↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カレーで異世界制覇  作者: 黒犬
スパイスと始まり
PR
13/26

お狐様に

材料集めです。


 

 タマゴを全部オムレツにして、

 食後にチャイを入れてナムさんとパールさんに出す。

 

 「何コレ?」

 「チャイという紅茶の仲間で、熱いので気を付けて飲んで下さい」


 相変わらず自分の前では不機嫌そうな顔をしているが、チャイを一口に飲んだら、

 緩んで笑顔になる、オムレツ食べてる時もそうだけど美味しい物を食べてる時は可愛らしい顔になる。

 なんか野良猫に餌付けして、餌は食べるけど触らせないという感じかな。


 「何よ?」


 視線に気が付いて、きつめの視線を向けられる。


 「味の方は大丈夫」

 「まあまあね」


 残りに口をつけるととたんに緩んだ表情に、

 面白いなこの子、チャイを飲み終わったナムさんが、


 「今日のご予定は何かありますか?」

 「はい、このあと商業地区に行ってから、冒険者ギルドに行こうかと」

 「道は分かりますかケイタ様」

 「いえ道は聞きながら行こうかと思います。有名な店のようなのですぐ分かると思うので」


 何度も様付けは止めてくれ言ったんだが訊いてくれない。

 疲れるというか柄ではないからなんとかしたいんだが、


 「それならパールに案内させますよ、ケイタ様を頼むぞ」

 「ちょ、ちょっと待ってよ、父さん!!」

 「まだ脳震盪の影響があるかもしれないからな」

 「うっ、わかったわよ」


 なんか道案内の人が出来ました。こちらに向ける視線は相変わらずですけど。  


 ママチャリはナムさんの家に置かしてもらい、必要そうな物をリュックに入れ。

 商業地区のある所までパールさんに案内されます。

 といってもこちらを見ないでひたすら歩いていくのを付いていくだけですが。

 するとパールさん振り向き。


 「商業地区のどこの店に行きたいのよ」

 「はい、エチゴ屋に行きたいんですけど」

 「あんたがエチゴ屋に。連れて行くけど知らないわよ」


 無言で道を進んで行き大きな通りに出て、ひときわでかい建物の前で立ち止まり、

 

 「ここだけど」


 周辺の建物と比べても広い敷地を持ち周辺を白い壁で囲い。

 蔵のような物が建物に入る前からいくつも見え、全体的に落ち着いた色合いの和風建築が建っている。

 正面に出ると、黒塗りのでかい看板に金色の文字で「エチゴ屋」と大きく書かれている。

 多くの人間が出入りしていて繁盛している事が分る。 


 「ではクズハさんに、会いに行きますか」

 「ちょっと、本当に入るの?」

 「はい、顔を出すように言われてますので」

 

 入り口に入り正面の受付の人に、クズハさんに会いたいと伝えたら、


 「事前に約束の無い方に、御前をお取次ぎ出来ません」

 

 上から下まで見た後に事務的な返答をされる。

 後ろからパールさんの視線が痛いほど刺さるのを感じ、

 そういえばと、昨日貰った銀色のカードを見せたら。


 「失礼しました、少々お待ち下さい!!」

 

 すごく慌てて建物の中に消えていきます。少しすると、


 「どうぞお入り下さい。お連れ様もどうぞ」


 おかっぱ頭の狐の獣人の少女が出てきて案内する。

 靴を脱いで担いでいたリュックを預け、鴬張りの廊下を歩いていくと、ひと際豪華な襖の部屋の前で、

 

 「御前、お連れしました」

 「入って貰いなさい」


 襖を開け中に入ると、畳の敷かれた大きな部屋の奥、

 金箔の張られた狐の描かれた屏風絵の前で肘宛に身体を横たえながら、

 エチゴ屋の主のクズハ・ミツキが鮮やかな青の着物を着て待っていた。


 正面に座布団が敷かれているので正座して座り。パールも真似て正座で座る。

 

 「坊や、早かったわね。あらその子は?」

 「お世話になっている家の子で道案内をお願いしたんです」

 「てっきり、もう女が出来たのかと思ったんだけど違ったかしら」


 横から迫力のある視線が向けられているのを感じます。

 話が横道に逸れる前に本題に入ろう。


 「クズハさんに頼みたい事があったのでお邪魔しました。昨日の今日で申し訳ないですが」

 「いいのよ、でも私はトンの次だと思っていたんだけど」

 「トンさんの所も行きますけど、クズハさんの方が優先順位が高かったので」


 クズハの表情が変わり嬉しそうに笑い始める。

 胸元を出すように着物を着ているので、派手に笑われると目のやり場に困る、

 かなり長い時間笑い、笑いが収まると

 

 「愉快だわ、私達にそんな事を言うなんて、普通もっと機嫌を伺うような事ばかり言うものよ」

 「すいません、狐の方に化かし合いは失礼だと思い正直に答えました」

 「それで何が欲しいの、私じゃなければ手に入れられない物なんでしょ」

 「はい、お米が欲しいです!!」


 米だけじゃなく、味噌や醤油などの調味料、昆布や鰹節など出汁が取れる物など、

 自分が欲しいと思う材料を説明していきます。

 

 「米ね、アマト産の材料が他にも結構あるのね」

 「はい、米が無いと有るじゃ全然違うので、それでありますか?」

 「私が食べる分はアマトで契約して育ててるし、それ以外にも商売用は蔵にあるわよ」

 「本当ですか!!」

 「坊やはアマト出身じゃないのよね? 匂いが違うし」

 

 また匂いです、狐も犬の仲間なので鼻は効くみたいです。


 「いいわ、米は欲しいだけ持っていっていいわよ、それとお願いがあるんだけど」

 「お願いですか?」

 「無理ならいいけど、実は大豆を大量に在庫に抱えていて何か使い道ないかしら?」

 「大豆ですか…、厨房見せてもらっていいですか?」

 「ええいいわ、モミジ」


 先ほどの狐の少女が襖を開けて入ってきて、


 「失礼します、御前お呼びですか」

 「この二人を厨房に案内して頂戴、有る物は好きに使っていいわよ」

 「わかりました、ではお客様こちらに」 

  

 立ち上がり付いて行こうとするとパールさんが、自分の服の袖を掴んで睨んでいます。

 何かしたのかと思いパールさんをみたら、足が痺れて動けなくなっているようです。

 その姿を見てクズハさんが、また笑っています。


 モミジさんに案内され厨房に案内される。昨日の食事会の会場の調理場と同じくらい広くて立派な施設。

 するとモミジさんが割烹着を着て厨房の案内を始める。

 パールさんは調理場の端にお茶を出され座っている。

 モミジさんは自分の仕事場である、調理場にあまり人を入れたくないようだ。

 

 「ここが、肉や魚などの保存用で、そちらが野菜などを保存してあります」 

 「モミジさんショーユやミソとかの調味料は?」

 「ここの瓶にそれぞれ入れてあります。乾物はそちらの棚に。あと呼び捨てで構いません」

 「加工品とかありますか?」

 「はい、アマト産の材料で私の作った物が」


 冷やして保存する魔石道具の中から、皿に載せた白い長方形の物体を取り出し。


 「御前は晩酌で、これをにショーユを掛けて食べるのを好みます」

 「モミジ、油はある?」

 「アマト産のナタネの油ならそちらの瓶に」

 「モミジご飯炊いてもらっていいかな、少し固めで」

 「かしこまりました、他の材料は何を?」

 「この御前の晩酌用の物、使わせてもらうよ」

 


   ◇   ◇   ◇


 大豆の在庫が大量にあり困っていると嘘をついて、坊やを試したのは気まぐれだった。

 大豆は自分が昨日の食事会のあとすぐ集めた物だ、市場に出る前の在庫を買い取ったのは、

 昨日のカツレツの調理法の油で揚げるという方法を知り、油が今後大量に必要になると読んだからだ。

 この都市周辺で使われる油は大豆を絞って作る方法で作られる。

 万が一読みを外してもトンに売りつければいいと考えたからだ、

 トンの事だから油の工場を自分で作るという予想も出来た。


 その様な事を考えながら、坊やがどんな物を作るか楽しみにしている自分に気が付く。


 (10代の小娘じゃあるまいに)


 「御前失礼します。ケイタ様の料理が出来ましたのでお持ちしました」

 「入りなさい」


 モミジが割烹着姿で、黒い盆の上に俵状の物を積んだ物を自分の前に置く。


 「イナリズシです。お茶をすぐにお持ちしますので」


 自分の前を去るとき、「イナリズシ」を物欲しそうに一瞬見て部屋を出る。


 (モミジがあんな目をするなんて珍しい)


 そんな事を思い、箸で黄金色の俵を口に運び食べてみる。


 (美味すぎる。何この俵は!!)


 表面の黄金色の中から出汁を含んだ甘めの汁が食べるたびにあふれ出し。

 中に入っている米は酸味があり酢飯だ。

 それが包んでいる物から出る甘めの汁を吸い、さっぱりと食べさせてくれる。

 

 (いくらでも食べられそう、身体がこの食べ物を欲している)


 気が付くと箸ではなく手掴みで食べていた事に気が付いて。

 羞恥で顔が熱くなるのを感じる。

 でもこの食べ物を食べるなら、手で食べた方が美味い気がする。

 全部食べ終わり指先を舐めている自分に驚きながら、


 (麻薬だわ、自分にとってこの食べ物は)


 「御前、お茶をお持ちしました」

 「ええ、入って頂戴」


 襖を開けお茶を持ってきて、盆の物が空なのに落胆する表情を一瞬浮かべるモミジ。


 「それで坊やは?」

 「ケイタ様たちはすぐにこちらに」


 部屋の外に人が歩いてくる気配がする。


 「クズハさん失礼します」

 

   ◇   ◇   ◇ 


 襖を開け先ほどの席に、自分とパールさんが座り、


 「それでイナリズシの説明戴けるかしら」

 「もちろんです」


 先ほどの白い長方形の「トーフ」を薄く切って油で揚げて「油揚げ」を作り。

 ショーユと出汁と砂糖を加えた甘辛い汁に漬け。

 炊いた米にお酢と砂糖で酢飯を作り、汁に浸した油揚げで包んだだけだと、

 

 「本当にそれだけ?」

 「それだけです、モミジに作り方教えたので、同じ物を作って販売できます」


 クズハはモミジの方を見て、モミジが頷いたのを確認してこちらに振り向く。


 「これで米も一般の人も食べれるし、大豆も消費出来るので条件クリアですか?」


 作った試食品はパールとモミジにも食べてもらい好評だったので自信はある。

 無表情なモミジと不機嫌なパールが、笑顔でイナリズシを頬張る姿は眼福でした

 それにクズハさんは狐ですから。


 「条件もなにも、坊やあんた何者?」

 「ただカレー屋をしたいだけですけど」


 クズハさんは、今日一番の爆笑をした。

 太ももをあらわにしてぺしぺし叩きながら、この人自分の格好を理解して欲しいです。

 隣のパールの冷たい視線が刺さります。


 笑いが収まるのを待ち、目元の涙を拭っているクズハさんに、


 「それで販売方法なんですが」


 自分が提案したのは、一般の人用にササの葉で包んで売るという事と、

 (笹の葉に似た植物の葉があるのはモミジに確認済みだ) 

 お土産用などの高級品は木製の折箱に入れ、狐のマークを焼印を入れて販売したらどうだと、

 

 「どうでしょうか?」

 「どうも何も完璧だよ!、モミジ、トーフは量産できる?」

 「はい、専門の場所と道具、人員ががあればすぐに!」

 「油はトンと共同出資で工場を作るか」


 なんか大事になっています。

 二人は販売場所や、値段など様々な事を話していますが、


 「あの油揚げのメニューが他にも…」


 あれだけ白熱していた二人が、同時に振り向き肉食獣の目を向ける


 「食べますか?」

 「「 ええ!! 」」


 横から小さな声で「…バカ」と聞こえた気が。


 屋敷にあるトーフを全て油揚げにして、そのままの油揚げ、味噌汁の具に入れたり、青菜と炒めたり、 大量のイナリズシを作ったり、

 気が付けばエチゴ屋に居る、狐の獣人の方々全員集まり争奪戦に。




 数週間後、エチゴ屋から販売されたキツネ印のイナリズシが都市で大ブームになり、

 シーブ商業都市から大陸全土を巻き込む、米食革命の始まりを告げる出来事である。



陳腐ですが狐ネタで外せないかと思い書きました。


次はお店予定地に行く話を…、

多分。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。