第34章 王宮からの招待
霧がかった冬の朝、商人ギルドの鑑定室で書類を整理していたアキラの手に、一通の分厚い封筒が渡された。
封筒は羊皮紙で、ところどころに金箔が散りばめられており、差出人の紋章が堂々と中央に押されている。
「――これは……」
アキラは封筒を慎重に開けた。
中から現れたのは、王宮からの正式な招待状だった。
文章は丁寧で、格式高く書かれており、文字の隅々にまで気品が感じられる。
「商人ギルド鑑定士 アキラ殿
王宮コレクションの正式鑑定を依頼いたします。王宮にお越しいただき、歴代王の宝物の真贋を見極めていただきたく、ここに招待いたします」
アキラは一瞬、言葉を失った。王宮から直接要請が来るなど、これまでの人生で考えたこともなかった。
グラハムがにやりと笑う。
「ふむ……やはり君の鑑定は、ただのギルド内での評判では済まなかったようだな。王様自ら依頼するとは」
アキラは深く息を吸い、心を落ち着ける。王宮というのは、権威と伝統の象徴であり、どんな小さな失敗も許されない場所だ。だが、鑑定士としての力を試す絶好の機会でもあった。
王宮の門をくぐると、外界とはまるで違う空気が流れていた。
広大な庭園、噴水の水面に映る朝日、厳かに並ぶ衛兵の列。すべてが完璧に整えられ、まさに「王宮」という言葉にふさわしい威厳を漂わせている。
受付で案内係の副官に導かれ、鑑定用の部屋へ入る。部屋には、光を反射する大理石の床、天井から吊るされたシャンデリア、そして所狭しと並べられた宝物があった。
「これが……歴代王のコレクションか」
アキラは目を輝かせつつ、心を引き締める。
宝物のひとつひとつには、歴史の重みと価値がある。
ここでの鑑定は、ただの金銭的価値を見極めるだけでは済まない。
鑑定を始める前に、アキラは持参した魔法陣を部屋に敷く。
これにより、魔力による補助鑑定が可能になり、微細な魔法の痕跡や素材の年代まで視覚化できる仕組みだ。
最初の品物は、王族の紋章が施された小型の装飾品。年代はおそらく百年以上前のものと推測される。
アキラは手に取り、鑑定スキルを起動する。
「材質は純銀。表面の加工は後世の手による……紋章部分も、本来の王家技術とは異なる構造だ」
副官の声が思わず上がる。
「これは……偽物ですか?」
アキラは頷き、淡々と解説を続ける。
「本物は内部の細工まで王家直伝の技法が施されています。この品は表面のみが加工されており、王家の正規品ではありません」
担当者が動揺した顔をする。
「なるほど……君の眼は確かだな」
一日中、アキラの鑑定は続いた。
宝石、短剣、装飾品、古文書内容は多岐にわたる。
宝石の一つは、歴史資料によれば王家に古くから伝わる儀式用の装飾品であるはずだが、実際には異なる鉱山の素材が使われていた。アキラは鑑定しながら淡々と説明する。
「この宝石は、王家の宝物としては歴史的背景が異なります。加工技法と石の採掘年代が食い違っています」
学者たちも、アキラの鑑定には驚きを隠せない。
これほどの精度で、年代・加工法・素材の真偽まで見抜ける鑑定士は、国家レベルでも希少だった。
午後になると、アキラは特に難しい品に取り掛かる。
王家伝来の儀式用短剣だ。刃は光沢があり、表面は完璧に磨かれている。多くの冒険者や学者が触れたことがあるはずの品で、価値は計り知れない。
「表面は非常に良い状態ですが、刃の内部構造を鑑定すると、王家直伝の技術とは異なる……後世の複製品です」
副官も学者も息を飲む。宝物管理官は感嘆の声を上げた。
「アキラ殿……あなたの鑑定精度は、我々が長年求めていたものそのものです」
アキラは微かに笑みを浮かべながら答える。
「宝物は、正しく評価されるべきですから」
その日の鑑定を終え、王様から直接感謝を受ける。
「アキラ殿、これほど正確な鑑定ができる者は稀有だ。我々も長年、こうした精度を望んでいた」
アキラは頭を下げる。
結局3割ほどがほとんど価値のない偽物だったが、中には1000億リラの価値がある物もあり、本当に楽しい仕事となった。
また、鑑定して新たに分かった事実もあり、本で読んだり、資料から得た今までのデータが更に理解が深まるのは、とても貴重な経験だったといえる。
自分の能力が上がった事が、新たな仕事を呼び込む、この好循環に、本当に今の幸せをかみしめるのだった。




