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陽炎怪談  作者: 九×九 八十一


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6/7

【 言霊 】


今から話すのは、()くまでも私の作り話です。



私が毎回、「これは、作り話なんだけど」って前置きしてから話すのは、なぜだと思います?

今から話すのは、私がそうするようになった切っ掛けのお話です。



私、高校は女子校でした。


いつも五人くらいで固まってて、その中に「Hちゃん」て子がいたんです。

口数は少ないけど、いつもニコニコ笑ってる、大人しいタイプの子でした。


でも、Hちゃんがのびのびと話す時があって、それが怖い話をする時でした。

話すリズムや声の使い方が上手で、凄くリアルなんです。


私たちも怖い話が好きだったので、教室に残ってHちゃんの怖い話を聞くのがルーティンみたいになってました。


ある日、同じクラスのギャルたちが、

「ウチらも聞きた~い!」みたいなノリで交ざってきて、仕方なく机を適当にくっつけて怖い話をしてたんです。

各々(おのおの)、怖い話を順に披露して……。

3周目くらいだったかな?Hちゃんの番が来た時、突然ギャルの一人が


「ねえ、そのいちいち『これは私の作り話なんだけど』って言うのいらなくない?冷めるんだけど~」


って言い出しました。

確かにHちゃんは怖い話する時、必ず


「これは私が考えた、嘘のお話なんだけど」


って前置きしてから話すんです。


律儀だな、くらいで、あまり気にもとめませんでした。


でも、その一言が切っ掛けで、一触即発の空気になってしまって。

面倒くさいなあ……。でも、どうしようって思ってたら、Hちゃんが、


「わかった、じゃあ本当の話をするね」


って。


今まで見たことないような真顔で話し始めたんです。




──これは、私が中2の夏、実際に体験した話。


当時、私は夏休み初日から迎えた初潮のせいで、一週間ほどろくに動けなかった。

体調が回復してすぐ、家族揃って出かけたお墓参り先で、お寺のお坊さんと親が話してる間、暇だったから、境内に住み着いてた猫にちょっかいかけてたの。


「おいで、おいで、怖くないよ、出ておいで、こっちにおいで……」


そうやって、ずっと呼びかけていたけど、結局、軒下からは出て来なくて。

そのうち、親が呼びに来て、そのまま真っすぐ帰宅した。


次の日から、自宅で変なことが起こるようになったの。

ありきたりだけど、無人のはずの2階から歩く音がしたり、呼ばれたのに誰もいなかったり……。


最初は気にしてなかったお母さんも、次第にノイローゼ気味になって、見かねたお婆ちゃんが、Aさんっていう拝み屋を連れてきた。


Aさんは、一通り家の周辺と室内をくまなく見回ったあと、家族全員を居間に集めて、


「原因は、あなたみたいね」


って。


指されたの、私だった。


当然、「何もしてない」って言ったけど、Aさんは冷静で、

「最近、私生活で変わったことなかった?」って聞かれた。


夏休みと共に初潮を迎えてたから、それを正直に話した。


体調が回復してからお墓参りしたこと、その後からおかしなことが起こり始めたことも。


「そのお墓参りの時、どんな風に過ごしたの?」


真剣な顔で言われて、改めてその日を振り返る。


生理あけでダルくて、家族との会話は、ほぼ無かった。


墓前に花を供えて、さあ帰れると思ったら、今度はお坊さんと親の立ち話が始まって。


暇だから軒下に住み着いてた猫にちょっかいかけて……。


「ああ……」


と、そこでAさんは一人、納得した様子だったけど、私も家族もポカーンとしてた。


でもAさんは、私を見つめたまま、


「……呼んだみたいになってない?」


って。


その一言で何も言えなくなってしまった私に、Aさんは


「初潮が呼び水となって、言葉の影響力が強まった可能性がある」


と言ったの。

続けて、


「とにかく、口をつぐみなさい。何か良くないことを呟きそうになった時は、特にね」


って。




「……だから普段、あまり喋らないようにしてるの」


そう言ってHちゃんは、


「私、『本当の話をする』って言ったあと、『おいで、おいで』って何度も口にしたよね?」


と、ギャルたちをじっと見つめながら、


「私たち……いま、見えないたくさんの人たちに囲まれてるよ」


途端、ギャルたちは絶叫し、座ってた椅子を蹴り飛ばす勢いで教室から逃げて行ったんです。


結局、私たちだけで机を戻した時には、いつものHちゃんに戻ってました。


それ以降、気まずさからあまり怖い話はしなくなり、そのまま私たちは卒業しました。


その経験が切っ掛けで、怖い話をする時は、


「これは私が考えた話なんだけど」


って一言、付け加えるようになったんです。

……例え、実体験であっても。


……で、ふと思い出したんです。

あの時、Hちゃん最後まで


「この話は嘘」


って言わなかったな、って。



今でも……いるんでしょうか。






……勿論、始めに言った通り、全ては作り話なんですけどね。




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