12. 聖女。頼まれる
12. 聖女。頼まれる
私はそのまま馬車の中に戻り、そして馬車はシルクナートに向かって再度走り出す。お馬さんも問題なさそうなのですね。
「アリーゼ。本当に尊敬するよあなたの事」
「褒めてもなにもでないのですよミルディ?」
「別になんもほしくない。素直な感想なんだから気分良くしとけばいいよ」
「じゃあ気分良くしておくのです!」
あれからしばらく馬車を走らせると大きな街が見えてくる。どうやらシルクナートの街に着いたようですね。
「あれがシルクナートなのですか……大きい街なのです」
「あたしも初めて来たけど、ルベルタとは全然違うね」
「世間は広いのですね……同じセントリン王国なのにここまで違うとは、驚きなのです」
シルクナートはルベルタよりも大きい街。そして建物の数もルベルタの3倍以上はありそうなのです。私が居たカトリーナ教会のあるセルシアと同じくらいの街なのですかね?ここなら宿屋にも期待が持てるのです。
街の入口には門番さんらしき人が立っていて、入ろうとする人をチェックしているみたいなのです。この街に入る人は身分証を提示しないといけないルールがあるらしく、その身分によって通行料を払って入るみたいなのです。
身分証……そう言えば身分証は教会に預けていて今は持っていないのです。というか、そもそも私は聖女を破門されていますし、どうしましょう……こういう時は……そうなのです!そして私の番が回ってくる。
「身分証を出してください」
「こほん。……お退きなさい!わたくしの顔に見覚えはありませんこと? わたくしのこの高貴な顔こそが、何よりの身分証ですわよ。おーっほっほっほ!」
私は腰に手を当て、最高に反り返った姿勢で高笑いを響かせました。
「は?」
門番さんは完全に真顔です。
「はぁ!?急に何トチ狂った貴族の令嬢ごっこ始めてんの!?なにやってんのアリーゼ!」
「ええい、早く身分証を出せ!」
……全然通用しないのです。おかしいのです!この間読んだ『公爵令嬢の華麗なるお忍び』という本では、このセリフ一つで顔パスだったはずなのですよ!?
私が困っているとそこにあのポーションをくれた剣士さんが割り込んでくる。
「すまない。この方は新たに聖女になられたお方なのだ。オレが極秘に護衛している」
「アルグラッド=ノーマン様!?すいませんでした!」
「いやいい。それでは行きましょう聖女様」
「え?」
唖然とする私とミルディをよそに、アルグラッドさんは有無を言わさぬ流れるような動作で私の腕を掴み、そのまま堂々と街の中へと歩き出しました。
門番さんたちが最敬礼で見送る中、私たちは引きずられるようにしてしばらく歩き、街の中央広場らしき場所まで連行……いえ、案内されたのです。
「あの……腕が少し痛いのです……」
「あっ、すまん!門番をごまかすために無我夢中で引っ張ってしまった。大丈夫か?」
「はい。あのどうして?」
「馬車で馬を治してくれたお礼だ。それにオレの方こそ感謝している。実は今日中にどうしても家に帰りたかったのだ。……愛する妻の誕生日でね」
そういうことだったんですね。納得したのです。その話を一緒に聞いていたミルディが話し始める。
「素敵な旦那様ですね。愛する奥様のために急いで帰るなんて……あたしも憧れちゃうなぁ……」
ミルディが両手を頬に当て、うっとりとした乙女の表情を浮かべています。
「ミルディ。そんな女の子みたいな感情あったのですね?意外なのです」
「失礼ね!あたしは正真正銘の女の子だよ!」
いつも油まみれの男物の作業着を着ているので、うっかり勘違いしていたのです。そんな私たちのやり取りを見て、アルグラッドさんが苦笑しながら提案してきました。
「その良ければだが、妻のプレゼントを選んでもらえないか?女性の事はよくわからん。意見も聞かせてほしい。もちろん聖女様たちが良ければだが?」
「それならお安いご用なのです!困った人は私が助けるのです」
「本当に大丈夫?アリーゼの感性とか信じられないんだけど……」
さらっとミルディはヒドイことを言ったような気がしますが無視することにします。こうして私たちはアルグラッドさんの奥様の誕生日プレゼントを選ぶことにするのでした。




