本音
「気になる人ならいる、かな…」
「えー、どんな人?まだ好きとは言えないの?」
「それが二人いて…」
「えっ!ちょっとレイチェル、どんな恋愛してるの?」
「でも二人とも本気では相手にしてくれてないのかもと思ったりして…」
セルジュ様に頂いたネックレスもヴィリン様に頂いた髪飾りも、今日もつけて来ては、いる。
「はあ…モテる男かけるニって事ね。」
「手短に言えば」
砂時計が落ち切る前を見計らってティーカップのお湯を捨て、蒸らしたホットティーを茶こしを使いながら注ぎ入れ、温めていたミルクも入れる。
「お待たせ致しました」
「うん、ありがと。で、どこまですすんでるの?」
「えっ、二人ともまだそんなんじゃないよ!」
「レイチェルー、そんなゆっくりしてていいの?」
「別にゆっくりしてるわけじゃ…」
「今のうちから本命見つけてちゃんと付き合っておかないと、いざとなってからじゃ遅いかもしれないんだからね」
「やっぱり、かなあ」
流しでティーポットについた茶葉と格闘しつつ、クラウディアの言葉を受け止める。
ルクレチア様の縁談騒動の時といい、実は地味に気にしだしたりはしている。
クラウディアはアルフレッドと三年は付き合ってるし、結婚はまだだけどいい関係は築けているらしい。
「ちなみに、脈がありそうなのはどっちなの?」
「脈…えー、二人とも悪い人ではないよ?」
「大丈夫なの、それ…」
「んー…だからね、まだ気になるレベル…」
「ああ、そう…」
クラウディアはそれ以上は諦めたように、ミルクティーに口をつける。
セルジュ様ともヴィリン様とも仲良くはなっているとは思う。
でもどちらが好きとか特別とかはまだ良くわからないし、これから先進展があるのかもわからない。
それに、もし…もしヴィリン様と付き合う事になったとして、ルクレチア様にどう言えば良いのか…もしセルジュ様と付き合うとしたら私は三番目…?
「ああ…」
「どうしたの?」
「何か色々考えたらしっかりしなきゃなあ、と」
茶こしについた茶葉も取り終わって、洗い物もひと段落した私は手を拭いた。
「うん…まあ、すぐどうなるわけでもないんだろうし…そう言えば、アルベルトとは会ってるの?」
「うん、お店に来るよ」
「そうなんだ。相変わらず?」
「うん。相変わらず…」
何と無く思い立って、果物のバナネを何切れかに生クリームを添えてショコラソースをかけたものを用意して、クラウディアに渡す。
「なかなか変わらないものだよね。あ、ありがとう」
「うん、どういたしまして」
自分の分も用意して、クラウディアと一緒にフォークでつつきながら午後のひと時を過ごした。
☆★☆
「いらっしゃいませ」
クラウディアに問い詰められて以来の予約の日。
先に来たのはヴィリン様だった。
「いらっしゃいました。もうすっかり秋だね」
「そうですね。温かい飲み物も出るようになってきていますよ」
アーユフェル魔術師団の白いマントを脱いだヴィリン様は、今日は珍しく青の上下ではなくグレーのスーツを着ていた。
「ああ、これ?人に会ってきた帰りでさ」
「そうなんですか、お疲れ様です」
「うん。緊張したな」
「ヴィリン様ならきっとそつなくこなせてますよ」
「だといいかな。ミルクティー、ホットでね」
「はい。かしこまりました」
あらかじめ温めておいたお湯はティーポットとカップを温めるお湯に使い、お水を足して再び火にかける。
お湯が沸くまでの間、思わずヴィリン様を観察してしまう。
好き、なのかな…?
人としては好きだけど、恋愛感情かというと、違う気がしないでもない。
でも信頼出来る人だし、話しやすくて安心も出来る。
女性関係については、聞くことがない。と言うよりも出来ないと言った方が正しい、かも…。
常連と喫茶店店主の壁は厚い…かな?
カランカランとドアベルが鳴る。
「いらっしゃいませ…って、アルベルト?ごめん、今貸切りで…」
やっぱり二人が来る前に直しておくべきなのかなあと思って、カウンターから出て入ってきたアルベルトの方へむかう。
「ん?そうなのか…お前と二人きりで貸切り?」
本当は三人ですよと言うわけにもいかず、アルベルトに「ごめんね」と断って店の外へ出る。
セルジュ様もまだ来てないから、アルベルトが居ても大丈夫か聞く事も出来ない。
でもアルベルトを追い出すような事はせずに、店の外の黒板と看板だけを閉店の状態に変えて店内に戻る。
すると、なぜかアルベルトがカウンター席でヴィリン様の隣に座っていた。
「とりあえず、セルジュ様が来るまでの時間は構わないって話たんだ」
「え、っと…ヴィリン様が良いのならそれで良いんですが」
「幼馴染みなんだってね」
「ああ、そうなんだ。もう二十二年、一緒に育ってきてる」
「そうだけど、そんなに濃くないよね」
「照れんなよ」
「いや、照れてないし…」
「そっかー、仲良いんだね…」
ややこしい…。




