↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『勇者パーティを追放された「妖怪拾い」、実は倒した妖怪の力を使える最強職でした』   作者: 水原伊織


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/48

第28話 東京にいる第三号

―――――――――――――

**長野県上田市・地下研究施設**

**最深部**

―――――――――――――


「所在地――東京都」


モニターに表示された文字を見つめながら、蓮は動かなかった。


第三号。


十年前の研究施設で作られた実験体。


それが、すでに東京へ出ている。


「いつからだ?」


蓮が尋ねる。


スピーカーの向こうから、研究者の声が返ってきた。


「三日前だ」


「三日前……」


「正確には、三日前の午前二時十三分」


政府職員がすぐに端末を取り出す。


「東京で妖異災害が発生していないか確認します」


数秒後。


彼女の顔色が変わった。


「……あります」


「何が?」


「三日前から、東京各地で小規模な妖異反応が連続して発生しています」


蓮が眉を寄せる。


「被害は?」


「ほとんどありません」


「ほとんど?」


「妖怪は出現しているのですが……討伐された形跡も、死体もありません」


蓮はモニターを見る。


「まるで、誰かが妖怪だけを連れていってるみたいだな」


第一号が静かに呟いた。


「違う」


「え?」


「連れていってるんじゃない」


第一号はモニターの地図を見つめていた。


東京に表示された複数の赤い点。


「集めてるんだ」


蓮の表情が変わる。


「妖怪を?」


「そう」


第一号が答える。


「十年前、研究者たちがやっていたことと同じだ」


零が顔をしかめる。


「妖魂を集めているのか?」


「たぶん」


その瞬間。


モニターの映像が切り替わった。


東京の地図が拡大される。


赤い点が、ある場所を中心にして集まっている。


「ここは……」


政府職員が息を呑んだ。


「東京都北区」


蓮の目が細くなる。


その場所には、見覚えがあった。


「荒川……」


十年前の研究施設とは違う。


それでも。


何かが、同じ場所へ集められている。


そして地図の中心には、一つの施設が表示された。


【旧・妖異対策研究センター】


「ここは現在使われていません」


政府職員が説明する。


「十年前の妖異災害後に閉鎖された施設です」


蓮は第一号を見る。


「知ってるか?」


第一号はしばらく黙っていた。


やがて、首を横に振る。


「知らない」


「本当に?」


「ああ」


第一号は胸を押さえた。


「俺が知っているのは、あの地下施設だけだ」


第二号の少女が静かに口を開いた。


「私も知らない」


蓮は二人を見た。


「じゃあ、第三号は何をしようとしてる?」


少女は答えなかった。


代わりに。


モニターに新しい映像が映った。


監視カメラの映像だった。


薄暗い研究室。


床には妖怪の死体が並んでいる。


その中央に、一人の少年が立っている。


年齢は十七、八歳ほど。


黒い髪。


白いシャツ。


細身の身体。


顔は普通の少年に見える。


けれど。


少年が振り返った瞬間。


蓮の身体が強く反応した。


《特殊妖魂――共鳴》


《対象――第三号》


《適合率――25%》


「……こいつ」


少年が監視カメラを見上げる。


まるで、こちらから見られていることを知っているようだった。


そして。


口元を少しだけ上げる。


『神谷蓮』


蓮の背筋に寒気が走った。


『やっと来る気になったんだね』


「……俺を知っている」


第一号が画面を見つめる。


「当然だ」


「何?」


「第三号は、俺たちより後に作られた」


「それなら、俺のことを知らないはずだ」


「違う」


第一号は首を振る。


「第三号は、俺たちとは目的が違う」


少年がカメラへ向かって話し始める。


『第一号は、あなたの失われた魂』


『第二号は、あなたを守るための器』


『そして僕は――』


そこで少年は言葉を止めた。


「……何だ?」


蓮が画面に近づく。


少年は笑った。


『あなたを完成させるための存在だよ』


映像が途切れた。


地下室が静まり返る。


蓮はしばらく画面を見つめていた。


「完成……?」


零が低い声で言う。


「蓮」


「ああ」


「絶対に一人で行くな」


蓮は頷いた。


「分かってる」


その時だった。


少女が蓮の袖を掴んだ。


「私も行く」


「危険だ」


「それでも行く」


少女は蓮を見上げる。


「第三号は、あなたを殺すためには動いていない」


「じゃあ何のためだ?」


「たぶん……」


少女は少しだけ震えながら答えた。


「あなたの中にあるものを、取り出すため」


蓮の表情が険しくなる。


「適合核か」


少女は頷いた。


「うん」


第一号が立ち上がる。


「なら、俺も行く」


零も続く。


「俺もだ」


政府職員が三人を見る。


「……全員で東京へ戻る、ということですね」


蓮は頷いた。


「はい」


そして。


蓮はもう一度、モニターに映った第三号の顔を見る。


なぜか。


初めて会ったはずなのに、どこか懐かしい。


その理由が分からない。


ただ一つだけ分かる。


第三号は、自分を待っている。


―――――――――――――

**東京都北区・旧妖異対策研究センター**

**同日・深夜**

―――――――――――――


誰もいないはずの建物の中。


少年は、一人で研究室に立っていた。


周囲には、数十個の透明な容器。


その中には、黒い妖魂が浮かんでいる。


少年は一つの容器を手に取った。


「もうすぐだ」


黒い魂が激しく脈動する。


「神谷蓮が来る」


少年は容器を中央の装置へ置いた。


「そうしたら、全部返してあげる」


その言葉に反応するように。


研究室の奥にある巨大な装置が起動した。


画面に文字が表示される。


【第三号】


【妖魂収集――完了】


【対象――神谷蓮】


【適合核回収準備――開始】


少年は静かに笑った。


「今度こそ――」


その目が、赤く光る。


「十年前の続きを始めよう」


―――――――――――――


同じ頃。


長野を出発した車の中で、蓮は眠れずにいた。


窓の外を流れる夜景を眺めている。


その時。


胸の奥で、特殊な魂が震えた。


一度。


二度。


そして。


三度。


蓮は目を閉じる。


「……何だ?」


聞こえた。


声ではない。


言葉でもない。


けれど。


確かに何かが伝わってくる。


**逃げろ。**


蓮は目を開いた。


「……違う」


もう一度、感じ取る。


今度は、はっきり分かった。


特殊な魂が伝えているのは、


**「急げ」**


だった。


蓮は前を向いた。


東京まで、あと少し。


第三号との再会は、もう始まっている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。