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聖女アリーゼの不思議な旅  ~聖魔法?そんなの知らないのです!~  作者: 夕姫
第1章 聖魔法?そんなの知らないのです!

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16. 聖女。稼ぐ

16. 聖女。稼ぐ




 そして次の日。私は泣きそうになりながら中央広場のベンチに腰掛けているのです……


 なぜなら乗り合い馬車に乗ろうとした時、いや本当は昨日から薄々は気づいていたのです。そう私はまた「資金」がない。だから馬車に乗ることができなかったのです。


 よくよく思い返してみれば、昨日アルグラッドさんの奥様にお祝いの高級特注ケーキを奮発して買い、さらに宿屋で「港町への前祝いなのです!」と調子に乗って豪華な夕食をたらふく食べてしまったのが原因なのです……。


 親方さんからいただいたたっぷりの資金は、一晩にして見事、私の胃袋の中へと消え去ってしまったのでした。ああ、昨日の私をこの鉄のロッドで小突いてやりたいのです!


「ぐすっ……海鮮……私の愛しの海鮮ちゃんたちが遠のいていくのです……」


 私は広場のベンチで項垂れ、聖女の威厳など完全に放り投げて情けない声で咽び泣いていました。


「いや子供かあんたは。あたしも自分の分しかお金ないし、稼ぐしかないんじゃない?」


「稼ぐって……具体的にどうすればいいのですか?」


「え?ほら……冒険者ギルドじゃない?日雇いの依頼とかあると思うしさ。アリーゼなら、その謎の『本の知識』とやらで何でもできそうじゃん!たまに良くわからないけど……」


 私はただの聖女なのです。いくら本を読んでいるからといって、なんでもかんでも出来るわけではありませんよ?買い被りすぎなのです!

 

 でもミルディの言うとおりギルドで日雇いの依頼でも受けるしかなさそうなのですね。とりあえず資金を稼ぐために私とミルディはギルドに向かうことにするのでした。


 そして、ギルドについた私たちは受付に並ぶこともなくすぐにクエストボードの前に立つことができた。基本的にこの時間に来る人はそんなにいないようなのです。


 掲示板にはたくさんの紙が張り出されていますね……沢山ありすぎてどれを受けたらいいか分からないのです……


「どれを受ければいいのですかね?」


「あたしも来たことないし……なんか簡単なのでいいんじゃない?」


 簡単とは言ってもどのくらいのレベルなのか分かりませんよね。とりあえず私は、目の前に貼ってある依頼書の初心者用の『ゴブリン退治』を受けることにしたのです。これならあまり強くなくていいはずなのです。初心者用なら駆け出し冒険者でも問題ないと本に書いてありましたし。まぁいきなり強い魔物と戦えと言われたら困りますからね。


「決まりなのです!手っ取り早くこの『ゴブリン退治』にするのです!」


「えっ!?」


 早速その依頼書を剥がして受付カウンターへ突撃しようとした私の腕をミルディが掴む。


「待て待て!アリーゼ戦えるの!?ゴブリン退治なんて……聖女の聖魔法も使えないんでしょ!?あたしは戦えないからね!?」


「何を言っているのですか!ゴブリンの急所の位置や、最も少ない労力で頭蓋骨を陥没させる効率的な物理的撲殺の方法なら、バッチリ本で読破済みなのです!この重たい鉄のロッドさえあれば、群れごとミンチにするのも容易いので私に任せるのですよ!」


「聖女の口から『撲殺』とか『陥没』って単語が出てる時点でおかしいんだけど!?なんでそんなに自信満々かわからないけどさ……本の知識があるならもっと安全な素材集めの方がよくない?」


 うーん、確かに素材を集める方がいいかもしれないのです。


 でもお金を貯めないとご飯を食べれなくなるのです。それは避けたいところなのですよ。それに今日滞在するための宿代も必要なのです。とりあえずゴブリン退治の依頼書をクエストボードに戻し素材集めの依頼書を探すことにするのです。


「アリーゼ。これとかいいんじゃない?フルア草採取だって。確かフルア草なら日の当たらない森の奥とかに生えてるし、簡単に見つけられそうだけど」


「ふむ。金額も良さそうなのです。これにするのです」


 こんな簡単な素材採取の依頼の割に少し高額のような気もしますが、海鮮のためにはそんなこと言ってられないのです!私たちは依頼書を手に取り、受付に行って手続きをしてもらいました。これで準備完了なのです。私が出発しようとしていると受付嬢のお姉さんが私とミルディに念を押してくる。


「そうだ、あなたたち。フルア草の生えている『常闇の森』には、恐ろしい魔女が住み着いているという噂があるから気をつけてね?」


「へぇ……魔女なんかいるんだ?」


「ま、魔女!?魔女といえば、森の奥の大鍋で怪しい薬を煮込んだり、呪いで善良な人間を問答無用でカエルに変えたりする邪悪な存在ですよね!?昔読んだ童話にもそう書いてあったのです!カエルにされたら一生美味しい海鮮が食べられなくなってしまうので、絶対に嫌なのです!」


「さっき『ゴブリンを倒す』って言ってた人のセリフとは思えないんだけど……とりあえずアリーゼ、落ち着いて」


 どうかその魔女様に出くわしませんようにと、大聖女ディアナ様に祈るのです!私たちは冒険者ギルドを後にし、いざフルア草の採取へと出発することにしたのでした。


 初めてのギルドの依頼……不安はあるのですけど、海鮮の為に頑張るのですよ私!

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