71 次はどのような美味しいものを、私の不運が見つけてくれるのかしら
森を彩っていた鮮やかな極彩色が、地面へと降り積もる乾いた音と共にその色味を深い褐色へと変え始めた頃。
空気が氷のように澄み渡り、診療所の周囲を囲む木々は間もなく訪れる厳しい冬への備えを急ぐようにその枝先を露わにしていた。
本日の休診日を利用して、カエラムとコルネリアは冬の間の薬膳や保存薬に欠かせない、特定の薬草の根を採取するために森の少し奥まった北側の斜面へと足を踏み入れていた。
この時期の根は、地上の葉を枯らす代わりにすべての栄養を地中へと蓄え、最も薬効が高まっているのである。
乾燥した落ち葉が足裏で心地よく砕ける音を聞きながら、二人は並んで斜面を歩く。
カエラムは背負った籠の重さを気にかけながらも、隣を歩くコルネリアの足元を常に注意深く見守っていた。
最近の彼女は、自身の不運体質が鳴りを潜めていることを幸運だと笑っていたが、名医の観察眼はそれが嵐の前の静けさであることを予感し、無意識のうちに警戒を強めていたのである。
「先生、見てくださいませ。あちらの岩陰に、目的の薬草が群生していますわ」
コルネリアが嬉しそうに指差した先。
湿り気を帯びた岩肌の隙間に、力強い緑の葉をわずかに残した貴重な薬草が数株、顔を出していた。
コルネリアは足早にその場所へと駆け寄ろうとした。
しかし、その刹那――彼女が踏み出した右足の先が、落ち葉に隠れていた滑らかな粘土質の泥に触れた。
それが、これから始まる精緻極まる連鎖反応の号砲だった。
コルネリアの体がわずかに均衡を崩し、その拍子に彼女の肘が傍らにあった枯れたナナカマドの枝を強く叩いた。
振動を受けた枝は、その上に危うい均衡を保って乗っていた巨大な松ぼっくりを弾き飛ばす。
放物線を描いて飛んだ松ぼっくりは、斜面の下方にあった中空の倒木の中へと完璧な角度で吸い込まれていった。
倒木の中を転がり落ちた衝撃は、その先に引っかかっていた平らな円盤状の石を斜面へと押し出す。
石は回転しながら加速し、十歩ほど先でしなっていた若いブナの細い幹を、あたかも計算されたかのような強さで横から打った。
弾かれたブナの幹が弓のように大きくしなり、その反動で頭上高くに引っかかっていた数年分の古い切り株の残骸を一気に突き上げたのである。
突き上げられた切り株が大きく傾くと同時に、そこに堆積していた膝の高さまであろうかという膨大な量の落ち葉の層が、重力に従って一気に崩れ落ちた。
それは、まるで茶色の波が押し寄せるかのような光景だった。
カエラムが咄嗟にコルネリアを自身の腕の中へと引き寄せ、彼女の身を完全に庇った直後――。
大量の落ち葉が剥がされたその斜面の土壌には、日光を初めて浴びるかのように、眩いばかりの白い宝石たちが姿を現していた。
「……これは……マッシュルームの群生地、ですか」
カエラムが、自身の腕の中で目を丸くしているコルネリアをそっと解放し、驚きに満ちた声を漏らした。
剥き出しになった黒い土の上には、手のひらほどの大きさがある肉厚で真っ白なマッシュルームが、数え切れないほどに密集していた。
分厚い落ち葉の布団に長年守られていたため、その表面には傷一つなく、秋の冷気によって凝縮された芳醇な茸の香りが周囲の空気を瞬時に塗り替えていく。
「まあ……! 私、ただ足を滑らせただけでしたのに、このような素晴らしい場所を見つけてしまうなんて……不運も、先生と一緒にいれば最高の幸運に変わってしまうのですね」
「あなたの連鎖反応は、もはや芸術の域に達していますね。これほど良質なマッシュルームは、王都の市場でもなかなかお目にかかれません」
二人は薬草採取を中断し、持参していた籠がいっぱいになるまで、その瑞々しいマッシュルームを丁寧に収穫していった。
指先から伝わる茸の確かな重みと、土の豊かな匂い。
予期せぬ収穫への喜びに、コルネリアのペリドットの瞳はコスモスの花冠を被った時のように幸福そうに輝き、カエラムのアンバーの瞳もまた、彼女の引き起こした奇跡を愛おしそうに見つめていた。
診療所へと戻り、夕食の準備を始める。
コルネリアが食品棚の奥から大切そうに取り出してきたのは、以前街を訪れた際に出会った、異国の珍しい食料品を専門に扱う商人から購入した乾麺であった。
「先生、今日収穫したマッシュルームをたっぷりと使って、この乾麺でパスタを作りましょう。秋の香りを一番引き立てられる方法で、お作りいたしますわ」
コルネリアの宣言に、カエラムは静かに上着を脱ぎ、迷うことなく彼女の隣へと並び立った。
彼は今や、コルネリアが次に何を必要としているかを先回りして理解できるまでに成長していた。
「マッシュルームの下処理は私が行いましょう。あなたは麺を茹でる準備を」
カエラムは清潔な布を手に取り、マッシュルームの表面に付着した微かな土を一つずつ丁寧に取り除いていく。
続いて彼は小刀を握り、茸の肉厚な質感を損なわない絶妙な厚さでスライスしていった。
かまどでは大きな鍋にたっぷりの湯が沸かされ、塩が加えられる。
そこへ乾麺が滑り込まされた。
麺が熱湯の中で踊る間、コルネリアはフライパンに森の香草とニンニク、そして収穫祭の折に多めに用意していた、燻製の香りが高い厚切りのベーコンを投入した。
脂が溶け出し、香ばしい匂いが立ち昇り始めたところでカエラムが完璧に切り揃えた大量のマッシュルームを合わせる。
熱を帯びたマッシュルームが、ベーコンの旨味をその身にたっぷりと吸い込み、表面が艶やかな褐色へと変化していく。
茸特有の濃厚な出汁がフライパンの中に溢れ出し、ガーリックの刺激的な香りと混ざり合って、診療所の中をこの上なく幸福な香りで満たしていった。
茹で上がったばかりの乾麺を、ソースの入ったフライパンへと移す。
麺に茸の旨味を余すところなく絡ませ、最後に色鮮やかな彩り野菜を散らせば秋の恵みを凝縮した極上の一皿の完成である。
円卓に向かい合って座り、手を合わせてから、二人は立ち昇る湯気と共に出来立てのパスタを口へと運んだ。
「……素晴らしい味わいです。麺の独特の歯応えに、マッシュルームの芳醇な旨味が完璧に絡み合っています。ベーコンの塩気が、茸の甘みをより一層引き立てていますね」
カエラムが感嘆の声を漏らし、丸メガネの奥の瞳を深く和らげる。
コルネリアもまた、自身が思い描いた通りの――いや、カエラムの手助けがあったことでそれ以上の出来栄えとなったパスタを味わいながら、心からの満足感を込めて微笑んだ。
「先生がマッシュルームをあのように美しく切り揃えてくださったおかげで、火の通りが均一になり、茸の食感が最大限に活かされていますわ。商人の方が、この麺には山の幸が一番合うとおっしゃっていましたが、本当にその通りでした」
食事を終えた後も、診療所の中には茸の豊かな香りが微かな余韻として漂っていた。
カエラムは温かいお茶の入った湯呑みを手に取り、円卓越しにコルネリアを真っ直ぐに見つめた。
「あなたの不運は、時に私をハラハラさせ、心臓に悪い思いをさせることもありますが……こうして最後にはいつも、想像もしなかったような新しい景色や幸福へと、私を導いてくれます」
カエラムは自身の左手を伸ばし、円卓の上に置かれていたコルネリアの手を、優しく包み込むようにして握りしめた。
「ですから、これからはどのような不運の連鎖が起きようとも、決して一人で怯えないでください。私が必ずあなたの傍にいて、そのすべてを最高の幸運へと変えてみせますから」
彼のアンバーの瞳に宿る、揺らぐことのない絶対的な信頼と深い愛。
コルネリアは自身の掌に伝わってくる彼の温かな鼓動を感じながら、ペリドットの瞳を潤ませ、幸福な微笑みを返した。
「はい、カエラム先生。先生がいらっしゃれば、私はどのような出来事も笑って受け入れられますわ。次はどのような美味しいものを、私の不運が見つけてくれるのかしら」
ランプの柔らかな灯りに照らされた室内。
パスタの香ばしい余韻と、互いを思いやる深い情愛の熱。
窓の外では秋の夜風が静かに木々を揺らしていたが、診療所の中に流れる時間は二人で分かち合った実りの喜びと共に、どこまでも甘く穏やかに更けていった。




