✒ 白い鳥居 1
「 ねぇねぇ、白い鳥居って知ってる? 」
「 白い鳥居?
何それ? 」
「 何かね~~、“ 帰り道 ” に忽然と現れるんだってぇ~~ 」
「 何それぇ~~ 」
「 白い鳥居が現れたら、下を潜って中を歩かないと異界に取り残されちゃうんだってさ~~ 」
「 やだ、こっわぁ~~い! 」
「 絶対に下を通らないと駄目なの? 」
「 うん、そうみたい! 」
「 都市伝説なんて眉唾もんだろぉ~~ 」
「 そうそう。
大体さぁ、何で “ 帰り道 ” に出るんだよ? 」
「 知らないわよ、そんなの 」
「 “ 帰り道 ” かぁ……。
それってさ、何県で起きてるんだ? 」
「 知らないな~~。
都市伝説なんだから、真に受ける方がどうかしてるだろ 」
「 だよな~~。
それよりさ──、空から落ちて来たお●ぱいの都市伝説をどう思うよ! 」
「 大量のお●ぱいが落ちて来たんだろ?
何処の県だっけ~~ 」
「 男子、最低ぇ~~~~ 」
「 バロスぅ~~ 」
「 うっせぇ、ばぁ~~かぁ!
ペチャパイは黙ってろ! 」
「 はぁ~~?!
マジ、ムカつくぅ!! 」
「 下品な男子は●ねしぃ!! 」
「 ケッ!
お●ぱい都市伝説、舐めんな! 」
「 止めろよ。
教室でする話題じゃないだろ 」
「 そうそう!
お●ぱいの話をすると女子が “ セクハラ ” って煩いからな~~ 」
「 ──と言う事が有りまして…… 」
「 えぇと──、お●ぱい都市伝説の依頼かな? 」
「 ち、違いますよ(////)
依頼したいのは “ 白い鳥居 ” の方です!
………………オレ達、半信半疑だったんです。
まさか──、目の前に白い鳥居が本当に現れるなんて思ってなかったんです!! 」
「 都市伝説が本当だった──って事か。
やっぱり “ 帰り道 ” に出たのか? 」
「 はい……。
肝試しをした帰りに…… 」
「 肝試し?
学生って皆肝試しが好きなのか? 」
「 えぇと……皆って訳ではないと思いますけど……。
夏休みの恒例イベントって言いますか──、一夏の思い出作りって言いますか── 」
「 一夏の思い出作りか……。
それで取り返しの付かない事になったら笑い話にもならないよな~~ 」
「 そ、そうですね…… 」
「 お前、肝試しは何処に行ったんだ。
場所に依っては助けられないかも知れないぞ 」
「 えっ!?
どういう事ですか?? 」
「 良いから、何処で肝試しをしたのか場所を言えよ 」
「 シュンシュン、言い方!
御免な~~、今朝から体調が悪いみたいでさ……。
口調と態度が悪いのは勘弁してくれな? 」
「 は、はい……。
オレ達が肝試しをした場所は森の中に建てられた旅館です。
森茂勞旅館って名前なんですけど…… 」
「 森茂勞旅館??
そんな旅館あったかな? 」
「 “ 森の中 ” って言ってたろ。
森茂勞旅館ってのは県外に在る旅館だ。
大して有名じゃない廃旅館だな。
別に曰く憑き旅館でもない 」
「 へぇ?
なら心霊現象や怪奇現象は起きなさそうな旅館かな? 」
「 旅館の方はな。
旅館の外壁や中に落書きがされてないのは、旅館自体がヤバいんじゃなくて、旅館の周りがヤバいから先に進む奴が居なかったからだ 」
「 どゆことだよ 」
「 森茂勞旅館の建ってる森には霊道が走ってるんだ。
近くには鬼門も在る。
霊観の強い奴は旅館自体がヤバい物件だと勘違いして近付かないんだが、本来は旅館の周囲が異常なんだ。
本能的に近付いたら危険だって身体が察知して拒否反応するのさ 」
「 へぇ~~。
霊観の強い人って敏感なんだな 」
「 敏感なもんかよ。
本当に敏感な奴ってのは森に足を踏み入れた途端に気絶するよ。
それぐらいヤバい森なんだ。
だが、霊観の弱い奴には分からない。
御構い無しに森の中へ入って森茂勞旅館の前まで行ったりする。
霊道も鬼門も肉眼では見れないモノだから、気付かないで更に旅館に近付こうとするんだ 」
「 へぇ~~。
そうなんだ… 」
「 お前達は森茂勞旅館の中に入ったのか? 」
「 い、いえ……。
初めは旅館の中に入って肝試しをする予定でした。
でも……友達が体調不良になったので、キャンプ地まで引き返したんです。
結局、旅館での肝試しを中断して翌朝には森を出ました。
鳥居が現れたのは、その帰りです。
森を出たのは昼過ぎでした。
通り道にファミレスが在ったんで、昼食をファミレスで済ませる為にそのファミレスを目指して歩道を歩いていた時で…… 」
「 昼間の歩道に白い鳥居が現れたのか? 」
「 は、はい……。
千本鳥居みたいな感じで白い鳥居が続いていたんです。
何処まで続いているのか──、終わりが有るのか──、分からないぐらい長く続いている様に見えました…… 」
「 お前は白い鳥居を前にしてどうしたんだ?
他の友達はどうしたんだ? 」
「 オレは白い鳥居の下を通りませんでした…。
スマホが急に鳴って、慌てて出たんです。
話してる間に白い鳥居は無くなってて──、歩道にはオレだけで……。
あっ、違いました。
友達の荷物が歩道に残ってました。
1人じゃ運べないのでヒッチハイクをして、交番まで乗せてもらったんです 」
「 ふ~~ん?
白い鳥居よりも突然掛かって来た電話に意識が移ったから君だけ “ 無事だった ” って事かな? 」
「 さ、さぁ……其処迄は──。
電話を切って振り向いたら白い鳥居も消えて友達達も居なくなっていたので…… 」
「 友達達は白い鳥居の下を潜って歩いて行った──って事かな? 」
「 そうかも知れないです。
女子達の話では白い鳥居の下を潜って中を歩かないと異界に取り残される──みたいな事を言ってましたから…… 」
「 シュンシュン、友達達は荷物だけ残して何処に消えたんだろうな? 」
「 お願いします!
オレの友達達を見付けてください!!
交番で事情を話しても信じてもらえなかったんです!
一応、捜索願いは出したんですけど…… 」
「 警察は事件性の薄い捜索願いは基本放置だもんな~~。
大概は “ 家出扱い ” にされて放ったらかしだから、警察に任せてても時間だけが無駄に過ぎるだけだ。
なんてったって、犯罪件数全国NO.1を誇る犯罪天国都市の米●町だから、行方不明者には時間を避けないのが現状みたいだよ 」
「 そんな……。
捜索願いを出したのに探してもらえないなんて…… 」
「 人為的な事件性が有れば警察は動くぞ。
但し、人為的な事件性の場合だ。
心霊的,怪奇的な事件性の気が有っても警察は動かない。
警察には解決が出来ないからだ。
だから、警察は心霊的,怪奇的な事件性の気が有るかも知れない捜索願いにも手は出さないんだ 」
「 シュンシュン……。
帝呀が聞いたら怒りそうだな 」
「 はぁ?
帝呀は僕に牙を剥いたりしないさ。
僕に牙を剥けて噛みつこうとしたら、牙だけじゃなくて歯も全部抜いてやるからなぁ!! 」
「 シュンシュンならやりそうだな~~ 」
「 あの……依頼は── 」
「 かなり厄介な案件だな。
お前の友達達は白い鳥居を潜って異界に迷い込んでいるだろう。
異界ってのは幾つも在る。
お前の友達達を見付けるには同様に白い鳥居を出現させないといけない。
骨が折れる作業だ 」
「 そんな── 」
「 シュンシュン、断るのか? 」
「 断る?
異界が絡んでる案件だぞ。
断る理由がない。
僕は異界を潰すのが好きなんだ!
異界を生み出してる怪異に八つ当たりしてやるのさ! 」
「 シュンシュン、依頼に事情を挟むのはどうかと思うな~~ 」
「 良いんだよ!
異界なんてのは無くした方が世の為になるんだ。
喜べ、依頼は受けてやる。
但し、お前の友達達が無事である保証は無いぞ。
異界は魑魅魍魎の巣窟でも在るからな。
運が悪ければ異界に生息している怪異に喰われている可能性が高い 」
「 異界って誰も居ない静か過ぎる町とかじゃないんですか? 」
「 はぁ?
そんな安全な場所じゃないぞ。
異界を作るのは怪異の類いだ。
それも危険度の高い怪異だぞ 」
「 そんな…… 」
「 えと、君が白い鳥居を見てから何れぐらいの日数が経ってるのかな? 」
「 3週間です……。
オカルトに詳しい色んな人達に依頼して回ったんですけど、誰もまともに相手をしてくれなくて…… 」
「 えっ?
誰も?
カモられたりしなかったのか? 」
「 鴨ですか??
…………森茂勞旅館に肝試しに行った帰りに白い鳥居が現れた話をすると返されてしまって……。
門前払いされた所もあるぐらいで……。
何で誰も相手にしてくれないのかさっぱり分からなくて…… 」
「 シュンシュン、何で他の同業者達は依頼を断ったんだろうな?
金に汚なくて貪欲で欲深い守銭奴の奴等が依頼を受けないなんてさ。
学生だし、カモる対象として見てなかったのかな? 」
「 学生なのは関係無いさ。
依頼人の両親や行方不明者の両親達に請求する事も出来るんだ。
断るにはそれなりの事情があるのさ。
子供には分からない “ 大人の事情 ” ってヤツさ 」
「 あの、大人の事情って何なんですか?!
何でそんな事で断られたり、門前払いされないといけないんですか!? 」
「 そうだよ、シュンシュン。
何で鍋に具材を入れてノコノコやって来た世間知らずな鴨をみすみす追い返す様な勿体無い事をするんだよ? 」
「 ……………………オレってマジで絶好の鴨だったんですか…… 」
「 森茂勞旅館の名前を出したからだよ。
さっきも話したが、彼処の森には鬼門が在り、霊道が通っている。
霊観の強い奴は敏感だから、森に入って暫くすると本能的に森を出ようとする。
金の為に命を捨てるなんて馬鹿のする事だ。
門前払いされてもおかしくないのさ。
見知らぬ依頼人の依頼を受けて、赤の他人を見付けて報酬をゲットするより、奴等は自分の保身を優先させたのさ。
自分じゃどうにも出来ない,太刀打ちの出来ない依頼は初めから受けない体で商売してるからな。
小遣い稼ぎでオカルト業界に片足突っ込んで粋がって奴等には到底無理難題な依頼って訳だ。
例えるならば、園児に大学教授と同様の論文を書かせ様とするもんだ 」
「 ははは……。
流石に “ 園児 ” は言い過ぎだろ? 」
「 フン!
僕からすれば “ 乳児 ” でも良いぐらいだ!
この僕が態々オブラートに包んでやったんだぞ! 」
「 えぇと──そんな訳だから、依頼は受けるよ。
3週間も経ってるし、友達達が無事である保証は出来ないし、見付けられるかも分からないけど、最善は尽くすよ 」
「 あ……有り難う御座いますっ!!
お願いしますっ!! 」
「 引き受けてやるから、お前は500万用意しとけ。
お前の依頼は500万だ 」
「 ご……500…………万円……ですか? 」
「 そうだ。
僕はボランティアで陰陽師をしてない。
勿論、慈善事業でもない。
報酬はきっちり頂く主義なんだ。
用意が出来ないなら、手荒な真似をしてでも回収させてもらうぞ。
僕は未成年だからって理由で容赦はしない 」
「 ご…500万円…… 」
「 マオ、現場に行くぞ 」
「 分かった。
依頼の調査が終わったら此方から連絡するからな 」
マオと春麗は、提示された報酬額に困惑している依頼人を1人残してファミレスを出た。




