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陽炎怪談  作者: 九×九 八十一


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4/7

【 レポート 】


今から話すのは、俺の考えたはなし。



俺が大学のオカルトサークルに所属してた頃( たぶん )のこと。

歴代OBが残したレポートの中に、「とある村に伝わる面とその伝承について」ってのがあったんだけど、たまたま参加したオカルト懇談会に、それを書いた人も来てたんだよね。

で、話しついでに聞いてみたわけ。


「え、軽で村に?」

「そう、『ザ・ド田舎』って感じの。でも『面』を管理してる本家の家はデカくて立派だった」




──その面を見せてくれたのは、濃紺の着物を着た30~40代くらいの女性でさ、終始笑顔で、黒髪を簪でまとめていた。真っ赤な口紅が印象的だった。


僕たちは、面の話も聞けたし、撮影許可も貰えて、夢中でシャッター切ってた。

そのうち一人が、じゃあ裏も……って面を持ち上げようとした時、


「おい!やめろ!」


って誰かが叫んだ。

一瞬、みんな固まった。

思わず女性の顔を見たけど、ニコニコしてたよ。


「え?触っちゃダメとかでした?」

「いいえ?壊さなければ、構いませんよ」


って。




「それ見ました。のっぺりした木の板みたいなやつですよね」


俺がそういうと、その人は


「……やっぱりね」


と言った。




──帰り道、口論になったんだ。


「不気味な泣き顔みたいだった」って言う人もいれば、

「仁王みたいなキレ顔だった」って言うやつもいた。


同じ面を見てたのに、全員の話が噛み合わない。

収集つかなくなって、なら写真を確認しようぜってなった。



「……のっぺりとした面が写ってたよ」



データは何度も見返したけど、誰が見てもその面は、表情のない面のままだった。


妙な空気が漂い始めたのを、変えようとしたんだろうね。

運転してた奴が「そういえば、なんであの時『やめろ』って叫んだの?」って、聞いたんだ。

そしたら、


「だって、あの女、最初から最後まで不機嫌そうな顔だったろ?なのに、触れようとするから……」

「は?あの人、終始笑顔だったじゃん」

「何言ってんだ?面に触れようとした瞬間、歯ぁ剥き出してキレただろ?だから止めたんだ」




「……でも誰も、女性のそんな表情は見ていないって」

「え、でも、レポートには」

「……そう、だから確認しに行ったんだ」




──『村』は『町』になってた。

訪ねた本家はそのまま。

けど、出て来た女性は腰の曲がったお婆さんで、


「当家に若い女性はおりません」


って。

例の『面』は、『のっぺりとした板』じゃなく、三つの『三猿の面』になってた。


その面も写真に撮ったよ。

両方あるんだ。

データとして間違いなく存在してる。

でも違う。




「それにさ、今となっては誰と行ったか、そもそも、そんな場所に本当に行ったのかすら曖昧なんだよね」


そう言って、


「なぁ、俺って、本当に───に行ったのか?」


って。




確かに聞いたはずの村の名前も、その相手も曖昧なんだ。




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