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聖女アリーゼの不思議な旅  ~聖魔法?そんなの知らないのです!~  作者: 夕姫
第1章 聖魔法?そんなの知らないのです!

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2. すべては知識のままに

2. すべては知識のままに




 教会を出て、森の街道を歩く私。もうお日様も真上にあるのです。どうやらもう何時間も歩いているのですが……隣町のルベルタはかなり遠いみたいなのです。昔に馬車で巡礼をした時はそんなに時間がかかった覚えはないんですけどね……



「お腹が空きました……」



 と誰もいないのに独り言を話している。私にとっては、生まれて初めての遠出なのですけど……『ワクワク』や『楽しみ』……というようなそれらしい感想が全く浮かばなかったのです。


 ただ食欲に負けての言葉なのかは、謎であったりするのですけど……


 とはいえ、いくら強がってもお腹の虫は誤魔化せません。朝から何も食べていないのですから、まずは優雅に昼食と洒落込みたいところです。でも重要なことに気づいたのです。


 そう、私には「お金」という概念がすっぽりと抜け落ちていたのです! ずっと衣食住が保証された教会暮らしでしたから、そもそもお財布なんていうアイテムを持ち歩く習慣すらありませんでした。


 いくら聖女とはいえ、「お願いなのです!」と可愛く微笑むだけで美味しいご飯をご馳走してくれるほど、世間は甘くないのです。今持っている全財産は、本が詰まった鞄と、退職金代わりの鉄のロッドだけ。まさに絶体絶命のピンチなのです!


 えぇーっとぉー……。


 こうなったら仕方ないですね!道中、聖女らしく困っている人を助けて、そのお礼として美味しいご飯をご馳走していただくしか道はないのです!そのためにも、一刻も早くルベルタの街へたどり着かなくてはならないのですよ!


 でもさっきからこの森は同じような景色ばかりで困るのです。私がしばらく歩くと別れ道に遭遇する。


「また分かれ道なのです。それなら……えいっ、なのです!」


 私は足元に落ちていた手頃な木の枝を拾い上げると、えいっ!と空に向かって放り投げました。くるくると宙を舞った枝は、パサッと乾いた音を立てて『右の道』をピタリと指し示します。


 その枝が示した方向へ、迷うことなく自信満々に足を踏み出しました。これは昔読んだ冒険譚の主人公も実践していた、由緒正しくも確実なナビゲーションシステムなのです!本の知識はいつだって正しいのですから、間違いなんてあるはずがないのですよ。


「こっちなのです!お腹すきましたぁ……早く街にたどり着くといいですね」


 ふふん。本から得た知識はいつだって優秀なのです!このまま進めば、きっと物語のように親切な村人や街の人が私を拾ってくれるはずなのですよ。


 迷う心配は無いのです。あ、もちろんその物語のヒロインのように方向音痴とかではありませんよ?ただ物語の主人公は、確か街の人に拾われたはずですからね~。うまく出会えたらいいなって思うところはあるけれど……このまま進めばきっと大丈夫でしょう!歩みを止めてはいけないのです。私は聖女なのですから。


 そして森の街道をしばらく歩いていくと本当に人と出会うことになる。しかしその赤い髪の人物は何故か地面に倒れているのですが……。


 私は恐る恐るその人物に声をかけることにしたのです。


「あの大丈夫なのです?ここで寝ると風邪を引くのですよ?」


 その人物は格好は男物のツナギを着ているけれど、良くみると女性だとすぐにわかったのです。この格好は……鍛冶屋さんですかね?


 鍛冶屋さんがこんなところにいるなんて……ん~おかしいのです。とりあえずこの女性は明らかに具合悪そうな感じですし、見過ごすことは出来ないのです。


「あのどうしたのです?具合が悪いのですか?」


「ポイズンビートルに……うっ……」


 その女性の顔が青ざめている。これは毒なのです。いつもなら聖魔法で解毒くらいちょちょいのちょいなのですが……まぁ聖魔法なんてなくても大丈夫なのです。


 私は周りを見渡す。そこに紫色をした小さな花を見つける。ハミハの花なのです。


「あったのです!ちょっと待っていてくださいね。……あ、お水は持っていますか?」


「え、鞄の中に少しだけ……」


 私は落ちていた太めの枝をナイフで手早くくり抜き、即席の木製コップを作ります。そこに石ですり潰した紫色のハミハの花を放り込み、さらに退職金代わりの鉄のロッドをナイフの背でゴリゴリと削って鉄粉を少々追加。


 最後に彼女の鞄にあったお水を注いで適当な枝でかき混ぜれば、たちまち水は毒々しい紫色から鮮やかな青色へと変わり……昔読んだ植物図鑑に載っていた『特製解毒薬』の完成なのです! 聖魔法がなくても、知識さえあればこれくらいちょちょいのちょいなのですよ。


「はい、これを飲むのです。少し苦いかもしれませんが我慢ですよ?」


 ゴクンと飲ませて様子を見守っていると、やがて苦しげだった呼吸が落ち着き、青ざめていた顔色がみるみる良くなっていきました。ふぅ、上手くいって本当に良かったのです!

『面白い!』

『続きが気になるな』


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