第43話 いよいよ本番だ!
「お待ちかねメインイベントの時間です。日本一の大商社草壁グループの御曹司、草壁裕哉さんにプロポーズするという夢の大企画。今年こそは彼のハートを掴むシンデレラは現れるのでしょうか?」
凄い状況になってるよ。私、本当にこんなのに出るの?
私は舞台裏で足を震わせて佇んでいた。周りを見ても物凄い美人ばかり。やっぱ場違いだよ。
「では早速始めましょう。エントリーナンバー1番。総資産2000億円、日本を代表する大企業のお嬢さん四菱麗華さんです」
ひえええ、物凄いお嬢さんが出てきたよ。私こんな人と比較されるわけ? 耐えられないんですけど。
「エントリーナンバー2番。今や誰もが知る超有名女優、荒巻優衣さんです。ドラマにCMに引っ張りだこ。日本アカデミー賞の主演女優賞に輝いたこともある実力派です」
えー、毎日のようにテレビに出ている人だよ! このイベントヤバすぎ! これはあれだよね。私は帰った方がいい状況だよね? でも草壁君に頼まれたんだし。
「エントリーナンバー365番」
いったい何人出てくるのよ! 会場に入りきらないじゃない!
「次の方がラストです」
私の番だ。物凄く緊張する。こんな凄い人たちの中に出て行くなんてできないよ。
その時、草壁君が私を見ているのが分かった。
そうだ。私は草壁君の役に立ちたいんだ。ここで怖気づいている場合じゃないよね? 頑張らなきゃ。
「エントリーナンバー366番。ただの一般人、百瀬柚衣さんです」
「もうちょっとましな紹介あるでしょ!」
思わずツッコんでしまった。
「失礼しました。裕哉さんのクラスメイトの百瀬柚衣さんです」
参加者が全員揃ったところで、次の段階に進む。
「では、皆さんにアピールしていただきましょう。題して告白タ~イム! それではエントリーナンバー1番の方からどうぞ」
ええー! そんなの聞いてないよ! 告白って何言えばいいの?
「私は幼少の頃より楽器をたしなんでいますわ。ピアノコンクールでは30回の優勝。さらにバイオリンやお琴など引けない楽器はありませんの」
なんか凄いこと言ってるよ。私は楽器何も弾けない‥‥。
「私の実家は由緒正しくて藤原式家の末裔に当たります。日本を代表する大企業にはとてもお似合いではないでしょうか?」
藤原式家? 何それ? 歴史わかんないよ。
あっ思い出した。確か菅原道真の家系だよね?(違います)
「お願いですから私を選んでください。決して後悔はさせません」
なんか必死だね。そんなことより次は私だよ。どうしよう。何も考えてない。
「エントリーナンバー366番。百瀬柚衣さんどうぞ」
「ええっと。私の特技は‥‥‥特にはありません」
周りからクスクスという笑い声が聞こえてくる。やっぱり私がここに出てきちゃダメだったんだよ。
ダメだ次の言葉が出てこない。
「ええっと‥‥‥」
何か言わないと、物凄い人たちが見てるから。
私が言葉に詰まっていると観衆から声がかかった。
「柚衣、頑張って!」
沙耶ちゃんの声だ。
「柚衣ちゃんなら~大丈夫だよ~落ち着いて~」
野乃葉ちゃんも。
「柚衣、深呼吸して! 何でもずけずけ言えるお前なら声が出るはずだ」
え? 琉生まで?
みんな応援してくれてるんだ。なんだか嬉しいよ。頑張らなきゃだよね?
「私は何もできませんが草壁君を愛する気持ちは誰にも負けません。お願いですから私を選んでください」
私は深々と礼をした。
会場からパラパラと拍手が起こる。やがて拍手は大歓声へと変わっていった。
これはこれで恥ずかしいかも?
「全員のアピールが終わりました。それでは草壁裕哉さんに選んでいただきましょう。将来を共にしたい人は誰でしょうか?」
会場がシーンと静まり返る。草壁君は渡されたボードに何かを書いて、みんなに見えないよう抱きかかえるようにして持った。
「では、発表していただきましょう。令和のシンデレラガールは一体誰だ。さあ、草壁裕哉さん発表してください。どうぞ」
草壁君がボードを表に向けて、
「エントリーナンバー366番。百瀬柚衣さん」
と言った。
会場からは、「えー」とか「うそー」という声が聞こえてくる。
私が選ばれるなんて信じられないよ。おそらく生まれてきてから一番の幸福かもしれない! ‥‥草壁君に選ぶからって言われてたんだった。思いっきり盛り上がった気持が急降下していく。
「ええーっと。本当にこの方でいいんですか?」
司会者! 余計なことを言わないで!!
「はい。間違ってません」
草壁君がはっきりとした口調で言ってくれている。やらせとわかってても嬉しいよ。
「わかりました。では彼女を選んだ決め手は何ですか?」
え? これ聞きたいかも? 私は耳を集中させて草壁君を見つめた。
「いつも一生懸命に僕のことを愛してくれるところです」
私もう死んでもいいかも? 今まで頑張ってきたかいがあるってもんだよ。
こうして私が一生分の感動と幸せを噛みしめていると、突然参加者の一人が大きな声を上げた。
「こんなのインチキよ!」
何でバレたの?
「私が選ばれないでどうしてこの子が選ばれるわけ?」
バレてたわけじゃないのね?
「家柄も見た目も最低じゃない!」
私、滅茶苦茶言われてない? 本当のことだけど。
私が俯いていると草壁君が司会者のマイクを持って言った。
「僕は家柄や見た目で選ぶことはしません。確かにここには物凄い家柄の方や美人の方がたくさんいらっしゃいます。でも人を好きになるのは、そんな条件で選ぶのではないと思っています。だから僕は心から柚衣さんを選びました。家のために結婚するもりはありませんから」
草壁君が言い終わると会場には大きな拍手喝采が巻き起こった。
これって草壁君の本心だよね? それともやらせの一部?
一生分の運を使い果たした私は溢れる涙を手で拭うことしかできないのであった。
これって最終回じゃないよね? 第44話もあるんだよね? 私は一抹の不安を覚えるのだった。




