【 レポート 】
今から話すのは、俺の考えたはなし。
俺が大学のオカルトサークルに所属してた頃( たぶん )のこと。
歴代OBが残したレポートの中に、「とある村に伝わる面とその伝承について」ってのがあったんだけど、たまたま参加したオカルト懇談会に、それを書いた人も来てたんだよね。
で、話しついでに聞いてみたわけ。
「え、軽で村に?」
「そう、『ザ・ド田舎』って感じの。でも『面』を管理してる本家の家はデカくて立派だった」
──その面を見せてくれたのは、濃紺の着物を着た30~40代くらいの女性でさ、終始笑顔で、黒髪を簪でまとめていた。真っ赤な口紅が印象的だった。
僕たちは、面の話も聞けたし、撮影許可も貰えて、夢中でシャッター切ってた。
そのうち一人が、じゃあ裏も……って面を持ち上げようとした時、
「おい!やめろ!」
って誰かが叫んだ。
一瞬、みんな固まった。
思わず女性の顔を見たけど、ニコニコしてたよ。
「え?触っちゃダメとかでした?」
「いいえ?壊さなければ、構いませんよ」
って。
「それ見ました。のっぺりした木の板みたいなやつですよね」
俺がそういうと、その人は
「……やっぱりね」
と言った。
──帰り道、口論になったんだ。
「不気味な泣き顔みたいだった」って言う人もいれば、
「仁王みたいなキレ顔だった」って言うやつもいた。
同じ面を見てたのに、全員の話が噛み合わない。
収集つかなくなって、なら写真を確認しようぜってなった。
「……のっぺりとした面が写ってたよ」
データは何度も見返したけど、誰が見てもその面は、表情のない面のままだった。
妙な空気が漂い始めたのを、変えようとしたんだろうね。
運転してた奴が「そういえば、なんであの時『やめろ』って叫んだの?」って、聞いたんだ。
そしたら、
「だって、あの女、最初から最後まで不機嫌そうな顔だったろ?なのに、触れようとするから……」
「は?あの人、終始笑顔だったじゃん」
「何言ってんだ?面に触れようとした瞬間、歯ぁ剥き出してキレただろ?だから止めたんだ」
「……でも誰も、女性のそんな表情は見ていないって」
「え、でも、レポートには」
「……そう、だから確認しに行ったんだ」
──『村』は『町』になってた。
訪ねた本家はそのまま。
けど、出て来た女性は腰の曲がったお婆さんで、
「当家に若い女性はおりません」
って。
例の『面』は、『のっぺりとした板』じゃなく、三つの『三猿の面』になってた。
その面も写真に撮ったよ。
両方あるんだ。
データとして間違いなく存在してる。
でも違う。
「それにさ、今となっては誰と行ったか、そもそも、そんな場所に本当に行ったのかすら曖昧なんだよね」
そう言って、
「なぁ、俺って、本当に───に行ったのか?」
って。
確かに聞いたはずの村の名前も、その相手も曖昧なんだ。




