表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
普通のおじさんの異世界鑑定譚  作者: あいら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/44

第32章 セーフティゾーン

砂漠階層を抜けた先に静寂があった。


 熱も、風も、魔物の気配もない。

 白い石で整えられた円形の空間。


「セーフティゾーンか」


 セーフティゾーンは3階ごとにあり、

 3階、6階でもセーフティゾーンで休憩は取っている。


 今回は9階のセーフティゾーンという事だ。


 アキラは、肩の力を抜いた。


 床の中央には、淡く光る魔法陣。

 周囲には簡素なベンチと、水晶灯。

 ここは完全に安全だ。


「ワフ……」


 ナイトも、伏せるように座り、

 ようやく気を緩めた様子を見せる。


 アキラは、壁際に腰を下ろし、

 マジックバックを下ろした。


「……助かったな、ここ」


 疲労自体は大きくない。

 だが、緊張は確実に溜まっていた。


 ふと、周囲に視線をやる。


 すでに、いくつかのパーティが休憩していた。


 三人組の剣士パーティ。

 二人の魔法使いと前衛の混成。

 どこも、疲れ切った表情をしている。


「……あ、従魔?」


 一人が、ナイトに気づいて声を上げた。


「しかも、羽……?」


 視線が集まる。


 だが、アキラは慣れていた。


「はい。護衛です」


 それ以上、詳しく話さない。


 それでも、十分だった。


「……あんた、意外と疲れた様子がないな」


 剣士が苦笑する。


「砂漠、地獄だったろ?」


「正直に言うと……うちは、そこまででも」


 アキラがそう答えると、

 周囲から溜め息が漏れた。


「羨ましい……」


 休憩を兼ねて、軽い交流が始まった。


 食事。

 水分。

 応急処置。


 アキラは、地上で買い込んでいた物を、

 マジックバックから取り出した。


「……それ、保存食?」


「はい。あと、これ、塩と乾燥野菜」


「え、そんなの持ってきたのか?」


 冒険者たちは目を丸くする。


 ダンジョン内での食事は、

 栄養効率が最優先。


 特に、砂漠階層を越えた後では、

 塩分と味のある食事が、何よりありがたい。


「一緒に食べますか?」


「いいのか?」


「ええ、大量にありますから」


「なら、少し買わせてもらえると助かる」


「分かりました」


そうして、格安で水や食料を提供した。


「正直、喉が生き返る」


 アキラは、苦笑した。


「キャンプみたいで、つい買いこんでしまったんです」


 それが、思わぬ形で役に立った。


 逆に。


「これ、もう使えないな」


 一人の冒険者が、

 いくつかの物を処分しようとしているようだった。


「重いし、売れもしないし」


 だが、アキラは、反射的に《鑑定》を使っていた。


「……」


 一瞬、表情が変わる。


「それ、捨てるなら……安くで譲ってもらえませんか?」


「え? いいよ、タダで」


「いえ、さすがにそれは」


 アキラは、少額のリラを差し出した。


 結果的に、双方が納得する取引になった。


 その中には――

 修復すれば価値が跳ねる素材や、

 加工次第で希少になる部品が混じっていた。


「……どうしてそんな物がほしいんだ?」


 剣士が不思議そうに言う。


「鑑定士なんで」


「なるほど……」


 セーフティゾーンは、安全な場所だ。

 だが同時に、情報と価値が集まる場所でもある。


「……ここ、嫌いじゃないな」


 転移盤が、淡く輝いている。

 あれに乗れは地上に戻れ、また続きからダンジョンを攻略できる。


 さっきの砂漠で十分中級冒険者レベルの地点まで着ていた。

 これから先は更に過酷になる。


 「そろそろ帰らないか?」


 ナイトに問いかけるが、ナイトは走り出し、

 何?といった顔で見る。

 まったく帰る気ないな……


 「仕方ない……よし、行こうか」


「ワフ!」


 こうして、更に下の階段へと足を踏み入れ、結局12階まで進んだのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ