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普通のおじさんの異世界鑑定譚  作者: あいら


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第39章 鏡の戦術

空はまだ昼間の光を残していたが、戦場となる山岳地帯には不穏な気配が漂っていた。

砂塵が渦を巻き、かすかな熱風が取り囲む。

眼下にはドラゴンの姿が、まるで天を覆うかのように大きくそびえている。


「準備はいいか?」


馬を駆っていた冒険者が声をかける。


「お願いします」


ダンジョン産の鏡は魔力を感知し反射する精密な結晶構造が組み込まれている。

これにより魔法も跳ね返せるはずだ。


ドラゴンの吐く火の攻撃にどこまで耐えられるか分からないが、やってみる価値はある。


ナイトは翼を広げ、低空で旋回しながら二人を護衛する。

鼻先で風を嗅ぎ、ドラゴンの動きと周囲の気配を探る。


アキラはマジックバックから鏡を取り出す。


鏡の表面は太陽光を反射し、まばゆい輝きを放つ。

輝きは単なる光ではない。鏡の結晶に刻まれた修復魔法が光を増幅させ、魔力の流れを感知すると瞬時に反射角を調整する。


その瞬間、ドラゴンが低く唸り、火を噴く体勢に入る。しかし、

アキラはためらわず鏡を掲げる。太陽光と魔力を反射板として利用し、ドラゴンが放つ火炎が跳ね返されるよう角度を調整するのだ。


最初の一撃が跳ね返った瞬間、ドラゴンの反応は異常だった。

自分の吐いた炎が跳ね返り、巨大な翼や鋭い鱗にあたり、予想外の感覚に戸惑う。

混乱のあまり、ドラゴンは火を噴くことを一瞬やめ、頭を振って煙を吐く。


「成功した…!」


ドラゴンの吐く炎が正確に反射された事に、喜びがこみ上げる。


「角度を少し左に変えて、炎の直撃を防ぐ。ナイトは側面を警戒」


再び火を噴こうとするドラゴン。

だが、鏡の光が反射板のように作用し、炎は空中で弧を描き、山肌に当たる。火炎が跳ね返るたびにドラゴンは混乱し、低く唸り声を上げる。


アキラは息を整えながら、鏡の角度を微調整する。

魔力の強弱に応じて光の反射を最適化し、炎が他の騎士に届かないよう制御する。

手首の微妙な動き、足の踏み込み、鏡の角度――それらがすべて連動して戦術を成す。


「ナイト、左だ!」


アキラの声に、ナイトは一気にドラゴンの側面へ飛び、翼を狙う素早い飛行を見せる。

ドラゴンは驚き、右に体を振るが、鏡で跳ね返された炎が左側に飛び火し、さらに混乱を増幅させる。


「ここでチャンスだ!」


アキラは低く声を出し、鏡の角度を調整して炎をドラゴンの背後の岩壁に反射させる。

火が跳ね返り、ドラゴンの体表を焼く衝撃波が返る。

ドラゴンは苦痛の咆哮を上げ、翼を大きく振るもその場から離れられない。


「これで火は噴けない…!」


冒険者の声に、アキラは小さく頷く。

これまで脅威だったはずの攻撃を、鏡一つで抑制できる。

この戦術により、騎士たちの前線は格段に安全になったのだ。


二人は鏡を巧みに使いながら、ドラゴンの混乱を維持する。

アキラの目には、緊張と興奮が入り混じる。


「…すごいな…」


アキラは心の中で呟く。ダンジョンで鏡を手に入れ、リリアーナに修復してもらったこの成果が、ここまで戦況を変えるとは。


「とはいえ、まだ油断はできない…」


小さく息を吐き、鏡の反射角度を微調整しながらドラゴンの瞳を読み取る。

混乱したドラゴンは徐々にパターンを取り戻そうとするが、反射された火炎の影響で正確な攻撃を行えず、焦りの色が見える。


戦場は静かな緊張に包まれ、鏡の反射が戦況を支配している。

かつて絶望的だった戦局が、わずかに形勢を変えつつあった。

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