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【 終幕 】
「いや、面白かったですよ、先生」
言いながら僕は、先生に酌をすすめた。
新作発表の打ち上げの席で、不意に先生が
「次は、全く別のジャンルに挑戦してみたくてさ……。こんなのはどうかな?」
と、聞かせてくれたのが、いわゆる「怖い話」だった。
「正直、このネタだけで一冊作れそうですね」
「編集の君が言うなら、挑戦してみようか」
その日は、そう言って別れた。
次の日、お伺いの電話を入れようとして、先生の名前がスマホの連絡先にないことに気づいた。
そもそも、「先生」と呼んでいたその人の、
名前も、顔も、性別も──
結局、最後まで思い出せないままだ。
──はなし?
誰から聞いた……はなし?
……は、なし。
……は?




