表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
普通のおじさんの異世界鑑定譚  作者: あいら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/44

第38章 鏡の”修復”

今も、騎士達はドラゴンと戦っているのだろうな・・・・


時々感じる地響きを聞きながら感じる。


俺ができるのは、聖剣の鑑定だけだ。

分かっていても、何もできない自分に無力感を感じる。


そんな空気を打ち破るかのように、リリアーナが明るい声で言った。


「アキラさん、報告があります」


どこか自信に満ちた顔。その手には、見慣れた小さな装備袋がある。


「どうしたんだ?」


アキラはソファに座り、テーブルの上のピンチョスをつまみながら聞いた。


「私の修復スキル、ついにⅢになりました」


アキラは思わず口を開いたまま、フォークを止める。


Ⅲ――それは修復スキルの最上位、通常ではほとんど到達不可能な領域だった。

ⅠからⅡに上がるだけでも大変な努力と才能が必要で、Ⅲになることは想像を絶する。


「本当に…これで、聖剣も修復できるんだな…」


アキラの心に安堵と期待が同時に湧き上がる。

これまで多くの聖剣や特殊な武具が戦場で必要となるたび、修復の限界に悩んでいた。

今、リリアーナの手にかかれば、どんな損傷も修復可能――国家の命運を握る武器の準備は、もう恐れることはない。


その時、俺の中で何かが閃いた。


あのダンジョンの鏡も修復できるんじゃ…

あの鏡はあやゆる魔法を跳ね返す、つまりはドラゴンの炎も跳ね返せるはず……


俺は思いついた事をリリアーナに告げる。


すると、


「冒険者ギルドへ行きましょう」


リリアーナは手早く準備を整える。


二人はナイトを伴い、街の喧騒を抜けて冒険者ギルドへ向かう。

ナイトも一緒で、守護者として頼もしい存在に目を細める。


ギルドに到着すると、受付の女性や他の冒険者たちの視線が二人に集まる。

ナイトの威厳ある姿と、リリアーナの凛とした雰囲気に、多くの者が息をのんだ。


アキラは受付で叫ぶように言う


「ギルドマスタのグライブ殿はいらっしゃいますか?」


驚く受付に、面識のあるスタッフが俺に気付き、声をかけてくれた。


「ギルドマスターに何の用事ですか?」


「ドラゴンの対策ができるかもしれないのです」


驚いた顔をしたスタッフは、


「分かりました」


とギルドマスターに連絡を取ってくれて、ギルド長室に案内された。


「よく来てくれた」


大柄で鷹揚な男性、グライブは歓迎してくれた。


「時間が惜しい、さっそく要件を聞きたい」


「はい」


俺は、ダンジョンで得た鏡なら、ドラゴンの炎も反射できるかもしれない事、

その鏡をリリアーナなら”修復”で作れるかもしれない事を話した。


「分かった、すぐに用意しよう」


グライブの命令で、地下倉庫にダンジョンの鏡の破片が集められる。


「これで全部だ」


「ありがとうございます」


「代金は」


「国の大事だ、国に請求する、気にするな」


俺は頭を下げた。


リリアーナが真剣な表情をする。


「修復するわ」


リリアーナは鏡を手に取り、微細な傷や亀裂、魔法の残滓まで丁寧にチェックする。

その手の動きはまるで儀式のようで、アキラは息を呑む。


「ここは、魔法反射の力が残っている。慎重に…」


リリアーナの指先から淡い光が放たれ、鏡表面を覆う微細なひび割れが次々と消えていく。


光の粒子はまるで生きているかのように揺れ、鏡の内部構造に沿って流れる。

アキラは手を伸ばして触れたくなる衝動に駆られるが、ぐっと堪える。


作業が進むにつれて、鏡の表面は完全な滑らかさを取り戻し、光を反射する角度も鮮やかに整う。破損前と比べて輝きが増し、魔法反射の力も明確に強化されているのがわかる。


「これで完了…」


現れたのは2階建ての家ぐらいの大きな鏡。


リリアーナが息を吐く。

鏡を見る姿はまるで光を操る女神のようだった。


アキラは鏡を手に取り、軽く振って角度を変えながら魔法反射の確認をする。

鏡の中に映る自分の姿は、以前より鮮明でくっきりとしており、微細な魔法も確実に反射できることを感じた。


「ありがとう、リリアーナ…これで、あのドラゴン戦も少しは戦力になる」


アキラの声に、感謝と期待が混ざる。

リリアーナは微笑み、少し照れたように顔を赤らめる。


ナイトは鏡を守るように周囲を巡回し、アキラとリリアーナが向かう方向を見守る。

その存在は、これから始まる決戦において絶対的な安心感を与える。

アキラはナイトの背中を見ながら、心の中でつぶやく。


「さて…ドラゴンの元に向かうか」


「アキラ殿が行かれるのですか?」


「ナイトがいる俺が、一番適任だと思うので」


マジックバックを借りて鏡を入れる、

熟練の冒険者の馬の後ろに乗せてもらう。


「気をつけて」


心配そうなリリアーナに、俺は頷く。


街の出口からドラゴンが現れる地点へと向かう。

ナイトは空中に軽く浮かび、護衛としての役割を全うする姿勢を見せる。

アキラは前方に立ち現れる荒涼とした地形を見据えた。


視界の先、山岳の尾根に立つ影が、彼らの心を一層引き締める。

ドラゴンはすでにその存在感を示しており、空気を震わせる翼の動きが遠くからでもわかる。熱風が吹き、砂塵が舞い上がる。

圧倒的な脅威だ。


ドラゴン出現地点に向かう道は、既に戦場の空気を帯びていた。

火と風、魔力の気配が渦巻き、息をつく暇もない緊張感が包む。


それでも、アキラは胸の奥で静かに決意する。

「準備はすべて整った。後は騎士たちを信じ、そして…ナイトを信じるだけだ」


そう決意して、ドラゴンの元へと向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ