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ずっこけ3紳士! はじめての異世界生活~でもなんかループしてね?(ネタばれ)~  作者: 犬者ラッシィ
第十一章 3紳士、無双したり成り上がったり、ずっこけたりする
201/203

480 予選5日目――喝ーっ!! ろっこんしょうじょう、ろっこんしょうじょう!!

 やっぱおれ、ここに住もうかな。

 勇者選考会? なんかもう、どうでもよくね?


 ヤマダです。

 今、おれの腕の中に、レベッカちゃんとエブリィさんがいます。

 二人共全裸です。

 これまで真面目に生きてきて本当によかったと、そう思うのです。



「見ろ、エブリィ! これが、固くなった男のちんちんだ」


 え?

 突然、レベッカちゃんがおれのトランクス水着を膝まで引き下ろした。

 カチカチに緊張した相棒が二人にコンニチハする。



『これ、が……』


 うっ……!?

 無造作に、エブリィさんが相棒を掴む。


 ……ちょ、待っ……う!!

 びくん。

 びくん。

 びくん。

 びくん。



「……今、先っちょから出たのが子種だ。おしっこじゃないぞ」


『このネバネバ、を、お股の穴、に……?』



「バ、バカ! 塗りたくったってダメだ。穴の奥に新鮮なのを直接出してもらわないとダメなんだよ」


『……そう、なの? もったいない……あ、また大きくなって、きた』


 そこでやっと我に返ったおれは、あわてて水着を履き直す。



「ちょ、ちょっとなにすんだよ、レベッカちゃん!」


「ナニって、エブリィに教えてたんだよ、子作りのやり方」


『……レベッカは、ビッチ』


 ――んだと、てめぇ!? などと、じゃれ合う裸の二人。

 いつの間にか、妙に仲良くなっている。



「だいたい、エブリィがお子ちゃま過ぎだっつーの! キスで妊娠するわけねーだろ」


『だって、フォーリン姉様が、言ってた、から』


 そういえば。ついさっきまで忘れていた記憶の中に、まるで妊娠でもしてるみたいにお腹を膨らませたエブリィさんの姿がある。今は、すらっとすっきり引き締まったお腹に戻っているけど。

 記憶の中のお腹の大きいエブリィさんは、すぐそこにある分娩台の上に寝かされてお股をおっぴろげていたのだ。



「そもそも、夢の中じゃ、子どもなんか産まれねぇよ、おバカ」


『バカって言う方が、バカ』


 ――んだと、コラ! などと、面白い裸の二人。

 要するに、レベッカちゃんに、キスでは妊娠しないと指摘されたおかげで、エブリィさんのお腹がヘコんだということだろうか? マジか。


 ……あれ? じゃあ今、分娩台の上に寝かされているのはナンだ?

 意図的に目を逸らし続けていたそれに、おれは恐る恐る視線を向ける。



「なっ!?」


 それは、ヨボヨボの老人だった。

 股間に、袋だけが異様にでかいシナシナのモノがぶら下がっているので、爺さんだろう。

 全裸の爺さん……てか、これ、支配人のクラウド・グランギニョルじゃね?



「あーそれな。最初はそのシナシナ使って説明しようと思ったんだけどよ、ねじっても引っ張ってもぜんぜん立たなくて参ったぜ!」


『リーダーの、は、すぐ立って、発射して、すごい』


 いやあ、それほどでも……あるかな?

 それはそうと、この爺さん。支配人クラウド・グランギニョルとは、おれが記憶を失う前に対決した経緯がある。

 生身の身体を【カード化】されて、魔王ケルピーの夢の中から抜け出せないレベッカちゃんやエブリィさんを救うため、”支配人のクラウドを痛めつけて【カード化】を解除させてやる!”という少し雑な作戦で、おれはレベッカちゃんと共に襲撃を仕掛けたのだ。

 元々はちょっとイケてる中年胸毛紳士だった彼を、スキル【劣化】でヨボヨボの爺さんにして無力化したのは、なにを隠そうおれなのである。


 彼のちんちんを立たないようにしてやったところまではよかったが、その直後、おれは魔王ケルピーの前に強制転移させられてしまったので、現場がその後どうなったのかは知らなかったワケだが――。

 要するに、レベッカちゃんがヨボヨボのクラウドを痛めつけるなり脅しつけるなり、彼女のスキル【やくそく】で操るなりして、ここまで連れてきたということらしい。

 支配人一族や魔王に反旗をひるがえしたレベッカちゃんも追われる身である。そんな彼女が隠れ場所として選んだのが遊園地のこのアトラクション「イッツ・ア・ハダカワールド」の内部というワケだ。強制転移で姿を消したおれが、戻ってくるとしたらエブリィさんのいるこの場所しかないと考えたのだろう。



「「すんなり出会えたのは、ワッチのおかげねぇん」」


 おれの肩に腰掛けた手のひらサイズの肉ゴーレム、ハムニクちゃんが言った。

 いや、遠隔地からハムニクちゃんの口を介して実際に話しているのは、長乳の褐色スケベエルフ、ミスティリア・ドミニクさんである。



「うわっ!? おっさん、なんだよそれ? ロリコンってそういうことか?」


『……ろりこん?』


「「小児性愛者ねぇん」」


 それはちょっと言い過ぎじゃないだろうか。

 しかし、十五歳のレベッカちゃんと十四歳のエブリィさんに屈してしまったおれが言い訳しづらいのも事実。

 ともかく、このハムニクちゃん越しに喋っているのは、ギトギトに熟した成人女性であるところのドミニクさんであることを二人に説明。お人形にイタズラもしていない。


 ――世界中誰だって、産まれるときも、死ぬときも、ハダカ、ハダカ、ハダカ、ハダカ、丸出し世界~♪


 アトラクションのテーマ曲は、相変わらずホール内のあちらこちらから聞こえ続けている。

 この陽気な音楽に合わせて繰り返される耳に残る大合唱を聞いていると、こっちまで脱ぎたくなってくる。むしろ、水着を身に着けている自分の方が恥ずかしいような気さえしてくるから不思議だ。

 ……だって、レベッカちゃんとエブリィさんだって裸じゃないか。

 よし。脱ごう。

 と、そう思って、水着を半分下ろしかけたその時だった。



「喝(か)ーっ!! ろっこんしょうじょう、ろっこんしょうじょう!!」


 突然ホール内に響き渡る誰かの野太い声。

 振り返って見るが、そこにいるのは「ブラックテクニシャンガール」のコスプレ美女がひとり。



「フリーダさん……?」


「姉様……じゃ、ないのか? てめぇ、誰だ!?」


 見た目はポニーテイルのコスプレ美女のままなのだが、その表情は不敵に歪む。

 さっきまでは女性の声だったのに、違和感のある男の声で話し出した。



「クラウド様とレベッカ嬢、まさかこんな所に隠れ潜んでおったとは! 素っ裸とは恐れ入ったわい。ヤマダに付いてきて正解だったなり!」


 いつの間にかフリーダさんの手には三枚のカードがあった。

 そのうち一枚を抜き出して、「召喚!」と口にするやいなや――シュピーン! 床に描かれた光の魔方陣の輝きの中から、長髪の眼光鋭い中年男が姿を現した。全裸である。

 突然召喚されて面食らっているのか、中年男はこちらに気がつくと、はっとしたように腕で身体を隠し、妙にモジモジし始める。おっさんのくせに。


 フリーダさんが野太い男の声で、召喚した長髪中年男に命令する。



「さて、フリーダ、【認識交換】を解除せい」


 次の瞬間、長髪中年男とフリーダさんの姿が入れ替わった。

 具体的には、全裸の長髪中年男が全裸のフリーダさんになり、コスプレ姿のフリーダさんがコスプレ姿の長髪中年男になっていた。

 ……どうやら、おれが今まで一緒にいたフリーダさんの正体は、この変態コスプレ野郎だったらしい。そして、スキル【認識交換】を使っていたことからして、本物のフリーダさんもグルってことか。


 呆然とするおれ達を前に、なんの説明もないまま、長髪中年男は二枚目のカードを手にした。



「アイタタ、拙僧としたことが、最初にこっちを使うべきだったわい。魔法カード『早着替え』を発動するなり!」


 すると、長髪中年男が身に着けたコスプレ衣装が弾け飛び全裸になったかと思えば、またたく間に黒い僧衣姿に早変わりした。ただし、腰から下は海パン一丁。

 ……海パンはともかく、その黒い僧衣にはなんとなく見覚えがある。

 もしかして、モガリア教会関係の人、か? タナカが教祖をやっている、落ち目の宗教団体の。



「「ヤマダくぅん、気をつけてぇん。その人、遊園地エリアのボス、ランドルフ和尚かもしれないわぁん」」


「ややっ、その人形、ドミニク殿の肉ゴーレムであったかな? 拙僧のことをどこで……いや、いやいやいや、さてはプールエリアのハトヤ・イトウのヤツめが口を滑らしたか? なんと恥知らずな男、エリアボスの面汚し……!」



「どうやらアタリっぽいです」


 おれは、一瞬で距離を詰めると長髪中年男の首を掴んだ。

 ――スキル【劣化】! チクタク……な!?

 男の姿が、いつの間にか全裸のレベッカちゃんに変わっていて、思わず手を放してしまう。

 ちょっと考えれば、フリーダさんがスキル【認識交換】を使ったのは明白なのだけど――。



「姉様!? なんでそんな野郎のこと庇って……」


 振り返って見ると、長髪中年男がレベッカちゃんの声で姉を責める。

 その隙に、全裸のレベッカちゃんはおれを突き飛ばし、野太い男の声で三枚目のカードを使用した。



「いかにも! 拙僧はモガリア教会サキュバス・ストリート道場住職ランドルフ和尚なり! そうれっ、フィールド魔法『落下する世界』を発動するなり!」


 股間がひゅんとなる感覚。

 気がつけば、床がなかった。

 落ちる……どこまでも落ちていく……!



「「「ひぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」


 悲鳴は、レベッカちゃんとフリーダさんの声だったか……いや、おれの声も混じってますね。みんな一緒に落ちている。

 もちろんエブリィさんも、分娩台とその上のクラウド爺さんも黙って一緒に落ちている。


 見れば、長髪中年男ことランドルフ和尚が、小舟の上で仁王立ちしていた。

 小舟? 「イッツ・ア・ハダカワールド」内を周遊する小舟だろう。

 とにかく、小舟に乗ったまま落下している。

 ……って、なにそれ? 小舟に乗って落ちたら落下ダメージないとか?


 あわてておれは空中を蹴る――スキル【浮遊】で移動して、落下するレベッカちゃんとエブリィさんを抱き寄せた。

 そして気づいたことが二つ。

 一つは、スキル【浮遊】で空中を蹴っても、まったく落下速度が落ちないこと。

 蹴っても蹴っても、その度に加速して、常に一定の落下速度が保たれているっぽい。

 多分、フィールド魔法「落下する世界」とやらの効果なんだろうけど……てか、いつまで落ちるの?

 もう一つ気づいたのは、全裸の女の子を抱き寄せても、こんな状況だと相棒がまったく反応しないということ。

 ええい、おれとしたことが、不甲斐ない……!

 くやしいから、どさくさに二人のおっぱいを……。


 ドォン!! 

 のばしかけた指が触れる直前、不意に押し寄せた空気圧に巻かれて、おれは空中で一回転した。



「うわっ!?」


 気がつくと、水着越し、尻の下に金属のように硬い感触がある。

 全高およそ20m、群青色のドラゴンの背に、おれは乗っていた。

 この巨大なドラゴンこそ、エブリィさんの本来の姿である。



「ひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 悲鳴を聞いて姿を探せば、レベッカちゃんがドラゴンの右手に掴まれて青くなっていた。

 ……まあ、無理もないか。

 ちなみに左手には、分娩台とクラウド爺さんが掴まれているが、こちらはとてもおとなしい。

 そういえば、背中に乗せてくれるのは、エブリィさんにとって特別なんだっけ。

 ……よしよし、かわいいエブリィさんよ。


 群青色のドラゴンは、身体を青いエネルギー障壁【ドラゴンフィールド】で包み込むと、背中の翼を力強く何度も羽ばたかせた。


 しかし――、



『……ゴメン、リーダー、ぜんぜん、飛べない。飛んでも飛んでも、落っこちる、みたい……』


 ちょっと悔しそうなエブリィさんの声が、おれの尾(び)てい骨をふるわせる。

 まあ、予想はしていた。



「ハッハー!! 無駄なり!! 無駄なり!! ここは、『落下する世界』!! ありとあらゆるモノが、下へ下へと落下し続ける世界なり!! いかにドラゴンといえども、世界の法則からは逃れられぬのだッ!!」


 小舟の上で腕組みしたランドルフ和尚がこちらを煽ってくる。

 ……くそっ、ムカつくおっさんだな。



「気にしないで、エブリィさん。だってほら、相手も落ちてるし……!」


「「ヤマダくぅんが、ランドルフ和尚を急に攻撃したせいじゃなぁい?」」


 そんなことを話している間も、おれ達はどんどん落ちていく。

 さっきまでうるさかったレベッカちゃんも、いつの間にかすごくおとなしい。

 真っ暗な空間を、どこまでもどこまでも落ちていく。

 もうすぐ、まばたきするほど一瞬先にでも、この……なんていうか、深淵の底の底に叩きつけられて、みんなまとめてグシャッと潰れてしまうのではないかという恐怖が募る。



『リーダー、とりあえず、アレに、ブレス、使う、ね』


 おっ、いいねそれ!

 おれもなんか遠距離攻撃の手段があったら、あの和尚にぶちかましてやりたいと思っていたところだ。

 現実で人に向けてドラゴンブレスなんかしたら大変な事になるけど、夢の中だし、いいんじゃね?

 エブリィさんがノドの奥に、ゴインゴインとエネルギーを溜め始める。



「……え? ちょ、ま、待たれよ!!」


 どうやら、こっちの声が聞こえたらしく、やにわにあわてだすランドルフ和尚。



「よっしゃ、エブリィさん、なぎ払え!」


 なんちって。

 今まさにエブリィさんのドラゴンブレスが放たれようとしたその時、肩の上の肉ゴーレムから「「ちょっとまってぇん」」と、静止の声がかかった。



「「――今のワッチ達わぁ、魔王に監視されてるおそれがあるわぁん。リスピーナちゃぁんにも言ったのだけど、基本的に暴力行為わぁ御法度(ごはっと)よぉん。ルール違反でまた記憶リセット、宿屋に強制転移とかぁ面倒くさいでしょぉん?」」


「……な、あ! エブリィさん、ストップ! ブレスストップ!」 


『げひゅん……!!』


 言われて、発射直前のドラゴンブレスにあわててストップをかける。

 喉元まで出かかっていたモノを飲み込んで、目を白黒させるエブリィさん。

 ゴメン……だけど、記憶リセットは確かに面倒くさい。


 ふと、ランドルフ和尚に目をやると、またもやカードを使用。

 すると、少し離れた場所を落下していた全裸のフリーダさんが、小舟の上に出現する。

 再召喚した彼女の肩を馴れ馴れしく抱き寄せる和尚。

 ……イラっ。なんだアイツ……!?



「「もしかしてだけどぉん、ランドルフ和尚がフリーダちゃぁんのサーバンツカードを持ってるのかしらぁん? 彼女を盾にする気ねぇん」」


「暴力行為がダメってことは、おれのスキル【劣化】でジジイにするのもアウトですかね……?」



「「知らないわぁん。でも、こっちがルールを守ってる限り、魔王も好き放題に権能を使えないはずよぉん」」


 結局は正攻法でいくしかないのか。

 でもまあ、和尚がフリーダさんのサーバンツカードを持ってるなら、勝って奪うしかない。



「やい、ランドルフ和尚! アンタにデュエルを申し込む!」


「ハッハー!! やっと言いおった!! その言葉を待っていた!! ヤマダ・オゲレツ・ハチロータよ、そのデュエル受けるともさ!! ただし、拙僧とのデュエルは特殊ルールが適用されるなり!!」



「え?」


 なにそれ、イヤなんだけど……?



「イヤとは言わせぬぞ!? ルールその1、『サキュバス・ストリート』のスタッフは、デュエルを挑まれたら受けなければならない――ただし、デュエルの形式は、挑まれたスタッフが選ぶことができる!!」


「え?」


「「そんな目で見られてもしらないわぁん。だってぇん、ルールとか細かいし長いんだもぉん」」


 ……うーん。気持ちは、分からないでもない。

 それに、特殊ルールがイヤだからといって、やっぱ止めときますという選択肢もないのだ。



「拙僧とのデュエルは、この『落下する世界』の中で行われる。その名も『ダウンフォール・デュエル』なり!!」


「……『ダウンフォール・デュエル』……!? こんな状況でデュエルを!?」



「然(しか)り、『ダウンフォール・デュエル』!! フィールド魔法『落下する世界』の中で落下しながらデュエルする!! スタンバイフェイズごとに深度カウンターが1つづつ増えて、深度カウンター7で地面に激突!! 双方ともお陀仏(だぶつ)なり!!」


「オダブツって!?」


「「宿屋に強制転移かしらぁん? 要わぁ、6ターン以内に決着をつけなければダメってことねぇん」」



「いかにも!! 今更怖じ気づいても、もう遅いぞ、ヤマダ・オゲレツ・ハチロータ!! 拙僧が引導を渡してくれよう!! デュエル・スタンバイなり!!」


「や、やってやる! デュエル!」


 ランドルフ和尚とおれ、それぞれが「デュエル」を宣言すると、それぞれの目の前に半透明のデュエルフィールドが浮かび上がった。

 その上に、手元のデッキを山札としてセットすると、自動でシャッフルされる。

 山札から、最初の手札五枚をめくって準備よし。

 ……イメージ的には、携帯ゲーム機を持ち寄って対面でデュエルする感じだろうか? もっとも、相手との間隔は10mぐらい離れているけど。



「おっさん、やっちまえ! つーか、地面に激突とかマジ勘弁だぜ!」


『がんばっ、て、リーダー』


 なんてこった! レベッカちゃんとエブリィさんが、おれを応援してくれる。

 こんなことって、あたりまえのようであたりまえじゃないだろ? 早い話がすごく励みになる。気分は、娘の運動会で張り切るお父さん気分。ちょっと泣いちゃいそうだぜ。



「お、おう。まかしときな……!」


 ぐすん……。

 鼻水をすすりあげるおれに、肩に腰掛けた肉ゴーレムから、ねっとりとした声が淡々と話す。



「「捕まえた支配人クラウドを上手く利用すればぁ、ヤマダくぅん、デュエルスタジアムに直行できるんじゃなぁい? 前回やったみたいにねぇん」」


「ですね」


 相手も、それをやられたくなくって、フリーダさんに化けてまでおれ達に近づいたのだろう。

 できるものなら、今すぐにでもデュエルスタジアムに直行したいところ。

 でも――。



「「でも今わぁ、目の前のランドルフ和尚を倒すことに集中してねぇん。ちなみにぃ、ワッチもこれからカジノエリアのボス、カラビナ・グランギニョルに挑むからぁ、こっちに集中するわぁん。しばらく黙るかもだけどぉ、ヤマダくぅん、がんばってねぇん」」


「ドミニクさんも、がんばってください」




 おれを背中に乗せたまま落下し続ける群青色のドラゴン、早い話がエブリィさん。

 彼女の右手に、全裸のレベッカちゃん。左手には、分娩台とその上に寝かされた全裸のクラウド・グランギニョル爺さんが握られている。

 そのヨボヨボ爺さんを、痛めつけるなり脅しつけるなり、レベッカちゃんのスキル【やくそく】で操るなりしたいところだが、まずはランドルフ和尚に勝利して、この「落下する世界」から脱出しなければならないのだ。


 お互いのライフポイントは8000。これを削り合って相手のライフポイントを0にした方が勝者となる。

 ただし、今回の「ダウンフォール・デュエル」では、6ターン以内に決着をつけなければならないようだ。



「ハッハー!! 『ダウンフォール・デュエル』は初めてであろう!? ここはひとつ、拙僧が手本を見せてしんぜよう!! 先攻をもらうなり!! フィールド魔法『落下する世界』の深度カウンター×1!! ☆(ホシ)4『夢世界の住人 ガグ』を召喚するなり!!」

 

 シュピーン!

 >☆(ホシ)4、ATK(攻撃力)2000、DEF(防御力)0

 おれと和尚の間の空間に、全高5m越え、四本腕の白い巨人が出現する。

 頭が縦にパックリ割れて、ずらりと並んだ歯が見えた。

 ……てか、それ口!?

 多分、おれがまだ一度も見たことない魔物だと思う。


 先攻、1ターン目はバトルフェイズを行うことはできない。

 和尚はカードを一枚伏せて、ターンエンドした。



「おれのターン、ドロー!」


 はっきり言って今のおれのデッキ、ちょっと自信がある。

 なんの愛着もなかったウマナミ団デッキと違い、正直手応えを感じている。

 というのも、千人寝殿で布団の上から拾い集めたカードの中に、見つけてしまったのだ――



「おれは手札から、☆(ホシ)4『シルバスタドラグーンの鎖使いメイダ』を召喚! 『鎖使いメイダ』の効果発動! このサーバンツの召喚・反転召喚に成功したとき、デッキまたは墓地から☆(ホシ)3『ピンクドラゴンの幼生体 ネネ』を手札に加える!」


 シュピーン!

 >☆(ホシ)4、ATK(攻撃力)1800、DEF(防御力)1000

 銀色の軽鎧を身に着けて、鎖分銅をジャラジャラ引きずる凜々しい女戦士が出現した。

 オウガス殿下のお気に入り、シルバスタドラグーンのメイダちゃんである。

 思い起こせば、予選2日目、おれ達一行が「旧帝都モルガーナ」にやっとこさ辿り着いたその朝に、シルバスタドラグーンの三人は入れ違いに「ケルピーランド」へと飛び立って行ったはずである。

 あれから三日が経過し、未だ「ケルピーランド」を出発できないまま、【カード化】してしまったメイダちゃん。……彼女は今頃、どんな夢を見ているのだろうか? げへへ。


 おっとイカン、おれのターンはまだ続く。



「――更に手札から、魔法カード『合体』を発動! フィールド上の『鎖使いメイダ』と手札の『ピンクドラゴンの幼生体 ネネ』を合体して、☆(ホシ)6『シルバスタドラグーンのピンクライダー・メイダ』を合体召喚! 『ピンクライダー・メイダ』の効果発動! このサーバンツの合体召喚に成功したとき、デッキまたは墓地から魔法カード『合体』一枚と『シルバスタドラグーン』と名の付くカード一枚を手札に加えることができる!」


 シュピピーン!

 メイダちゃんと幼竜ネネが合体。「ピンクライダー・メイダ」に変身する。

 変身といっても、早い話が、ピンク色のドラゴンに騎乗したメイダちゃんなんだけどね。

 とはいえ、合体したことでステータスはドンとアップしているのだ。

 >☆(ホシ)7、ATK(攻撃力)2300、DEF(防御力)2000 


 召喚時の効果により、魔法カード「合体」と「シルバスタドラグーンの鬼副長バッシュ」をデッキから手札に加えて――って、うぎゃぁぁぁぁ!?

 >ライフポイント8000→7000

 

 な、なんだ!? なにが起こった!? おれのライフポイントが、突然、1000も減ったぞ!?

 ランドルフ和尚、てめぇ、なにしやがった!?



「おーっと、言い忘れておったが、『落下する世界』で魔法カードを使用すると、ライフポイントに1000ダメージが入るのだ!! いやぁ、めんごめんご!!」


 な、なにィ!? 魔法カードの使用コストが1000ダメージだとぉ!?

 魔法カード「合体」を使いまくる前提のシルバスタドラグーンデッキなんだが!?



「くそっ、バトルフェイズ! 『ピンクライダー・メイダ』で『夢世界の住人 ガグ』を攻撃! くらえっ【星雲鉄鎖(せいうんてっさ)】!」


 ランドルフ和尚のサーバンツ「夢世界の住人 ガグ」を破壊。 

 ATK(攻撃力)の差分、300を和尚のライフポイントから削った。

 

 おれは、魔法・罠ゾーンにカードを一枚伏せてターンエンドを宣言する。

 

 続いて、ランドルフ和尚のターン。

 フィールド魔法「落下する世界」の深度カウンターが2に増える。



「ろっこんしょうじょう!! 拙僧のターン、ドロー!! 『落下する世界』深度カウンター×2の効果解禁!! 手札から☆(ホシ)4『夢世界の住人 赤足ワンプ』を墓地に送る!! 1ターンに一度、手札からカード一枚を墓地に送ることで、相手のライフポイントに500ダメージを与える!! 諸行無常(しょぎょうむじょう)の効果ダメージなり!!」


 ぎゃあ!?

 >ライフポイント7000→6500

 ……もしかして、フィールド魔法「落下する世界」って、深度カウンターが増えるにつれて、デュエルを加速させる効果が追加解禁されていく感じ?

 だとしたらこれ、先攻が有利なんじゃ……?


 ランドルフ和尚のターンは続く。



「墓地に送った『赤足ワンプ』の効果発動!! このカードをゲームから除外することで、☆(ホシ)5以上のサーバンツをイケニエなしで通常召喚することができるなり!! 拙僧は手札から☆(ホシ)5『夢世界の住人 グール』を召喚!!」


 シュピーン!

 >☆(ホシ)5、ATK(攻撃力)2000、DEF(守備力)1500

 少し耳の尖った目つきの悪い男が召喚された。

 肌の色は土気色だけど、ちょっと背の高いゴブリンに見えなくもない。

 ……てか、あせらせやがって! うちの「ピンクライダー・メイダ」のATK(攻撃力)は2300だっつーの!


 しかし、和尚のターンはまだ終わっていなかった。



「――フィールド上の『夢世界の住人 グール』をゲームから除外することで、手札から☆(ホシ)8『夢世界の住人 ガスト』を特殊召喚するなり!! ――バトルフェイズ!! 『ガスト』で『シルバスタドラグーンのピンクライダー・メイダ』を攻撃!!」


 ほぎゃぁぁぁぁぁぁ!!

 >☆(ホシ)8、ATK(攻撃力)2800、DEF(守備力)2100

 召喚されたのは、マッチョなヴァンパイアだった。

 人サイズの「グール」が進化して、オーガサイズのヴァンパイア「ガスト」になったって感じだ。

 ヤツの鋭い爪と牙、あと筋肉で、うちの「ピンクライダー・メイダ」ちゃんは憐れズタボロにされて墓地送りである。

 >ライフポイント6500→6000


 ランドルフ和尚は、そのままターンエンドを宣言する。

 だが、その宣言こそが、「ガスト」の効果発動の引き金であった。

 

 

「――しばらく!! 『夢世界の住人 ガスト』の効果発動!! 『ガスト』が戦闘で破壊したサーバンツは、エンドフェイズに墓地から自分フィールド上に特殊召喚される!! さあ、死せる『ピンクライダー・メイダ』よ、【血の盟約】により、下僕となって真祖の陣営に参じるがよい!!」


 ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!

 おれの「シルバスタドラグーンのピンクライダー・メイダ」が、相手フィールドに敵として特殊召喚されてしまったよ。

 トホホ……。

※「デュエルサーバンツカード」にエクストラデッキはありません。カードとカードが不思議な力で合体して、新たなサーバンツが出現するのです。夢の中だからではなく仕様。そういう異世界設定です。

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