↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『勇者パーティを追放された「妖怪拾い」、実は倒した妖怪の力を使える最強職でした』   作者: 水原伊織


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/48

第9話 伸びる首と風の刃

―――――――――――――――

**東京都葛飾区・住宅街**

**午前二時十分**

―――――――――――――――


 ろくろ首の首が伸びる。


 屋根の上から。


 電柱の横を通り。


 そして――。


 蓮の目の前まで。


「食べてあげる」


 大きく開かれた口。


 鋭い牙。


「……気持ち悪いな」


 蓮は一歩後ろへ下がった。


 ろくろ首の顔が追ってくる。


 さらに首が伸びる。


「どこまで伸びるんだよ……!」


 蓮は刀を振った。


 ザンッ!


 首を斬りつける。


「ギャッ!」


 ろくろ首が悲鳴を上げた。


 けれど、首は止まらない。


 傷口から血を流しながら、さらに伸びてくる。


「再生するのか?」


 蓮は距離を取った。


 普通の妖怪とは違う。


 身体そのものが武器になっている。


 しかも――。


 長い。


 あまりにも長い。


「これなら……」


 蓮は右手を前へ向けた。


 天狗から拾った能力。


「風刃」


 ヒュンッ!


 見えない刃が飛ぶ。


 ろくろ首の首を切り裂いた。


「ギィィッ!」


 首が大きく揺れる。


「効いてる!」


 蓮は続けて手を伸ばす。


「もう一発!」


 風刃。


 ヒュンッ!


 今度は避けられた。


 ろくろ首の首が大きく曲がる。


 まるで蛇のように。


「そんな動きもできるのか……!」


 ろくろ首が蓮の背後へ回り込む。


「後ろ!」


 蓮は振り返る。


 目の前に女の顔。


「見つけた」


 口が開く。


 蓮は刀を横に振った。


 ガキィン!


 牙と刀がぶつかる。


「ぐっ!」


 力では蓮が押される。


 ろくろ首は首だけで刀を押し込んでくる。


「このままじゃ……!」


 蓮は鬼腕を発動した。


「鬼腕!」


 ドンッ!


 ろくろ首の顔を殴り飛ばす。


 首が大きく後ろへ伸びる。


 その隙に、蓮は距離を取った。


「近づかれると厄介だ」


 なら。


 遠距離から攻撃する。


 蓮は風刃を構えた。


「風刃!」


 ヒュンッ!


 斬撃が飛ぶ。


 ろくろ首は首を曲げて避ける。


「また!」


 ヒュンッ!


 今度は逆方向。


 避けられる。


「……速いな」


 風刃の威力はある。


 けれど、狙いが単純すぎる。


 相手が動きを読めば避けられる。


 蓮は考えた。


 風刃は見えない。


 それなら――。


「狙う場所を変える」


 ろくろ首は首を伸ばして攻撃してくる。


 その動きは速い。


 けれど。


「伸びた首を戻すとき」


 必ず一瞬、動きが止まる。


「そこだ!」


 ろくろ首が突っ込んできた。


 蓮は逃げる。


 首が伸びる。


 さらに伸びる。


 蓮の横を通り過ぎる。


「今!」


 振り返る。


「風刃!」


 ヒュンッ!


 風の刃が首の根元へ飛んだ。


 ズバッ!


「ギャアアアアアッ!」


 ろくろ首が叫んだ。


 首が大きく縮む。


 屋根の上まで戻っていく。


 蓮は追う。


 屋根へ飛び乗る。


「逃がすか!」


 ろくろ首が振り返った。


 その顔には怒りが浮かんでいる。


「人間……!」


 首が再び伸びる。


 今度は――。


 一本ではない。


 二本。


 三本。


「なっ……!」


 首が枝分かれする。


 まるで巨大な蛇が何匹も襲ってくるようだった。


「これは……反則だろ!」


 蓮は走る。


 一本を避ける。


 二本目。


 しゃがむ。


 三本目。


 刀で弾く。


 屋根の上を走りながら、必死に攻撃をかわす。


「数が多すぎる!」


 そのとき。


 蓮の目に、ろくろ首の身体が見えた。


 屋根の端。


 首を伸ばしているせいで、身体はほとんど動いていない。


「……そこか」


 蓮は方向を変えた。


 首ではなく。


 本体へ向かう。


「待て!」


 ろくろ首が叫ぶ。


 蓮は一気に距離を詰めた。


「これで終わりだ!」


 鬼腕。


 右拳を握る。


 ろくろ首の身体へ――。


「鬼腕!」


 ドゴォン!


 身体が吹き飛んだ。


「ギャアアアッ!」


 屋根から転げ落ちる。


 蓮も飛び降りた。


 ろくろ首は道路に倒れている。


 まだ動いている。


「しぶといな……」


 蓮は刀を構えた。


 ろくろ首が起き上がる。


 最後の力を振り絞り、首を伸ばす。


「死ねぇぇぇ!」


 蓮は真正面から見据えた。


「もう見切った」


 首が迫る。


 蓮は一歩だけ横へ動いた。


 そして――。


「風刃」


 ヒュンッ!


 風の刃が首の根元を斬り裂いた。


 ろくろ首の動きが止まる。


 その身体から、黒い煙が立ち上った。


 そして。


 静かに崩れ落ちる。


「……終わった」


 蓮は息を吐いた。


―――――――――――――――

**東京都葛飾区・住宅街**

**午前二時二十分**

―――――――――――――――


 ろくろ首の死体から、白い光が浮かび上がる。


 蓮はそれを見つめた。


「妖魂……」


 これで五体目。


 蓮は手を伸ばす。


《妖魂を確認しました》


《対象――ろくろ首》


《妖魂を取得できます》


「拾う」


 光が蓮の身体へ吸い込まれる。


《妖魂の取得に成功しました》


《固有能力『伸縮』を獲得しました》


「伸縮……?」


 蓮は首を触った。


 特に変化はない。


「どういう能力だ?」


 試しに腕を伸ばしてみる。


 何も起こらない。


「……首だけじゃないのか?」


 意識を腕へ集中する。


 すると。


 グッ。


「!」


 右腕が伸びた。


「うわっ!」


 腕が一メートルほど伸びている。


 蓮は慌てて力を抜いた。


 元に戻る。


「……これ、便利すぎないか?」


 もう一度。


 腕を伸ばす。


 今度は二メートル。


「届かない場所にも手が届く」


 蓮は自分の腕を眺める。


「妖怪拾いには、かなり相性がいいな」


 素材回収。


 探索。


 戦闘。


 使い方次第では、かなり役立つ。


 蓮は新しい能力を確認した。


「鬼腕」


「飢餓耐性」


「水中呼吸」


「毒耐性」


「風刃」


「伸縮」


 六つ。


 妖怪を倒すたび。


 自分の力が増えている。


「……もっと欲しいな」


 蓮は思った。


 強くなる。


 それが楽しくなってきていた。


―――――――――――――――

**東京都葛飾区・道路**

**午前二時三十分**

―――――――――――――――


 討伐報告を送信する。


【対象:Cランク・ろくろ首】


【討伐者:神谷蓮】


【討伐完了】


 数秒後。


【討伐士ランク:C】


【次回更新までの必要実績を表示します】


 蓮は画面を確認する。


「あと少しか」


 次のランク。


 Bランク。


 そこへ到達すれば――。


「Bランク討伐士」


 元いた勇者パーティと同じランク帯へ近づいていく。


 蓮は少しだけ足を止めた。


 佐伯たちの顔が浮かぶ。


 追放された日のこと。


『お前みたいな役立たずを置いておく意味がない』


 あの言葉。


 蓮は空を見上げた。


「……別に、戻りたいわけじゃない」


 ただ。


 自分がどこまで強くなれるのか。


 それを知りたい。


 蓮は歩き出した。


 その直後。


 スマートフォンが鳴った。


 政府からの緊急通知。


【緊急妖異情報】


【発生地域:東京都江東区】


【対象:大鬼】


【危険度:Aランク】


【討伐隊を編成中】


 蓮の足が止まった。


「……Aランク」


 今まで倒した最高ランクはB。


 その一つ上。


 しかも――。


 画面の下には、こう表示されていた。


【推定被害者数:多数】


 蓮はスマートフォンを握り締める。


「行くか」


 今度の相手は。


 Aランク妖怪。


 蓮にとって初めての――。


 本当の強敵だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。