよ!


 ふむふむ。私がヒョイッとあの木に登って縄ばしごを垂らせば、楽々不法侵入……こほん。聖女による極秘かつ神聖なる潜入任務が完遂できるのです!さっそく宿屋に戻って、ミルディに頑丈な縄ばしごを作ってもらうのです!


 非の打ち所がない聖女の完璧な作戦なのです! このマールウッド家のトラブル、私たちがズバッと解決してあげるのです!

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