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もうすぐ

「あ、悪い。俺招集かかってるからそろそろ行かなくちゃならなくてさ。悪いが、これで失礼するな」

レオナードさんが通信具と思われる指輪を起動させて時間を確認すると、心なしか慌てたようにヴィリン様の肩に手を置いて、歩き出す。

「またな」

ヴィリン様が声をあげると「ああ」と、ひらひら手を振って去っていく。



「じゃあ、庭に出てみようか」

「はい」

差し出された腕に、手をおいて連れられるまま庭への出口を探す。


「広いから出られる扉を探すのにも一苦労だね」

「そうですねー」

笑って答える。

…セルジュ様はいつもこんな風に広いお城を移動してるののかな。

それとも魔術で移動してるのかな?



しばらく歩いているうちに、外に続く両開きのガラスの埋め込まれた白い扉を見つける。


「少し風が冷たくなってきましたね」

「うん。あ、上着持ってきてないのか、これで良いかい?」

「あ、いいのに…でも有難うございます」

外に出ると同時に、ヴィリン様が羽織っていたマントを私の肩にかけてくれる。


フリルのある肩袖があるとはいえ、腕の出るドレス。

季節の変わり目もあって、日が落ちてきた帝都の風はあたたかいとは言い難いものだった。



「あそこにあるベンチに座ろうか」

ヴィリン様が石のベンチを指して、私の肩を抱いた。

思いがけず、どきっとする。


セルジュ様といい、ヴィリン様といい、最近スキンシップが多いような気がする。

石畳のひかれた広場のようになった庭に、小さめの噴水が置かれ、絶えず水が循環しているようだった。


「まだそんなに歩いてはいないのに、ヒールのせいか爪先が痛くなってきちゃいました」

「大丈夫かい?誰も見てないから少しの間、抜いじゃったらどうだい?」

「はい…少しだけ」

ベンチに座って靴を脱ぎ爪先を動かすと少し楽になる。

多少なりともドレスの裾は汚れてしまうものなんだなとわかっただけでも今日の収穫かも。


「ここにいたのか」


「セルジュ」

「セルジュ様」

かけられた声に二人で驚いて顔を上げると、茶髪に緑の瞳をした青いドレスの美女を連れている、帝国皇太子の正装…シルバーがかったグレーのマントやベストにズボンを着たセルジュ様が立っていた。


「いいのか?こんな所にいて」

「ああ、構わないさ。すぐに戻るつもりだし、夜会の最中では声もかけられないかもしれないからな。こちらは私の側室のナターシャだ」

「はじめまして、ナターシャ様。アーユフェル王国魔術師団に所属しておりますヴィリン•アセラトルと申します」

「あ、私はレイチェル•タリアルテです」

「はじめまして、ナターシャと申します。お二人のお話は殿下からお聞きしております。どちぞこれからも殿下の事をよろしくお願いいたします」

「こちらこそ。セルジュにはお世話になっているんですよ」

「まあ」

ヴィリン様の言葉に上品に笑うナターシャさんを見て、この方がセルジュ様のご側室なんだと心にくるものがある。


「紹介が出来て良かった。今日のファーストダンスは私達が踊るし、そろそろ最後の確認に行かなくてはならないので、少しだけだったがこれで失礼するな」

「ああ、楽しみにしている」

「では、失礼致します」

ナターシャさんが綺麗に礼をする。

それを見て私とヴィリン様も礼を返す。

セルジュ様のマントがひるがえったと思えば、二人はもう歩き出していた。


「驚きましたね」

「少しね。そこまで長いとも言えないが、短くもない付き合いの中でセルジュの側室を紹介されたのは初めてだったな。もう一人ともそのうち会えるんだろうか」

「どうでしょうか…私は可能性低そうですが」

「それこそどうかな」

「買い被りですよー…少し休めましたし、暗くなる前にもう少し庭を見てきましょうか」

「そうかい?あちらの方の花壇を見たら、城内へ戻ろうか」

「はい」






城内に戻ると、先程の楽団がゆったりとした曲を奏でていた。

人も沢山集まってきていて、いよいよ夜会が始まりそうだった。

前もって言われていた挨拶も、ヴィリン様はほどほどにしてくれているようで、私も雰囲気を味わう余裕が出来ていた。


「足は?痛くない?」

「はい。城内に入ってからも椅子に座らせて貰えましたし、この雰囲気で気分が高揚しているのか気にならなくなりました」

「なら良いんだけど、痛かったら言ってね。また外に出ても良いし」

「わかりました。ヴィリン様も何かあれば言ってくださいね」

「俺はこれでもこういう場所はそれなりに慣れてるから心配いらないよ」

「そうでしたね。あ、セルジュ様だ」


ゆったり奏でられていた曲が止み、ホールの中央へセルジュ様とナターシャさんが歩み出て行く。

しんとしたホールは二人に視線が集中している。

二人が踊り出すためのポーズをとるとワルツが鳴り響きはじめ、二人も踊り出す。


私はヴィリン様の腕に手をおきながら、二人のダンスに見とれていた。

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