第42話 草壁君のプロポーズ?
私たちはそれはそれは美味しい料理をこれでもかと言うくらい食べ尽くした。もう入らないよ。ちょっと太っちゃったかも?
は! ダメじゃない! 好きな人の前で太ってどうするのよ!
私はそっと草壁君を見る。
「夏上さんも凄いけど柚衣ちゃんもよく食べるね?」
終わったわ。完全に大食いだと思われてる。
だって仕方ないよね? こんな美味しいもの食べたの初めてなんだし。我が家が貧乏なのがいけないのよ。
「あっ、カニだ!」
沙耶ちゃんが走り去って行く。
「夏上さんは相変わらずだね?」
爽やかに微笑む草壁君。どんな姿も絵になるから不思議だよ。
「あのう‥‥私普段は大食いじゃなくてぇ」
私が消えそうな小さい声で呟いていると、とてもかわいらしい小柄なメイドさんがやってきて草壁君に何かを告げた。
「イベントのご用意ができました」
「もうそんな時間か。わかったよ。ありがとう」
草壁君がため息をついている。どうしたのかな?
いつも明るい草壁君がため息何て珍しいよね?
「どうしたの?」
思わず聞いちゃった。好きな人が悩んでいるかもしれないんだから当然聞くよね?
「実はこの後とんでもないイベントがあるんだ」
「とんでもないイベント?」
いやな予感が胸をよぎる。
草壁君はもう一度大きなため息をついてからとんでもないイベントについて話してくれた。
「僕の花嫁候補を選ぶイベントなんだ」
「えええええええええーーーーーーー!!!!!!」
「勿論イベントだから本当に結婚しろとは言わないと思うんだが‥‥」
ホッ。
「でも‥‥」
「でも何? 何なの?」
私は必死で聞いた。『でも』って逆接の接続詞だよね? その後にはさっきの草壁君が言った言葉と反対の内容が来るんだよね?
「このイベントに出る女性は結構本気で出場してくるから、選ばれた女性が真剣に結婚を迫ってくる可能性も考えられるんだ」
私は思わず草壁君の両肩を掴んで、
「そんなイベント絶対に出ちゃダメ!」
と叫んだ。
「僕も一度は断ったんだけど、両親から絶対に出なければダメだって言われてしまって‥‥」
「どうして? 本人が嫌だって言ってるのに?」
「我が家のクリスマスパーティーで一番盛り上がるイベントだからね」
どういうこと?
「もしかしてこのイベントって毎年やってるの?」
「今回で5度目かな?」
5度目‥‥。草壁君が花嫁候補を5人も選んでるっとこと? 考えられないんですけど~。てかライバル多すぎなのでは? はあ~、もうダメかも。私は思わず座り込んだ。
あれ? 素朴な疑問が私の脳裏をよぎる。
「今まで選んだ女性はどうしたの? どうやって断って来たの? まさかもう結婚の話が進んでいるとか?」
私は血走った目で草壁君を睨んだ。
「毎年、選ばなかったんだ」
「そんなことできるんだ?」
私はそっと胸を撫でおろした。
「本当はいけないことだろうけど、この中に好みの人はいませんって言って誤魔化してきたんだ」
「じゃあ今年もそうしようよ!」
私はすがる思いで草壁君を見つめる。
「それが‥‥流石に失礼だから今年は誰か選ぶようにって言われてて‥‥」
これって史上最大のピンチなのでは? 草壁君に選ばれた女性は絶対に手放さないよね? そのままずるずると婚約なんてこともあるのでは? なにしろ高貴な家柄の人たちだし。政略結婚なんて言葉もあるし。ダメだわ。悪い未来しか見えてこない。
「そうだ」
草壁君が私を見つめて声を上げた。え? どうして? 嬉しすぎるんだけど。
「柚衣ちゃんもこのイベント出てくれないか?」
「え? え? え?」
どうして?
「僕が柚衣ちゃんを選ぶよ」
ボン! 私の顔が一瞬で茹蛸になる。
「そうすれば他の人を選ばずに済むし」
私が草壁君に選ばれる!
「柚衣ちゃんなら家柄関係で無理やり結婚させられる心配もないからね」
草壁君の花嫁候補になる。
「これで何事もなかったように普段の生活も戻れるだろう?」
私、私、草壁君と結婚できるのね? 草壁柚衣になるのね?
「柚衣ちゃん聞いてる?」
「不束者ですが宜しくお願いします」
「ええ~っと」
私はウルウルした目で草壁君を見つめた。
「とりあえずイベント参加の申し込みをしようか」
「はい!!!!!」
こうして草壁君は不安そうな顔で受付を済ませるのだった。




