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到着

馬車はクーペと呼ばれるタイプもので、屋根もついていて、窓もついていた。

窓を少し開けて風を感じながら、ヴィリン様と他愛もない話をしているうちに馬車はお城の豪華な門をくぐっていた。



「少し早く着いてしまったね。お城の中でも歩いて見ようか、今日は解放されているし」

広い中庭を通り過ぎ、エントランスの前で馬車を降りた私達はセルジュ様が急ぎで用意してくれた招待状を見せ、ゆっくりとした歩調で城内に入った。

「そうですね、滅多にない機会ですし…」

「わからないよ?俺やセルジュもまたこういった場に誘うかもしれませんし」

「それはそれで少し…いえ、だいぶ困るかもしれません」

今回はセルジュ様と一緒に用意したけれど毎回というわけにもいかないだろう。


「俺にも良い思いさせて欲しいな」

「良い思いだなんて…」

私は男の人の気持ちも良くわかってないのかもなあ。


でも、引かれる手が嫌だとは思っていない。

まだ慣れない高いヒールと長い裾に合わせてくれている歩調にも助かっている。


夕方にはまだ少し早い時間だけれど、私達みたいに早く着いたカップルがちらほら城内や廊下の窓から見える広場にも見受けられる。


中には談笑している人達もいて、知り合いなのかな?と少し気になったりもする。

ヴィリン様はわからないけど、ここには私の知り合いはいないだろうなあ。

逆に気楽で良いかもしれない。

でも、羽目を外し過ぎないように気をつけよう。


「少し座って休もうか?」

廊下に置かれていた椅子を指してヴィリン様が立ち止まる。

「いえ、大丈夫です。何ですからメイン会場でも見てきませんか?」

「良いけど、もしかしたら準備中かもそれないよ?」

「あー、まだ時間ありますもんね」

もしかしたら一番バタバタしている時間かもしれない。

「まあ、客だから邪険にされる事はないと思うけどね」

「邪魔にならない程度に見てきましょう」

「ん、分かったよ。この先の部屋らしいよ?」

ヴィリン様の言葉に従って、広いホールにつく。


「わ、凄いですね」

「かしこまらない夜会と言っても、それなりの人達、人数が招待されているからね」

飾られた花も立派で、皇帝が座る席は少し高い位置にあり、豪華な椅子がおいてある。


夜会では皇族のファーストダンスで幕を開けるらしいので、誰が踊るのか楽しみでもある。

私には縁遠い…縁遠かった世界。


アーユフェル魔術師団の正装に身を包んだヴィリン様が今日のパートナー。

私は隣でちゃんと笑っていられるかな。


隣の部屋ではウェイターさん達が慌ただしく、食事の準備などもしている。

今日は立食のささやかなものらしくて、ワインやシャンパンの入ったグラスが沢山用意されている。


生演奏もあるのか小規模の楽団が音合わせをしている。


はじまる前の高揚感が伝わってきて、なんとなく見ているのが楽しくなってくる。


「招待客も多ければ、準備に携わる人達も多いんですね」

「じゃないと回らないからね」

「見てると手伝いたくなってきてしまいます」

「俺達は今日はしてもらう方だよ」

「そうでしたね」

部屋の入り口近くの壁際に立っていたものの、忙しそうなスタッフさん達に悪いような気がして、ヴィリン様の腕を引っ張った。


「少し庭にも出て見ましょうか」

「そうだね。よく手入れされているから珍しい花も咲いているかもしれない」


二人で廊下に出た所で、声がかけられる。


「ヴィリンじゃないか!今日の夜会に参加するのか」

黒髪に緑の瞳をしたヴィリン様より少し年上に見える人が話し掛けてきた。

「レオナード。久しぶりだな」

「たまに連絡はとってるが会うのは久しぶりだよな」

「ああ、院を卒業してからも何度か会ってはいるけどな」

「アーユフェル王国に引き抜かれてからは忙しさも段違いのようだしな。また時間が出来たら飲みに行こうぜ」

「そうだな。でもわりと時間はあるけどな。遅い時間で良いならだけど」

「あー、俺、今は帝国の近衛兵だから時間が不規則なんだ」

「近衛?出世したのか?」

「出世といえるかは微妙だけどな。あ、失礼。こちらのご令嬢は?」

「あ、レイチェル•タリアルテと申します。ご令嬢ではないのですが、縁あってヴィリン様とご一緒してます」

「そうでしたか。私はレオナード•アタイルと申します。ヴィリンの大学時代の友人です」

「はじめまして。よろしくお願いいたします」

「こちらこそ。帝国の夜会にようこそお越しくださいました。楽しんで帰られて下さい」

「まだはじまってもいないのに、それはナシだろう」

「ま、そうだけどさ」

「いえ、お気持ち有難く受け取りました」

「レイチェル嬢の方が話がわかる」

「…悪かったな」


ヴィリン様が嫌味の応酬をするのも珍しいなと、セルジュ様とはまた違う仲の良さをレオナードさんとの間に感じた。

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