Episode.33
ダンジョンからの帰還は、思ったよりもずっと早かった。
潜るのに1か月ぐらいと聞いていたのに、実際は5日で地上へと戻った。
アキラとナイトは、12階層まで踏破し、
マジックバックは収穫物で満杯近くになったからだ。
砂漠階層の魔物、坑道階層で拾った鉱石、鏡の破片――
価値を秘めた物たちがバックに詰め込まれている。
地上へ戻った瞬間、冒険者ギルドの受付はざわついた。
「……ちょっと待て、もう戻ってきたのか?」
若手冒険者の一人が目を見開く。
その隣で、ベテランの冒険者も口を開く。
「やはり新人にダンジョンはきつかったか」
そんな話声を耳に拾う。
受付カウンターで受付の男性に声をかける。
「素材の買い取りをして欲しいのですが」
「分かりました、買い取りします、出してください」
「ただ、このバックいっぱいあるので、ここだと出す場所が足りないのですが……」
ある程度広い場所を用意されてはいたが、それでもとても足りない。
「マジックバックいっぱい?」
受付の男性は驚いていた。
「大きな魔物とかもありますし」
「分かりました」
慌てて、倉庫のような所に案内される。
そこで魔物や素材を一気に出す。
今まで価値が認められていなかった素材は、分かりにくいだろうと、鑑定結果を書いた紙もつけた。
「これだけの量だと、買い取りに数週間かかります……申し訳ありません」
ギルドの買い取りのリーダーだという人が現れて頭を下げる。
「それと、このリザード、11階の魔物だと思うのですが」
「はい、11階で倒しました」
「1人でですか?普通リザードを倒すとなると、中級クラスの冒険者5人がかりで倒すような魔物ですよ」
買い取り担当のリーダーは俺を怪しがっているようだった。
「はい、従魔がいまして、神獣ですから瞬殺でしたよ」
そう言って、金のギルドカードを見せる。
「神獣!?これは失礼しました、はい、買い取ります!」
「お願いします」
そう言って冒険者ギルドを後にした。
その後、冒険者ギルドでは、噂が飛び交っていた。
「男爵の鑑定士が、12階まで――しかも、これだけの収穫を!」
冒険者ギルド内で、アキラの名前は更に高まり、
今まで価値がないと思っていた物の価値を示した事で、かなりの驚きもあったらしい。
冒険者ギルドの幹部や上級冒険者たちからも、
「アキラ殿の鑑定なら、今後の遠征計画に組み込みたい」
「ダンジョンで今まで不要とされていた物も、もっと鑑定してもらいたい」
と、期待の声が上がったのだった。
商業ギルドにお土産を持っていく。
もちろんダンジョン産だ。
「アキラ、もう戻ったのか!?」
グラハムが目を丸くして声をかける。
ロイドも、帳簿の手を止めて目を見開いた。
「はい、これお土産です」
グラハムは嬉そうに受け取る。
「おや、これは貴重な疲労回復薬ではないか……
最近は肩こりが酷くてな、これで一気に治るだろう、ありがとう」
ロイドはその場で一気に疲労回復薬を飲み、
「キクー!!!」
と声を上げていた。
「それにしても早く戻ってきたが、そんなに潜れなかったのかね?」
「いえ、12階まではいきましたよ」
「12階……!?」
グラハムとロイドが揃って驚いた声を出す。
彼らにとっても、“鑑定士”という非戦闘職だけでここまで到達したことは、
想像を絶することだったようだ。
普通なら、中級冒険者の数名で挑んでも、12階層に辿り着く前に、
撤退や戦闘不能の危険に直面する。
しかし、はっきり言ってナイトが強すぎた、なので収穫は最大限に確保できたのである。
しかも、ダンジョンへ行った事で、更にいい事があった。
(鑑定ランクがⅡになってる!)
感覚が広がり、視界に収まる情報量が格段に増えた。
今まで鑑定不可だった神ランクが鑑定できるようになったのだ。
おかげでナイトもしっかりSSSランクとして、鑑定できるようになった。
おおよその売価だけでなく、原価も分かる。
その商品について、詳細を知ろうと思えば詳しく分かる。
その商品に含まれている物質の詳細を、知ろうと思えば詳しく分かる。
など、機能が数段アップしている。
(――これが、ランクⅡの力か)
アキラは、静かに頷いた。
「これで、価値あるものを見逃すことはほぼないな」
数週間後、冒険者ギルドから、ダンジョンの品の買い取り明細がきた。
今までの仕事での収入を合わせると、貯金は2億リラを超えた。
ナイトを買って、一気になくなったお金が、
ナイトのお陰で数倍になって返ってきた感じだ。
ちなみにランクが上がった事により、
商業ギルド内での地位も上がり、給料も月100万リラとなった。
60万リラでも、食・住がほぼ無料という事もあり、
お金が余っていたのに、これから更に貯金が増えそうだ。
次いで、リリアーナと会う約束をした。
魔物素材は流石に渡せないし、坑道で得た石も宝石とかではない、
結局の所、お土産ではないが、自分が持っているコレクションの中で、
価値があると”鑑定”できたネックレスを渡す事にした。
リリアーナが俺の部屋に来る。
「おかえりなさい」
「ただいま」
何気ない挨拶が嬉しく感じる。
「怪我とかはない?」
「まったく、無事だよ」
リリアーナはほっとした顔をして、本当に心配してくれていたのだと嬉しくなった。
「お土産はいいのがなくて……
ダンジョンで入手したのじゃないけど、これ受け取って欲しい」
そう言ってネックレスを渡す。
普段使いにできそうな、シンプルなチェーンがついているネックレス、
しかし、そのペンダントトップは複雑な彫刻がされ、大きめの宝石がついていた。
しかし、その宝石も今は輝きを失い、何の石か分からなくなっていた。
「ありがとう」
そう言って、リリアーナはペンダントトップに”修復”をかける。
そして、そのネックレスについている石を見て驚いた顔をしていた。
「この石!貴重なピンクダイヤモンド?」
「当たり」
「これ、凄く高いんじゃ……」
「気にしないで、俺が持っててもあまり価値ないし」
「この大きさなら、売ったら凄い値がつくわよ」
「君の胸元で輝く方が価値があるよ」
ナイトもそうだ!というように、
「ワン」
と鳴く。
ナイト……相変わらずリリアーナにべったりだな、少しうらやましいぞ。
リリアーナはしばらく迷ったようだが、
「ありがとう」
と言ってネックレスをつけてくれた。
確かに、金額としては相当な物で、盗賊などに見られたら危険だが、
普段は服の下に隠れるので、そんなに目立つ事もないだろう。
「それでは乾杯しようか」
そう言って二人が好きなブランデーをグラスに注いだ。




