私はあの人が王太子の婚約者と知り絶望しました。でも悲しんでいられません。
泣くな泣くな泣くな、たとえあの人が婚約者だったとしても。私は己を律するために頬を叩いた。
私を見て汚い庶民の女と高笑いした伯爵令嬢。
エミリア・ランデルの名前がそこにはあった。
何度か商会で会ったことはある。不細工、気持ち悪い。あんたなんか死んじゃえと言われました。
どうしてこんなことを言われるの?と涙したものでした。
王太子の婚約者の顔なんてろくに見てなかった。
いつも商会に出入りするたびになぜかお忍びで来ていた伯爵令嬢。
最初はどこかの商会の娘かと思っていたら伯爵令嬢だと教えてもらったのです。
庶民はみんな汚いというのが持論のようでしたが私は特に嫌われていました。
たぶんクリストフに気があるからだと言われてましたが…。
ランデル伯爵との繋がりがあれば商売を広げられると父は黙認していました。
ランデル伯爵は王家の縁戚、だから婚約者に選ばれたとしても公爵以下は今回が婚約者としてはじめて選ばれたと言うのもおかしい。
しかも3年前から王太子が留学していて留学先の資料が揃えられないというのも…。
2年前に帰国、これも彼がクリストフだといっているようなものでした。
落ちたハンカチを拾って渡したらきたなーいもういらないと私の手を払い除けた令嬢。
そんなのがあの人の婚約者になったなんて。
評判はとても悪く悪役令嬢とも呼ばれていました。
「どうして商会に来ていたのかそしてどうして王太子
が名前を偽り庶民に身をやつしたのか」
マックスや他の数人が協力者になり色々と調べていきましたがあれから数ヶ月がたち、なぜ?という疑問が 増していくのです。
人からの贈り物などは決して口にいれなかったお父様が、他人から贈られたというワインをどうして飲んだのか?
お酒など飲めなかった兄までがどうしてそれを飲んだのか?
ワインの出所がわからないのはどうしてか?
決して家に今日は帰るなと言っていたクリストフの言葉の真意は?
「あんな女がクリストフの婚約者として妻になるなんて」
君を愛していると私に閨の中で笑いかけたクリストフ、でもあれは偽りだった。
私は次の一手を打つべく動き出した。王家に出入りしている御用達の商会にコンタクトをとることに成功したのだ。
私が女ということが幸いしたはじめてのこれはケースだったが。
商売人の影には女の活躍があるなら女の中に入れるのは同じ女が最適である。
これは父にも聞いたことがあり母とよくお茶会などに参加していた。
商売人として必要なことをもっと聞いておくべきだったと私は悪どいこともしていた父だが、商売人としてはやり手だった父のことを思いだし涙した。
苦しみの形相で死んでいた父のことは殺されても仕方ないと人から言われた。
なら家族の私くらいは悲しんであげないと…。
いやあんな人だったが家族には優しかった。
私は出かける用意をしながら泣くなと己に言い聞かせた。復讐を終えるまでは泣くな。
そして私は約束をとりつけた人物に会いに行くために馬車にのった。
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