✒ 白い鳥居 4
シュンシュンとオレは4番目に見付けた探し人に会う為に、性欲を爆発させたい大人達が夜な夜な集まる風俗街にやって来た。
昼間だから夜ほど危険性は少ないと思うけど、決して安全ではないし、御世辞にも治安が良いとは言い難い。
風俗街の中を10代の男女が2人で仲良く歩いている光景は異様かも知れない。
疎らに居る通行人達からの視線が痛い。
オレより小柄で華奢な体型のシュンシュンは可愛いから男達の熱い視線を独占している。
口を開かず、ニコニコして笑顔を振り撒いてれば可愛いいんだ。
口を開いて喋るから問題なだけで……。
兎も角、風俗街に行くと決まった時、女装をさせられなかった事にはホッとしている。
「 シュンシュン、目当ての風俗店は何処に在るんだ? 」
「 【 キャスントゥル 】って言う名前の風俗店だ 」
「 キャスントゥル??
横文字かよ~~。
オレ、横文字は苦手なんだよな~~ 」
「 セロフィートに教えてもらえよ。
額に剣山をブッ刺しながらさ! 」
「 絶対に嫌だね!
それより、シュンシュンが元気になって良かったよ。
もう玄武さんの事は吹っ切れたのか? 」
「 はぁぁぁぁあ?
吹っ切れるぅ??
簡単に吹っ切れて堪るかよ!!
僕は未だ諦めてない!!
必ず玄武を落としてみせるって、眞小呂に誓ったんだ!! 」
「 何で誓う相手が故人の眞小呂なんだよ…… 」
「 そりゃ、僕の初恋の相手だからさ!
僕の初めての相手だしな! 」
「 そう言えば、無理矢理犯したんだっけ?
胸糞悪い話だよな~~ 」
「 あの頃の僕は初過ぎたんだ(////)
まぁ、流石に今はしやしないけどな! 」
「 今すると余裕で犯罪者だもんな~~。
でもさ、玄武さんにはしちゃったんだろ?
それが原因で出禁にされたんだよな 」
「 フン!
僕は玄武の唇を舐めただけだぞ!
キスしてやろうと思ったら部屋を追い出されたんだ!
どんだけ乙女だよ! 」
「 シュンシュン……。
また玄武さんにトラウマを植え付けたのか~~。
毎回毎回、懲りないよな… 」
「 全裸でベッドの中に潜り込んだ時は、お咎めが無かったから、イケると思ったんだよ! 」
「 何やってんだよ…。
玄武さんは温厚で辛抱強い方だと思うけど、“ 唇を舐めた ” 件で完全に堪忍袋の尾が切れちゃったのかもな~~ 」
「 落とし甲斐の有る相手だよ。
玄武と弓弦の仲を引き裂いてモノにしてやるんだ! 」
「 モノって……。
また引き隠ったりしない様にやり過ぎないで程々にな? 」
「 僕は何時でも程々だぞ 」
「 何処がだよ… 」
シュンシュンと雑談しながら歩いていると、シュンシュンが足を止めた。
「 ──おっ!
目当ての店を見付けたぞ、マオ!
此処が【 キャスントゥル 】だ 」
「 へぇ~~。
凝った外観してるじゃん。
ホテルみたいだな~~ 」
「 表向きは至って普通の風俗店みたいだな。
入るぞ 」
「 一寸だけドキドキするな(////)」
シュンシュンとオレは風俗店のドアを開けて入店した。
「 ふぅ──。
手荒な歓迎だったな 」
「 全くだ。
護衛だか用心棒だか知らないが、客人を出迎える躾がなってないねぇ~~。
か弱い少女に手を上げるなんて、不逞な輩共め!!
痛い目を見てざまぁみろだ!
思い知ったか!! 」
「 シュンシュンは何もしてないだろ~~。
座って寛いでただけじゃん 」
「 僕は非力な女子だぞ。
暴力なんて奮えるか 」
「 良く言うよ…。
それにしても、幾くらなんでも弱過ぎないか?
身体が無駄にデカいだけじゃんな 」
「 マオが強過ぎるんだ。
人間より強い怪物ってのを相手に戦ってたんだろ?
素手で相手して良かったな 」
「 邪魔されても困るしさ、取り敢えず両足の骨でも砕いとくか? 」
「 そうだな。
歩けない様にしとけば、追い掛けてもこれないだろう 」
「 じゃあ、踏み付けて砕いとくな 」
「 容赦ないな。
躊躇いもしないのかよ 」
「 邪魔されたら面倒だろ?
流石にセロが居たらしないよ。
此処には居ないからさ 」
「 何だよ。
セロフィートの前では猫被ってるのかよ 」
「 はぁぁぁあ?
違うし!
猫なんて被ってないからな!
オレはセロの無茶振りを止めないといけない立場だから自重してるんだ! 」
「 自重ねぇ?
スマホが使えたら動画を撮ったのにな。
残念だねぇ 」
「 撮るなよ! 」
床に倒れている厳つい男達の両足の上に、オレは自分の右足を乗せる。
力を入れて踏み付けると骨が砕ける音がした。
良い音だ。
嫌いじゃない。
男達は痛みに耐えきれないのか、情けない悲鳴を上げる。
男達の悲鳴が店内に響く。
「 良い声で鳴くじゃないかよ。
もっと鳴けぇ!!
あははははははっ!! 」
「 シュンシュ~~ン、“ 女の子 ” って事を忘れていか? 」
「 忘れてないさ!
強ぶってた厳つい男達の鳴き声が面白くてついな、つい! 」
「 スカートが短いんだから、膝をペチペチ叩いて笑うの止めろよ~~。
パンツ見えるぞ 」
「 安心しろ、スパッツを穿いてるから大丈夫だ! 」
床に倒れている男達の両足の骨を砕き終えたオレは、シュンシュンと一緒に奥の部屋へ入った。
「 お楽しみ中に悪いが、話をしたい。
睾水帑智愛珠さん 」
「 ちょっ、シュンシュン!
幾ら何でも最中は駄目だろ!
せめて終わってからで── 」
「 何時終わるんだよ?
此方だって暇じゃないんだ。
“ お楽しみ ” は後で好きなだけすれば良いだろが! 」
「 お前等──、ガキが何処から入って来やがった!? 」
「 入り口からだけど? 」
「 馬鹿か、正直に答えるなよ。
──男は邪魔だから退いてろ!
邪魔しないで黙って見てよろよ 」
シュンシュンは陰陽術を使って、探し人──全裸で仰向けになっている睾水帑智愛珠さんに覆い被さっていた男を吹き飛ばすと壁に叩き付けた。
男は蛙が潰れた様な声を出す。
「 シュンシュン、壁にめり込んんでるって!
死んじゃうだろ~~ 」
「 別に構わないだろ。
反社会的な裏世界で悪さの限りを尽くしてる悪人だぞ。
死んだって悲しむ奴なんか居ないから問題ないさ 」
「 シュンシュンだって、容赦ないじゃんかよ。
オレの事、言えないぞ 」
「 睾水帑智愛珠──、僕は陰陽師で、此方は僕の助手だ。
矢伯大豈から依頼を受けて、態々探しに来てやったんだ。
感謝しろよ 」
「 シュンシュン、上から目線で言うのは止めような。
怯えてるじゃん。
えぇと──、肝試しの “ 帰り道 ” に白い鳥居を潜って此方の世界に来た──で合ってるよな? 」
「 ………………そうよ…。
探しに来たって…………今更じゃないのよ! 」
「 そうだな。
アンタ達は此方の世界に来てから、10年は経ってる様だ。
僕等は此方に来てもう直ぐ1年が経つ。
向こうでは矢伯大豈は3週間後に僕へ依頼をした 」
「 オレ達も森茂勞旅館が建ってる森へ行って、1泊してから森を出たんだ。
ファミレスに向かって歩道を歩いていたら白い鳥居が出現したんだ 」
「 大豈は来てない…………。
大豈は白い鳥居を潜ってない??
途中で居なくなったんじゃないの…… 」
「 電話が掛かって来て、話してたら白い鳥居が消えていたらしいよ。
君達と白い鳥居は消えたけど、君達の荷物と一緒に歩道へ残されたんだってさ。
警察へ捜索願いを出したり、君達を探してくれる人を1人で探し回っていたんだ 」
「 良い友達を持ったな。
普通は警察に捜索願いを出したら終わりなんだが、彼此に依頼をし回って僕等に辿り着いたんだ。
時間は掛かったが恨むより感謝してやれ 」
「 …………………… 」
「 あのさ、5人で此方の世界へ来たんだよな?
何で5人バラバラで暮らしてたんだ?
協力して一緒に暮らさなかったのか? 」
「 ………………最初は5人で協力してたわよ。
でも無理だったの…。
スマホは使えないし、背負ってた筈の荷物は無くなってるし……。
自分が1番で、楽しい事を優先したい高校生だったし、団結なんて出来るわけないし……。
仕方無いでしょ? 」
「 君を含めて5人は見付けた。
1人は死んでたが、2人目は薬中だ。
3人目は逮捕されて刑務所の中で、4人目はヤバい奴等を相手に股を開いてる君だ 」
「 シュンシュン、言い方~~ 」
「 5人目は結婚をして家庭を築いていた。
子供が3人居る。
彼女は此方に残って暮らすそうだ。
連れて帰るのは、薬中と犯罪者の2人になるが、君はどうするんだ。
帰りたいなら着いて来い。
こんな場所でヤバい奴等に身体を売り続けるか?
足を洗って真っ当に生きたいなら最後のチャンスだぞ 」
「 ……………………30歳目前の娘が帰ったら親は驚くでしょうね…… 」
「 そうだね。
でも、行方不明だった娘が無事に帰って来たら、喜ぶと思うよ 」
「 骨壺で家族の元へ帰る奴,薬中で家族の元へ帰る奴,犯罪者として家族の元へ帰る奴が居る中、君は未だマシな方だぞ。
此方で “ 売春してた ” なんて言いさえしなけりゃ誰にも分からないさ 」
「 だから、言い方!
どうかな?
オレ達と元の世界に帰ろう? 」
オレは睾水帑智愛珠さんに手を差し出す。
彼女は迷っているみたいだ。
この世界に未練でもあるのかな?
「 ………………アタシ……帰りたい。
帰りたいけど……帰れないよ…… 」
「 はぁ?
帰りたいのに帰れない?
帰りたいなら帰れば良いだろう。
何を遠慮する必要があるんだ?
此方に未練でも有るってのか? 」
「 ………………アタシ……彼と結婚をしてる……。
だから…… 」
「 はぁ?
其処のヒキガエルみたいに潰れてる男の妻だって?
おぃおぃ、冗談言うなよ 」
「 冗談じゃないわよ…… 」
「 別に良いんじゃないのか?
向こうに帰れば関係無くなるんだし。
帰りたい気持ちが有るなら一緒に帰ろう。
後悔しない様にさ 」
「 先ずは服を着ろ。
真っ裸で風俗街を歩く訳にはいかないだろ 」
「 そだな。
着替え終わる迄、部屋の外で待たせてもらうよ 」
シュンシュンとオレは部屋を出る。
睾水帑智愛珠さんが部屋から出て来る迄、店内で待たせてもらう事にした。




