子どもの頃のアルバム
コミカライズ第27話が更新されました!
楓ルートの完結回です!とってもてえてえのでぜひ……!
楓ルート後の楓視点SSです。
放課後になり、教室を出てアキラと並んで廊下を歩く。
今日は部活が休みだから、アキラと一緒に帰ることができる。
アキラはふらっと色んな人のところに行くし、隙が多いから、ちゃんと捕まえておかないと!
「……楓、歩きづらいだろ。そんなにくっついてくるなって」
しっかりと腕を掴むと、ジロリと睨んで止めてきたけれど気にしない。
アキラのことが好きだと自覚してから、つらいことがたくさんあったけど……今は幸せ!
「別にいいでしょ? 誰もいないからいいじゃん」
「いるよ!!」
突然背後から聞こえてきた声に、アキラと驚く。
振り返ると、アキラの幼馴染のあの子が、ムスッとした顔で立っていた。
「雛、どこから湧いた」
「アキ! って普通に声かけたよ!」
「え? 悪い、気がつかなかった」
せっかくアキラと二人で下校できるのに、邪魔しないで欲しい。
「……でさあ、このあとどこ行——」
「私、いるもん!!」
ボクが無視して話し始めると、あの子は自己主張して大きな声を出した。
うるさいんだけど!
「雛、落ち着け! 分かってるから! 見えてるって!」
「だったら無視しないでよ! 私も一緒に帰りたい!」
「無理。ボクら、これから放課後デートだから」
「!」
ふふん、とさらにアキラに密着して得意げに言うと、あの子は固まった。
「…………」
口をきゅっと結んで俯いてしまったから、ちょっとやりすぎたかも……?
でも、ボクだって結構好き勝手言われたし、これからも牽制していかないと! と思っていたら――。
「もうやだ! BLなんてうんざり! うわああん風ちゃ~ん!!」
元気そうに走り去って行った。
なんだ、大丈夫そうじゃん。
「雛! その単語を口にするなって言ってるだろ! あと一番助けを求めてはいけない奴のところに行くなー!」
小さくなっていく背中に、アキラがまたよく分からないことを言っているなあと思いながら――。
綺麗な黒髪を揺らしながら走り去っていくあの子の姿を見て、女の子らしくて可愛いなあと思う。
アキラとお似合いって思うのは今でも変わらないし……。
でも、アキラの隣を勝ち取ったのはボクだから!
ちょっと勝てないかもって弱気になったときもあったけど……後悔しないように、気持ちを伝えてよかった。
がんばったんだから、ちょっとくらい自慢してもいいよね!
でも、小中学校の間——。
あの子は『ボクの知らないアキラ』を知っているのは羨ましい。
「ねえ。ボク、アキラのアルバム見たい」
「何だよ、唐突に」
「だって、ボクには知らない空白の期間があるのに、あの子はずっと一緒にいてずるくない?」
「別にずるくはないだろ」
「見たい! 今からアキラの家に見に行こう」
久しぶりにゲーセンに行きたいと思っていたけれど、今はアルバムの方に気もちが傾いている。
「まあ、別にいいけど……。先にお前のを見せてくれたらな」
「え? ボクの?」
先にアキラのアルバムをみたいけど……。
こういうときのアキラって引かないだろうし、ボクは別に見られて困ることはない。
ずっと可愛くしてたし!
「いいよ。今からボクのうちにおいでよ」
「早速?」
「もちろん!」
すぐにアキラを引っ張って進み、家路を急いだ。
※
ボクの家はマンションの一室だ。
アキラのところみたいに広くないけど、綺麗にはしている。
三人暮らしで、間取りは2LDK。
リビングとダイニングがひと続きになっていて、窓が大きいから昼間はけっこう明るい。
白いソファと丸いダイニングテーブルを置いていて、全体的に白とか淡い色で揃えているから、家の中はわりと柔らかい雰囲気だと思う。
両親は共働きだから忙しいはずなのに、親は整理整頓が好きで、家の中はいつもきれいに片付いている。
ボクも手伝うし、あまり散らかることはない。
洗濯したタオルとか柔軟剤のせいか、帰るとふわっといい匂いがするのも、この家の好きなところだ。
ボクは一人っ子だから学校から帰っても人がいることはない。
今日も誰もいない静かな我が家に、アキラの「おじゃましまーす」という元気な声が響いてなんだか嬉しくなった。
アキラはうちに何度か来たことはあるけど、ボクがアキラの家に行く方が圧倒的に多い。
だから、まだボクの家にアキラがいるのは変な感じがするというか、落ち着かないなあ。
さっそくアキラを連れてボクの部屋へ向かう。
幼少期のアルバムは長年クローゼットの奥に片づけられていたけれど、この前ボクが引っ張りだしてきたから部屋にある。
部屋に入ってアキラにはクッションを渡し、本棚からアルバムを取り出していると、アキラがキョロキョロと周りを見ながらつぶやいた。
「やっぱり楓っぽい部屋だよなあ」
ボクの部屋には、白いベッドと机。
それから背の高いクローゼットがあって、全体的に白と水色で揃えているから、見た目はすっきりしていると思う。
服は多いほうで、クローゼットの中はぎっしりだ。
可愛い小物も好きで、棚にいくつか並べている。
でも、物が散らかるのは苦手だから、普段はだいたい収納にしまってあって、部屋自体はきれいに片付いている。
この部屋がボクっぽいって……。
「アキラの中でボクってどんな印象なの?」
クッションを抱え、ベッドを背もたれにして座っているアキラの隣に腰を下ろして尋ねる。
「綺麗とか可愛い」
「え!」
アキラはボクのことを何気なく可愛いと言ってくれることが多い。
そのときも照れるけど、こうして面と向かって言われると余計に照れる。
それをアキラも分かっているのか、顔を逸らしているボクを見てニヤニヤしている。
「あとはー……『小悪魔』『結構腕力ある』」
……それは褒めているのだろうか。
あんまり嬉しくないから、他!
「それだけ?」
「あとは……好き、とか?」
「!」
突然びっくりするようなことを言われて、一気に体が熱くなったけど……言ったアキラの方も照れていることに気がついた。
クッションで何気なく隠しているけど、アキラの顔も赤いじゃん!
反撃するならここでしょ。
小悪魔とか言われたし、それっぽいことをしてもいいよね?
「ふうん、疑問形なんだ?」
顔を隠しているクッションを奪い、ベッドに膝をついて顔を寄せる。
「…………っ」
至近距離で、アキラが息をのむのが分かった。
やっているボクの方まで少し緊張してくる。
そうしているうちに……。
「ア、アルバム見るか」
ボクが手元に置いていたアルバムを奪い、ページを捲りはじめた。
……逃げたな。
結構いい雰囲気だったのに……と残念だけど、ボクもアルバムを見よう。
「あ、僕いるじゃん!」
アキラが指差したのは幼稚園の集合写真。
そこには黄色い帽子をかぶっている幼稚園児のアキラがいる。
「そうなんだよね。アキラが『あっくん』だって、思い出してからアルバムをひっぱりだしてきたんだよ」
「へー。そうなんだ。『あきちゃん』」
「…………」
小さい頃のあだ名で呼ばれるのは、なんだかくすぐったいような、気恥ずかしいような……。
ニヤニヤ顔でこちらを見ているから、もしかして……今の仕返しかな?
だったら負けないけど?
「なあに? あっくん」
とびきりの笑顔付き、全力の可愛い声で呼んだ。
「やめてくれ……あっくんはちょっと……」
「自分から言ったのに」
「あ! ランドセル背負ってる楓!!!!」
突然の大声にびっくりして、ボクの肩がビクッと跳ねた。
「どこにテンション上がってるの? アキラだって背負ってたでしょ?」
「まあ、持病の発作がでたというか、アイテム的に反応せざる負えないというか、気にしないでくれ」
「はあ?」
また理解不能なことを言っているが、深く追求しても理解できないことは分かっている。
解説して貰うことはあきらめ、一緒にアルバムの写真を眺めた。
「お前、ずっと可愛いな」
「でしょ?」
肯定するボクに、アキラは笑っている。
しばらく楽しそうにアルバムをめくっていたアキラが手を止めた。
「あれ、この人見覚えある」
そう言って指差したのは、長年顔を見ている友達だった。
「うん、華四季園にいるよ。小学校からずっと一緒で、中学からは部活も同じ。今でもテニス部で一緒だよ」
「……ふうん? なんか、どの写真も距離が近くない? 毎回楓にくっついてるんだけど」
そう言ってアキラが不機嫌な顔をした。
もしかしてる――。
「妬いてる?」
「……多少、不愉快な気がしただけです」
「それを妬いてるっていうんじゃないの?」
急に敬語になってるし、まだ仏頂面だ。
……アキラが妬いてくれるのは嬉しいな。
普段のボクの気持ちも分かってくれたかな?
「ボクなんて何倍も妬いてるからね! これからはふらふら誰にでもついて行っちゃだめだからね!」
あの子もそうだし、怪しい用務員とか、生徒会室に入り浸ったりとかだめだからね!
「僕は小さい子か。まあ……そうだな、気をつけるよ」
「うん!」
子どものころはつらくて、記憶と共にしまい込んでしまったしまった、幼い頃のアキラとの写真——。
こうして幸せな気持ちで一緒に見られるなんて嬉しい。
今の写真と並べて、部屋に飾ろう。
アキラ、ボクを選んでくれて……好きになってくれてありがとう。




