21. マールウッド家
21. マールウッド家
港町クレスタに着いて翌日になりました。今日から本格的に次の目的のための新たな旅が始まるのです!
でもまずはシルクナートでアルグラッドさんから譲り受けた貴族紋のブレスレットをマールウッド家の方に返さないとなのです。大丈夫忘れていないのです。
「それでは出発なのです!」
「朝からうるさいのじゃ……元気じゃのう、お主は……」
「そうだね。アリーゼはいつも無駄に元気だよね」
「ロゼッタ様、もっとシャキッとするのです!これからまた長旅になるのですよ!気合いを入れるのです!」
私がビシッと指を差して説教すると、ロゼッタ様はミノムシのように布団にくるまったまま「うぅ……」と嫌々返事をしました。
伝説の大魔女様はとにかく朝が弱く、寝起きが最悪なのです。結局いつも、私とミルディが両側から布団を引っぺがして叩き起こすまで絶対にベッドから出てこない、とんでもなくダラシナイ魔女様なのですよ。
とりあえず私たちは貴族マールウッド家に向かうことにします。マールウッド家は、私たちが泊まっていた宿からそれほど離れていなかったのです。
貴族のお屋敷だけあって、街の中でも一際目立つ大きな建物でした。私は門番さんに声をかけてみる。
「こんにちはなのです!私はマールウッド家の領主様に大事な用があってお会いしたく、遥々やって来たのです!」
「帰れ」
「……え?」
「帰れと言っている。今、領主様は不在だ。用がないならとっとと失せろ!」
満面の笑みで堂々と挨拶したというのに、なんと取り付く島もなく一瞬で門前払いされてしまいました。えぇ……いくらなんでも冷たすぎて酷いのです……。それを見たロゼッタ様が一言呟く。
「……何かあったのじゃな。門前払いなど、対応が異常なのじゃ」
確かにおかしいのです。これは何かトラブルの気配なのです。私たちはとりあえず街で情報を集めることにするのです。
とは言ってもどこで情報を集めましょうか……まぁこういうのは大体相場は決まっているのですけどね。
「ズバリ、こういう時の情報収集は荒くれ者が集う『酒場』と相場が決まっているのです!冒険譚の本にバッチリ書いてあったのです!」
「まぁ……アリーゼ、確かにそうかもだけど、でもロゼッタ様の見た目じゃ中に入れないんじゃない?どう見ても幼女だし。酒場でも門前払いを受けそうなんだけど……」
「失礼な!ミルディ!ワシは幼女ではないぞ!」
プンスカと怒るロゼッタ様を宥めようと、私が『子供が喜ぶ上手な撫で方』の本通りによしよしと頭を撫でてあげると、「子供扱いするでない!」と杖を振り回して更に大激怒されてしまいました。おかしいのです。完璧な撫で方だったはずなのです!
とりあえずミルディがギルドなら情報が手に入るんじゃない?と言ったので、仕方なくギルドに行くことにしたのです。ギルドならロゼッタ様も入れるので、受付嬢のお姉さんを捕まえて話をすることにしたのです。
「あの少しお尋ねします。貴族のマールウッド家で何かありま……」
「こらこらアリーゼ!こほん。すいません最近貴族絡みの事件か何かありましたか?」
私のストレートすぎる質問を、ミルディが慌てて口を塞いで誤魔化す。何かダメだったのですかね?するとロゼッタ様が呆れ顔で小声で囁きました。
「お主。もう少し言葉を考えよ。マールウッド家はこの港町クレスタの領主じゃぞ?そんな直接的な聞き方をするバカがおるか。ミルディに任せてお主は黙っておれ」
「うぅ……ヒドイのです……」
なんかロゼッタ様からヒドイ扱いを受けるのです。するとお姉さんと段々打ち解けてきた頃、後ろの方にいた男性が近寄ってきて話しかけてきたです。
「君たちは一体何の話をしているんだ?それに見慣れない顔だが、この街の住人か?」
「あぁ申し訳ありません。あたしたち旅の冒険者でして。少し聞きたいことがあって。最近マールウッド家のことで何か変わったことはありませんでしたか?」
「マールウッド家か……」
ミルディが代表して話を進めるようですね。さすがなのです。男性は顎に手を当て考える仕草をして答えてくれたのです。
そのギルドの男性の話では、なんでも少し前まで普通だったらしいのですが、突然当主であるマールウッド公爵が急死し、長男のクリスフォード=マールウッドが跡を継ぐことになった途端に、彼はなぜか豹変し暴君と化してしまったみたいですね。
そのため、当主であるクリスフォード=マールウッドは街の人からの評判はかなり悪くなっており、そしてその横暴さは街の人にも影響が出ているとか……
その後も私たちはギルドでいくつか話を聞いたのですが、有力な情報は得られなかったのです。




