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カレーで異世界制覇  作者: 黒犬
スパイスと始まり
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12/26

出会いは拳で

ヒロイン登場!!

 寝起きの頭を覚ますため温かい湯を頭から浴びる。

 最近我が家に導入された魔道具で、水を貯めたらその水を火の魔石で温めるという造りみたいだ。

 そのお湯をホースから出して身体を洗うという道具。

 もっと高価な物だと貯めたお湯に身体ごと入れて温まる、お風呂というのもあるが値段が高すぎるので断念した。 

ひねりを開きっぱなしにするとすぐにお湯が無くなるので、上手く使うのにコツがいる。

 

 (泡まみれで、お湯が温まるのを待つのは嫌だし)


 初めて我が家にこの魔道具が来た日の事を思い。笑みを浮かべる。


 (そういえば父さん珍しく、お酒飲んでたみたいだけど)  


 普段滅多にお酒を飲まない父が珍しいと思い、髪を洗う。

 香料の入った泡の出る液を瓶から出して髪に塗り泡立てる。


 (初めて使った時、目に入ってひどい目にあったな)


 この髪を洗う薬品は高価な物だが、魔道具を設置した時、工事の人達と一緒に小さな女の子が居てその子にくれた物だ。

 工事に来た大人も敬語だったし偉い人の子供かなと思い、髪を洗いお湯で洗い流す。


 脱衣場でタオルを出しタオルで髪や身体の水気を取り。

 着替えを部屋に忘れた事を思い出し、


 (ミスったな、父さんしか居ないし、いいか)


 部屋に行く時に台所を通るが仕方ない、タオルを肩から掛け脱衣場を出る。

 そして台所に入ると、


 「ナムさんおはようございま」


 父ではない男がそこで料理していた。

 そして振り向き固まる。


 「えっと、そのすいません!!」


 自分は右の拳を握り身体をひねり上段からの打ち下ろすような右ストレートを男に叩き込む。



   ◇   ◇   ◇



 昨日の食事会が終わり、自分が今日泊まる所が無い事に気が付いた。

 ボードマンさんに聞きたい事があったが、ドワーフのバーリさんに引きづられ飲み屋街に消えていった。

 ママチャリの前で悩んでいたら、ナムさんが声を掛けてきたので、

 事情を説明したら家に泊まれというのでお言葉に甘える事にした。


 食事会成功と、材料集めに奔走してくれた冒険者を労うため食事を出し、議員の人達が飲んで口の開いたワインで酒盛りをしていたので少し酔っている。

  一度口が開けたらお客には出せないから飲むか捨てるというので、普段飲めない高級のワインを楽しんでいた。


 家に向かう途中にバル父さんとアニス母さんの、現役時代の話をしてくれて面白かった。

 

 ナムさんの家に着くと客間に通され、今日一日のことを思い出しながらベットに横になると、疲労感がじわじわ出てきてすぐ眠りに付いた。


 起きると朝になっていたが、いつも通りの時間だ。

 旅のおかげで規則正しい生活が身に付いている。


 (ただ泊めてもらうのも悪いし、朝食でも作るか)


 昨日の食事会で余った材料は貰ってきたので問題ない。

 部屋を出て廊下に出るとすぐ台所と勝手口が見つかったのでママチャリから材料を降ろしに行く。


 ナムさん印のバターと牛乳、タマゴもあるからオムレツでも作るかと思い準備していたら 気配を感じた。

 ナムさんが起きてきたと思い挨拶をしようと振り向き、


 「ナムさんおはようございま」


 振り向き固まる。

 目の前に裸の天使がいる。肌の色は褐色だが髪の色は銀色の美少女が、

 風呂上りなのか髪は水分を含んでいて裸にタオルという出で立ち。 


 「えっと、そのすいません!!」


 まず謝る事にしたが、少女の右手が上段から振り上げるように顔面に飛んでくる。

 身体も捻って全身のバネを使い襲い来る死神の鎌が、

 この技、チョッピングライトという名前だっけと冷静に思い衝撃を受け、


 何か花の様な甘い匂いを感じながら、故郷の桜を思い出し意識を刈り取られる。


 

 その後、物音で目を覚ましたナムさんが自分を見つけ大騒ぎに、

 後ろに倒れて頭を打つ様な倒れ方ではなく、膝からゆっくり倒れる様な体勢で気絶していたそうだ。

 時間にして数分位意識を失っていたみたいだ。

 少しぼんやりするが、吐き気や頭痛やふらつきの症状も無いので、後遺症も多分無いだろう。

 ズキリと顎の先端に痛みを感じる。

 顔面に拳を打ち込むのではなく、顎の先端を正確に打ち抜き脳を揺らす。

 アムちゃん以来の才能を見た気がする。


 娘さんはそのまま部屋に鍵を掛け引きこもっているそうだ。

 ナムさんが扉を抉じ開け、謝罪させると言っていたが辞めさせた。

 嫁入り前の娘さんの裸を見た自分が悪いと謝罪したら、ナムさんもこちらが悪いと謝罪し、 

 何回か繰り返していたら上から娘さんが降りてきた。


 白いワンピースが着て腰まである綺麗な銀髪を靡かせ、

 こめかみには皺があり眉も釣り上がり、大きめな瞳は怒りに満ち、


 「コイツ何?」


 ですよねー、と思い自己紹介をする。

 

 「ケイタ・バウウルグです。先ほどは失礼しました!!」


 腰を90度曲げ謝罪する。


 「この方はあの、バル様とアニス様のご子息なんだぞ!!」


 ナムさんがすかさず説明する。

 顔を上げて娘さんの表情を見ると、顔を真っ赤にして、怒りや悲しみ恥ずかしさが入り混じった様な表情でこちらに指を差して、


 「コイツが!!」


 指差しコイツ発言頂きました。涙が出そうです。


 ナムさんがテーブルに案内して自分が座りナムさんが横、娘さんが正面という配置で座っています。

 娘さんはテーブルに膝を着き手を顎にやり、こちらに視線を向けず不機嫌そうにしています。

 会話も無く時間が経過して、


 「お前も自己紹介したらどうだ」


 ナムさんが停滞している空気を変えるべく発言します。


 「・・・ル」


 呟くように名前を言いますが聞こえません。

 困ったような顔をしていると、


 「パール・ディーよ」

 「ケイタ・バウウルグです!!」

 「さっき聞いたわよ」

 「ようやく仲直りか、良かった良かった!!」

 「別にコイツの事許してないわよ」

 「仲直りもすんだし朝食にするか」

 「だからコイツ許してないから!!」


 先ほどからコイツ呼ばわりしかされてません。

 少しでも機嫌を直してもらえるように頑張りますか。


 「じゃあ、僕に作らせて貰っていいですか」

 「はぁ?」

 「それはいいお願いできますか、ケイタ様」

 「コイツ料理できるの?」

 「素晴らしいぞ、この世の物と思えない美味だ」


 ナムさんハードル上げないで下さい。

 手を洗い、エプロンして料理開始です。

 昨日の調理場と同じ仕組みなんで大丈夫だな。

 タマゴを殻を割って牛乳を加えて手早く混ぜます塩を加えて味を整え、

 フライパンを温め、バターを加えて混ぜたタマゴを入れ半熟にしてすばやく包み込みます。


 それを皿の上に乗せて、昨日のトマトソースを瓶に詰めたものを出して出来上がったオムレツに掛けます。


 「お待たせしました、オムレツです。」



   ◇   ◇   ◇ 


 最悪だ。

 裸を見られて、思わず相手を殴って気絶させるなんて、

 そのまま部屋に戻って自己嫌悪で落ち込んでいたが、

 謝らないといけないと思い、髪を乾かし服を着て部屋を出る。

 しかし相手の顔を見ると謝るどころか、

 

 「コイツ何?」

 

 最低だ。

 すると相手のほうがいきなり頭を下げて謝り始める。 

 すると父さんがこの男の人が、

 あのバル様とアニス様の子供だという、

 父さん影響で自分も大ファンで部屋の本棚には全15巻全て揃っている。

 なんというか自分の中で様々な感情が入り混じり出た言葉が、

  

 「コイツが!!」


 昔から自分が思っている事を上手く相手に伝えることが出来ないでいる。

 母さんは喧嘩して泣いている自分の頭を撫でながら、大丈夫だからと慰めてくれた。

 こんな性格だから友達も少なくトラブルを起こす。

 自分の憧れの人達のご子息相手でも変わらない。


 なんとか自分の名前を言って安心したら、

 父さんが余計な事をいい、コイツとか許してないとか失礼な事を言った。

 なんか穴を掘ってその中に埋まりたい気分だ。

 すると朝食を作るという。 本来お詫びに自分が作るべきなのに、

 父さんも旨いというから興味がわいた。

 10分もしない内に皿を一つ自分の前に置き。  


 「お待たせしました、オムレツです。」

 

 白い皿に黄色い物と赤いソースが掛かった初めて見る食べ物、

 笑顔で自分の前に置き、父の分を作りに台所に戻った。

 父が温かい内に食べてみろと言うので始めてみる食べ物をスプーンで口に入れる。

 

 (美味しい、口の中でとろける!!)


 ふんわりとした食感が口の中全体に広がりほんのり甘い。

 赤いソースが酸味もあってしょっぱさもあり黄色の部分と絡めると止まらない。

 中から半生の部分が出てきてとろりとして美味しい。

 さっきまでの心の中の刺々しさも消えている気がする

 気が付くと皿の中は空になり、頬が緩んで笑顔になる。


 気が付くと父の分を持ってきた彼と目が合い。


 「チーズ入れたのも美味しいけど食べる?」


 顔が熱くなるのを感じながら頷く。

 


  ◇バルとアニスの冒険譚一巻、第一章◇


 アニスは魔物の血を浴びた身体を綺麗にするため、鎧を脱ぎ水浴びをする。

 水浴びしていると誰かの気配を感じて、愛用の弓を手に取り矢を番え気配の方に向ける。

 すると林の中から獣人の男が出てきたので、躊躇わず打つ。

 眉間を狙った矢を口で挟んで止めた。

 自分の矢を止められた事に驚き、動きが止まる。

 すると獣人の男は大降りのナイフをこちらに向かって投げつけ、後ろで自分を狙っていた魔物の頭に突き刺さる。

 獣人の男は笑顔で、


 「危なかったな」


 と言うと去って行こうとする。

 アニスは男を引き止め、お礼にと弓で仕留めた川魚を焚き火で魚を焼いて一緒に食べる事にした。

 三匹の魚を一匹ずつ食い、残った最後の一匹を男が、


 「お前が食え」

 

 それを頷き受け取り、獣人の名前を聞く。


 「俺はバル冒険者だ」


 「私はアニス冒険者よ」

 

 これが後にパーティーを組み、結婚して夫婦になり、様々な冒険をして多くの人を救う英雄物語の冒頭の出会いのシーン。

 

 パールは頷いた後、なぜかこのシーンが頭の中に浮かんで自分達の初対面とずいぶん違うと思い。

 チーズの入ったオムレツを待つ事にした。

 

パン屋の娘の予定が・・・。


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